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第58話 ノアの誤算

5月19日(日)の午前0時に、異世界恋愛の新作を投稿しますので、よければご一読ください!

「おいおい、ノア。覚醒した今なら皆を騙せるって思ってるのかもしれないが、さすがにその作り話は良くないぜ——いくら、俺に彼女を取られたのが悔しかったからってよ」

「何……?」

「どういう事だ……?」


 ジェームズの反論を受けて、大人たちは一様に困惑の表情を浮かべた。

 それはそうだろう。

 僕とジェームズの意見は、真っ向から対立しているのだから。


 ジェームズは余裕そうな笑みを見せている。

 やばい、普通にイライラしてきた。

 死に追いやろうとした人間を前に、よくそんな表情ができるよね。


「作り話じゃないよ。彼女であるアローラを助けたかったのかもしれないけど、君は僕をダーナスに向かって放り投げ、ダーナスの意識が僕に向いたところでアローラを抱えて逃げた。君がやった事は、もはや殺人と同義だ」


 僕は、あえていつもよりもゆっくり喋った。

 怒りは判断を鈍らせるだけだ。ここは冷静にいこう。


「なるほど。アローラを使って作り話に信憑(しんぴょう)性を持たせようとしているのか。さすが筆記試験学年一位なだけの事はあって、頭が回るな」

「ちょ、ちょっと待つんだ、二人とも」


 ようやく思考が追いついたらしい担任が、会話に割って入ってきた。


「一回状況を整理しよう。まず、アローラがダーナスに襲われていたというのは間違いないんだな?」

「はい。さらに言えば、彼女を俺が助けたというのも事実です」


 ジェームズが答えた。


「なるほど……それでノアは、アローラを助ける際にジェームズが自分を囮にした、と主張しているのだな?」

「はい。彼は僕の胸ぐらを掴み、まるで野球のピッチャーのようにダーナスに向かって投げつけました」

「証拠はあるのか?」

「証拠はありませんが、証人ならいます。シャルは、僕が投げられるところ自体は見ていませんが、僕がダーナスにぶつかるところ、そしてその直後にジェームズがアローラを背負ってその場から逃走するところを目撃しています」

「本当か? シャーロット」

「はい」


 シャルは首を大きく縦に振った。

 ジェームズが鼻を鳴らした。


「ふん。そんなもの、お前がたまたまアローラの近くに倒れていただけの話だろう。もっとも、アローラを助ける事に集中していたから気づかなかったがな。いや、そもそもシャーロットが嘘を吐いているか、ノアに騙されている可能性もあるな。何せ、シャーロットはノアと付き合っているのだから。あわよくば、ブラウン家の力を削ごうとでも考えたか?」

「よく喋りますね。何をそんなに焦っているのですか?」


 ジェームズの揺さぶりに、シャーロットは冷ややかな笑みで応対した。

 さすが、お互い貴族の子供なだけある。

 印象操作と空気作りが上手いな。


 ジェームズが不愉快そうな表情を浮かべて押し黙ったところで、僕は口を開いた。


「シャルだけではありません。もう一人、確実にジェームズが僕の事を囮にしたのを目撃している人がいます」

「何? それは誰だ」


 担任が身を乗り出して尋ねてきた。


「アローラです。僕は彼女が襲われている時に声をかけています。彼女もこちらに視線を向けていました。まず間違いなく、一部始終を見ているはずです」

「確かに……」

「一番の証人だよな」


 全員の視線がアローラに集中した。


 彼女が嘘を吐く可能性を考えていないわけではなかった。

 というより、ジェームズが余裕を持っている時点で、彼女に何らかの根回しがなされているのは、ほとんど間違いなかった。


 それでも、僕はアローラを信じていた。

 さすがに、人の死が関わっていても嘘が吐けるほど、性根が腐っているわけではないだろうと。

 ——そう、信じたかった。


「どうなんだ? アローラ」

「ノアがダーナスに襲われていたのは何となく記憶にありますが、ジェームズはそこに一切関与していませんでした」

「……えっ?」


 だから、先生に問われてアローラがキッパリと真実を否定した時、思考が停止してしまった。


「ほら、どうです? 張本人であるアローラがこう言っているのです。どちらが真実でどちらが嘘か、これではっきりしたでしょう」

「ま、待ってください!」


 シャルが声を上げた。


「ダーナスに突っ込むまで、ノア君は私のすぐ近くにいたのです! それに、彼は浮いた状態で背中からダーナスに突撃していました! 誰かが彼を放り投げでもしない限り、ああはなりません!」

「はあ……」


 ジェームズが、呆れたようにため息を吐いた。


「シャーロット……もう苦しいぞ? 一部始終を見ていたアローラがこう言っているんだ。お前のあやふやな推測など、何の証拠にもならない」

「そんな事はありません! そもそも、アローラさんはあなたの彼女です。あなたこそ、彼女に嘘を吐かせているのではないですか⁉︎」


 シャルの反論に対して、ジェームズは肩をすくめるのみだった。


「ノア君……!」


 シャルが泣きそうな表情を向けてくる。

 僕は力なく首を振った。


 だめだ。空気は完全にジェームズに呑まれてしまった。

 ここから逆転できる策なんてない。

 アローラを信じた僕が馬鹿だった、というだけの事だ。


 大人たちから厳しい視線が向けられているのがわかる。

 彼らからすれば、今の僕は嘘がバレて堪忍したようにしか見えないだろう。


 ここから唯一逆転できる可能性があるとすれば、それはクラスメートが僕の援護をしてくれた場合のみ。

 しかし、この空気の中で、クラスの中心であるジェームズとアローラに逆らえる者など、いるわけがない。


「先生。もう白黒はついたでしょう。ですが、あまりノアを責めないでやってください。俺たちくらいの年頃にとって、彼女を奪われるというのは——」

「せ、先生!」


 ジェームズが締めくくろうとする中、一人の男子生徒が声を上げた。

 アッシャーだった。


 相当勇気を振り絞ったのだろう。

 声は震えており、顔は緊張で強張っていた。


「アッシャー。どうした?」


 先生が意外そうな視線をアッシャーに向けた。

 アッシャーは、一度唾を飲み込んでから答えた。


「お、俺は……ジェームズ君がダーナスに向かってノア君を投げつけたのを目撃しています!」

「なっ……⁉︎」


 教室は騒然となった。

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