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逃避行  作者: クラム
4/12

四、歪んだ愛

 受験も差し掛かってきた中、かずまとゆかちゃんは以前より増して私の過去の行いを責めるようになった。

 現在はゆかちゃんが選考した十人程度の女子しかフォロワーに居ないが、過去に男女混合の歌い手グルーブに所属し、尚且つ男女問わずフォロワーと話していたのが気に食わないのだろう。

 過去を持ち出しては傷付けられた、浮気されたと被害妄想をするようになった。

 以前はゆかちゃんが言ってくる事が多かったのだが、かずまからも直接言われる事が増えてきた。

 一日中スマホを触っている時はゆかちゃんか、かずまと話しているのに未だに浮気を疑っているようだ。

 どうやら私が別の垢を使用して男子と話していると思い込んでいるらしい。

 私は別の垢を作って他の人と話していない証明をする為に一日中画面録画とスマホを触っていない時は実写の録画をする事を決心した。

 しかし、かずまやゆかちゃんと話している時は録画をしていなかった。それが盲点だったのだ。

「ずっとじゃないじゃん。信用無くなるよ。本当はゆか以外と話してるんじゃないかって思うよ。」

 かずまはそう言った。

 もうかずまとゆかちゃんしか話してはいけない雰囲気だった。

 kurahaとさえも…。

私は前回の反省を活かしてずっと録画を続ける。勉強している時や塾に行っている時、学校に行っている時はノートに記録をし続けた。

 録画をLINEに送るのは凄く時間がかかる。一日の動画を送るのには三時間近くかかっていた。

 LINEを閉じてしまうと送れないので、あと少しで受験を控えた私には負担が大きかった。

 寝るのはいつも四時近くだった。かずまと話す為に六時に起きていたので睡眠時間は二時間だった。

 そしたら次は既読がつくのに間があると言われた。けれどもたった数秒単位だった。

 私だって、見れない時間だってある。LINEを閉じてTwitterでゆかちゃんと話している時はずっとLINEを開けない。

 しかし私は

「そっかそんな事思ってたんだね。」

と返した。

自分では気づかなかったけど相手にはそう思わせる事してたのかなと思ったから。

自分が悪いんだ。怒られる度に私は

「ごめんね」

 と謝った。

 暫くは誰も友達を追加しないでいた。

しかし、クミと遊んだ時についノリで交換をしてしまった。

 事後報告という形にはなるが、かずまに報告をした。

「友達とLINEを交換したんだけど…やっぱり、後日事情を話してブロックした方がいいかな?それかそのままでいいかな?」

少し不安だったが、許してくれると思っていた。

 しかし、

「交換したってことは交換したかったんだね。友達が他の人にあいなのLINEを教える可能性があるって気づかなかったの?」

怖い。怒らせてしまった。

「友達はそんなことする人じゃないよ。それにちゃんと教えないように言っておくよ」

何より私の唯一の友達だった。その友達を悪く言われるのは私も腹が立った。

「俺がお前の友達なんて信用するとでも思う?」

それもそのはずだ…。かずまは私の事さえも信用していない。それなのに私の友達なんて信用するはずがないのだろう。

「ごめん…ちゃんと聞けばよかったね」

 私はかずまの意見に譲歩した。いやするしかなかった。

「すぐに交換するとか何も考えてない証拠じゃん。もうさ、本当に話してても不快になるだけなんだけど。全く信用出来ない」

 怖い。怖い。怖い。かずまの口調がどんどん荒くなっていく。

「でも、学校の事で何か聞きたい時に聞こうと思って聞く人いないから…それに特に話さないから大丈夫かなって思って。」

私はInstagram、LINEなどのSNS上でリアルの友達がいなかった為、必要な情報も教えてもらう事が出来ないから不便であった。

