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第105話 それぞれの友達② —シャーロット編—

長くなったので二話に分けました。

明日(6月22日)の午前〇時に後半部分を投稿します!

 ノアたちがテオの実家であるフィリップス家で勉強会をしている頃、シャーロットはエリアとハーバーと待ち合わせをしていた。

 これからシャーロットの家で勉強会をする予定だ。

 ノアたちの話を聞いて、エリアが「だったら女子は女子でやろうよ」と言い出したのだ。


「お待たせー」


 ハーバーが小走りで駆けてくる。


「大丈夫だよ。私たちが早く来すぎただけだから」

「気にしないでください」


 まだ集合時間前だ。

 社交辞令でもなんでもなく、シャーロットは彼女を待っていた事に関しては、何も気にしていなかった。


 ただ、もしハーバーが遅刻していたとしても、そんな事は全く気にもならなかっただろう。

 ある一点(・・・・)のインパクトが強すぎたためだ。

 エリアも同じだったようだ。


「ハーバー、あなた……」

「はい?」

「おっぱいでかっ!」

「なっ……⁉︎」


 そう。ハーバーが走るたびにプルンプルン、いや、ブルンブルン揺れるのだ。

 まるでダンスでも踊っているかのように。


 前から大きいとは思っていたが、私服の時の破壊力は凄まじい。

 まさしくAランク、いや、一級クラスと言っても過言ではないだろう。


 ちなみに、一級は学生魔法師に与えられる事はない、魔法師の最高ランクだ。

 ルーカスやアヴァなどがこれにあたる。


 エリアに指摘されて頬を染めたハーバーは、両腕をクロスさせて隠そうとしたが、それでもなおバッチリはみ出してしまっている事が、さらにその凄まじさを強調していた。


 外なので、胸いじりはそれくらいにして、シャーロットの家に向かう。

 それぞれが手洗いうがいを済ませて勉強の支度を整えたところで、エリアが唐突に言った。


「お姉ちゃん、コンビ組もう」

「嫌ですよ」

「なんで⁉︎」


 シャーロットが即答すると、エリアが愕然(がくぜん)とした。

 ハーバーの胸を指さす。


「だって、あんなに大きいんだよ⁉︎」

「むしろハーバーさんレベルにまでなってしまえば嫉妬もしません。現実ラインにいるエリアの方が百倍潰したいです。それだけのものを持っていながら、被害者ヅラしないでください」

「辛辣! でもそれもいい!」


 シャーロットとエリアがいつも通りの茶番をしていると、ハーバーがぶっと吹き出した。


「学校にいる時から思ってたけど、二人は本当に仲良いんだね」

「一卵性舐めんな」

「舐めないでください」


 エリアに続いてシャーロットもドヤ顔を浮かべると、ハーバーがクスクスと笑う。


「エリアちゃんは相変わらずだけど、シャーロットちゃんは結構学校と違うんだね」

「達観してる割には意外とノリがいい人くらいに思ってたでしょ」

「う、うん。まさにそんな感じ」

「そんな事ないよ。ノアの前でなんかもうすごいんだから」

「ご、誤解を招くような事を言わないでくださいっ。別に普通ですから!」


 話を振ったエリアも、乗っかったシャーロットも、おそらくアウェー感を覚えているであろうハーバーの肩の力を抜いてやろう、と思っていた。

 というより、そう話し合っていた。


 しかし、彼女たちの思惑に反して、ハーバーは表情を曇らせてしまった。

 シャーロットとエリアは顔を見合わせた。


 ——ノア君が原因……なのでしょうか?

 ——タイミング的にそうかもね。

 ——なら、エリアから聞いてください。

 ——わかった。


 目線だけで方針を決める。


「ハーバー。どうしたの?」

「あの、その……ご、ごめんなさい!」


 ハーバーが突然、勢いよく頭を下げた。


「えっと……何が?」

「前に、私はイザベラちゃんに頼まれて、シャーロットちゃんにノアに関して嘘を吐いた……! その後すぐにレヴィが停学になったし、あの時、やっぱり何かあったんだよね……?」


 ノアがアローラに振られてシャーロットと親しくし始めた頃、レヴィが「シャーロットに近づくな」と警告するために、ノアを校舎裏に呼び出した。

 レヴィの共犯者だったイザベラは、ハーバーに嘘を吐かせてシャーロットを足止めしようとした。


 ハーバーは、その時の事を謝罪しているのだ。

 ずっと気に掛かっていたのだろう。


「そうですね。あの時は、レヴィがノア君を校舎裏に呼び出していました」

「やっぱり……!」


 ハーバーがショックを受けた表情で口元を覆った。


「ですが、気にしなくていいですよ。結局全員無事だったわけですし、仕方がなかったとも思います。あなたは何が起ころうとしているのか知らなかったわけですから」

「でも——」

「それに」


 シャーロットは、あえて強い口調でハーバーを遮った。


「ハーバーさんは、ジェームズとアローラさんがノア君を(おとし)めようとした時に、アッシャーさんの声に真っ先に応えた。あなたの立場でそれをするのは相当勇気のいる事だったはずです。それに、あなたの事はノア君も許している……というより全く気にしていませんから」


 むしろ、彼は同じEランクの立場としてハーバーを擁護(ようご)していた。

 それが、シャーロットがこうしてハーバーを励ましている一番の理由だった。


 もしもノアがハーバーの事を糾弾(きゅうだん)していたなら、シャーロットも彼女の事は許していなかったし、家に呼ぼうとは思わなかった。


 自分の判断基準が少しズレている事は、シャーロットも自覚していた。

 そのズレを修正しようとは思わない。


(なぜなら、私にとっての最優先事項はノア君とエリアなのですから。こればっかりは仕方ありません)


「ハーバー。これは本心だよ。お姉ちゃん、こういうのは慰めもお世辞も言わないから」

「……うん」

「それに、もし心の中にしこりが残っているなら家には呼ばないからね。それは私も一緒。私もお姉ちゃんも、ハーバーともっと仲良くしたいから、こうして勉強会に誘ったんだよ。そうじゃなきゃ、二人でやればいいんだからさ」

「っ……うんっ、ありがとう、二人とも……!」


 ハーバーの瞳から、涙が溢れ出した。


「ずっと辛かったよね」


 エリアが優しく声をかけながら、頭を撫でている。

 シャーロットはハンカチを差し出した。


 二人に優しくされたからか、ハーバーの涙は止まるどころか勢いを増してしまった。

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