「真実の愛!?まあ素敵!」婚約者から一方的に婚約破棄されたご令嬢、執筆活動に勤しむ。〜元婚約者の真実の愛の物語、爆売れしてたんまりお金が入る〜
「すまない、レア。真実の愛を見つけてしまったんだ。婚約は解消させて欲しい」
「真実の愛!?まあ素敵!応援致しますわ、ラック様!」
婚約者から一方的に婚約破棄されたはずのご令嬢、レア。しかし彼女の表情は明るい。ラックはなんとも言えない複雑な気持ちになるが、とりあえず泣かれなくてよかったとホッとする。
「ところで、ラック様のお相手の方はどなた?」
「聖女であるミーアだ」
「まあまあ!お美しいことで有名ですものね。ラック様にふさわしいですわ!ところで、ラック様とミーア様をモデルに恋愛小説を書いて出版してもよろしくて?」
「え」
「私小説家に憧れていましたの!絶対売れると確信していましてよ!そのかわり、慰謝料などは無しで構いませんわ。いかが?」
好条件、だと思ったラックは許可を出す。
「わかった。それでいい」
「ありがとうございます、ラック様!」
こうしてラックとレアは婚約を解消する運びとなった。ラックの両親は平民の出とはいえ聖女が新しい婚約者になることを喜び、レアの両親もラックに対して未練はないので婚約解消はスムーズに行われた。美しく優秀であり、公爵家のご令嬢であるレアの新しい婚約はすんなり決まり、誰も損はしなかった。ただ醜聞だけは免れず、レアは侯爵令息に捨てられた上慰謝料すらもらえなかったと馬鹿にされた。
「うふふ。楽しいですわ」
しかし、醜聞など全く気にしないレア。そんなことより執筆活動に勤しむ。元婚約者の真実の愛の物語は書いていて楽しい。
「ここはちょっと脚色して、もっと盛り上げましょうか。うふふ」
脚色も交えるがほぼ事実を元に書く。気付いた時には結構なボリュームの大恋愛の小説が出来上がっていた。
「さあ、自費出版しますわよ!」
レアは早速、自分のお小遣いから費用を捻出して小説を売り出した。
結論から言うと、レアの小説は爆売れしてたんまりお金が入った。正直慰謝料を貰わずこっちで稼いで正解だったと言える。そして、大ブレイクしたため小説家としてレアは有名になり婚約解消された醜聞など消え去った。
「うふふ!こんなに上手くいくとは!さすがは私ですわ!ああ、でもラック様達には可哀想なことをしてしまいましたわ。醜聞が広がってしまいましたものね」
脚色が混じっているとはいえほぼ事実の小説を読んだ人々は今度はラックとミーアのことを噂し始める。婚約者であるレアを放り出して二人で勝手に盛り上がり、挙げ句の果てには婚約解消、そして自分達は新たな婚約を結ぶ。最初は大恋愛の末結ばれた二人を祝福していた人も、手のひらを返して批判した。
「レア、楽しそうだね」
「ええ!ここまで上手くいったんですもの!ルークだって喜んでくれるでしょう?まあ、ラック様達には悪いことをしてしまいましたけれど」
「もちろんだよ。おめでとう、レア。ラック達は自業自得さ」
「うふふ」
レアの新しい婚約者はルーク。ルークは若くして辺境伯家を継いでおり、剣も教養も領主としての才覚も申し分ない。レアはもうすぐルークに嫁ぐ。レアにとって、幸せな婚約となった。
「ラック様達は、最近では喧嘩三昧だそうですわ。私達は気をつけましょうね」
「あんな一時の熱に浮かされた婚約じゃないから大丈夫だよ。俺も君も、お互いを大切に尊重できるからね」
「うふふ、愛していますわ」
「俺も愛しているよ」
初対面でお互いに惹かれ合い、ラックとミーアの大恋愛にも負けないくらいラブラブになった二人である。きっと幸せになれるだろう。
「ところで、私達の大恋愛も小説にしていいかしら?」
「…脚色はほどほどで頼むよ」
「うふふ、ありがとうございます!頑張って書きますわ!」
その後レアは自分達の大恋愛も小説にして世に出した。結果相当爆売れし、またも時の人となったレア。婚約者に捨てられたレアとそれを拾う形になったルークとの初対面から惹かれ合う大恋愛は、美談となりそれはもう周りから祝福された。