 登下校もクラスが別のクミと中々会わないため、話す人がいなかった。

 その為、LINEが便利だと思って帰り道ばったり会った時に遊ぶ約束をして遊んだ時に交換をしてしまったのだ。

 だが、そんなの知りもしないかずまは

「ほんと都合いいよね。LINEなんていくらでも保存出来るよ。ネット舐めんな!常に不快なんだけど」

「確かに…少しネット舐めてた…」

 ネットを舐めていたのは事実だった。

 それにかずまやゆかちゃんの事も舐めていたのかもしれない。このくらいなら大丈夫だと…怒らないと信じきってしまっていた。完全に油断をした私のせいだ。

「そうだよ。ほんと甘すぎ。お前は何がしたいんだよ。夜まで起こさせてさ。やることだってあるのに。不快にさせて。まじなんなん?」

 この時、時刻は夜中の一時を回っていた。

 かずまはこの日、二十一時に寝る予定だった。私のせいでこんなに夜中まで起こさせてしまった。私のせいで不快にさせてしまった。私のせいで無理をさせてしまった。

「ごめんなさい。確かにそうだね。ごめんなさい。」

 私は謝るのが癖になっていた。

 毎日のようにかずまとゆかちゃんの二人に怒られていた。二人の機嫌が良い日なんて滅多に無かった。

 ゆかちゃんはかずまの幼なじみなので、かずまが苦しんだり怒っていたりする姿が嫌らしく、かずまの完全な味方だ。過去の私に対して

「最低」

「浮気者」

 と言っていた。

 かずまに対しての行動力も足りないと言っていた。

 私は限界だった。こんなに頑張っているのに…私は二人の顔色を常に伺っていた。

 クミと久しぶりに一緒に下校をした。

 最近は朝はギリギリまでかずまやゆかちゃんと話していたり、動画を送ったりしていたのでクミと登校時間が合わなかったのだ。

 私はクミにLINEが出来なくなった事を告げた。それに加えてクミをブロックしなければいけない事を話した。

「なんでLINE出来なくなったの?」

 クミは私に不思議そうに聞いた。疑問に思うのも当然だろう。スマホを持っているのにLINEが出来ない人はあまりいない。

 私はクミにかずまの事を話した。

 私の事が信用出来ない為、画面録画と日常生活の録画をしている事、かずまが他の人とLINE交換をする事を禁止している事。ありのままに話した。

 すると、

「それモラハラじゃん。画面録画とか日常生活の録画とか有り得ないんだけど」

 クミはかずまの事を有り得ないと言った。

 しかし、かずまは普段は優しいし私の事を一番に考えてくれる。モラハラではないだろうと考えた。私が信用されなかった事をしたのが悪い、そう考えていた。

「でもそれは私が悪いんだ。それに今幸せだもの」

 私は笑ってそう言った。

 クミはまだ納得していない様子だったが、私が自分を抑えるのは今後の未来の為、そして何よりかずまの為だったのだ。

 私はかずまを愛しているし、かずまからも愛されている。そう考えていた。

 クミと帰り道たまたま会った事から再びよく一緒に登下校をするようになった。

 私はクミやkurahaとどうしても個人的な連絡を取りたかった。

 しかし、かずまやゆかちゃんに禁止されており、画面録画もしている。

 私は良い考えを思いついた。

 父が以前に使用していたスマホは水没して一切使用出来なくなった私のスマホとは違い、操作する事が可能だ。

 Twitterのアプリを入れてかずまと出会う前に別垢として使用していたアカウントを使用し、クミやkurahaと話そうと考えたのだ。それに加えて父は以前のスマホは使用しておらず、放置したままだ。

 私は急いで父の以前のスマホの充電をした。右手でスマホを使用しながら左手で父の以前のスマホの操作をした。自意識過剰だが、両手で文字を打つ自分を我ながらプロ並みだと思った。

 ツイートをすると、すぐにkurahaとクミから返信が来る。

 久しぶりに二人と話して凄く幸せな気持ちになった。

 ここ最近は自分が悪いのだが、かずまやゆかちゃん、さつきさんに酷い言葉を投げかけられていたので久々の和やかな雰囲気は何とも言えない気持ちになった。

 暇な時はこの垢にこっそり浮上していた。

 クミからkurahaへLINEが出来ない理由を話してもらえるように頼んだ。

 中々この垢には浮上出来ないし、浮上出来るとしたら数分程度だ。かずまやゆかちゃんにバレてしまってはいけない。私がkurahaに直接説明する事は不可能だったのだ。

 二月二十一日

この日は合格発表の日だった。

 結果は合格だった。

 しかし、元々の志望校では無かった為、複雑な気持ちだった。

 私は勉強時間が足りずに直前で志望校のレベルを落としたのだ。

 そして一つ問題がある。

 かずまとゆかちゃんには女子校を志望するように言われていたのだ。

 しかし、私が住んでいる所の女子校は偏差値がどこも高く、届かなかった。

 私はかずまとゆかちゃんに女子校を受験したと言っていたのでいつバレてしまうか不安でもあった。合格してしまえばその学校に決定してしまう。

 複雑な気持ちだった。

 今日は家庭教師が来る日だったので、先生に高校が受かった事を報告した。

 すると先生の目から涙が溢れた。私はびっくりした。

「良かった。本当に良かった。おめでとう」

 先生は泣いて喜んでくれた。

 私は先生に沢山迷惑をかけた。

 先生からの課題もやってこない事が多かったが、叱らずにしっかりと指導をしてくれた優しい先生だった。

 先生には週一の塾の時間や日付を両親に内緒で勝手に先生とLINEで変更したりしていた。

 私は先生に対して悪い事しかしていない。複雑な気分だった。

 しかし、凄く嬉しかった。それと同時に申し訳なさで一杯だった。

 家庭教師の時間が終わり、かずまにLINEをするが、返信が来なかった。

 どうやら今日私が帰ってきた時間が遅かったからだそうだ。

 普段よりも三十分程度LINEするのが遅くなってしまった。

 私はゆかちゃんに相談をしてかずまの怒りが収まる方法を提案してもらった。

 しかし、その内容が目を見張る内容だった。

「かずまくんに裸の写真を送るのはどう?恥ずかしい写真や動画を積極的に送るのは行動力を示すチャンスだと思うよ。」

ゆかちゃんは私にそう言ったが、戸惑った。

 そんな写真や動画を撮影した事なんて一度もない。

しかし、かずまの怒りが収まって行動力を示す事が出来るのなら送ろうと決心した。

 私はかずまにLINEで写真や動画を送るとかずまの態度が変わった。

 機嫌が良くなったのだ。

 やはりゆかちゃんに言う通りにして良かったと思った。

 私はかずまと平和に過ごしたい。ただそれだけだった。その為なら何でも出来た。

 二月二十三日

 この日はかずまと会う日だった。

 私は今日もいつも通り塾に行くと両親に話していた。

 しかし、受験に合格したのに朝早くから行くのはおかしいと言われたのだ。

 遊びに行くとは言えなかったので、何とか両親を説得したが、塾に好きな人が居るのではないかと両親は恐らく察したようだった。

 かずまとは八時に約束だったが、着くのに三十分程度遅くなってしまった。

 私はかずまに事情を話して何とか許して貰えた。私は一安心した。

 しかし、帰ってきた後に両親に問い詰められ、付き合ってる人が居るという事を報告した。

 ネットの人だとは言えない為、塾の人だと嘘をついた。

 三月四日

 ゆかちゃんの命が危ないとの事だった。

 どうやらゆかちゃんは頭が良いが故に脳に負担がかかっているようだった。

 私のせいで最近はさらに脳に負担がかかって仮死状態になったとの事だった。

 私は母に事情を話して学校を休ませてもらった。こんな時に呑気に学校なんて行っていられないと思ったからだ。

 私は泣きながら母に語り、何とか休むのを許して貰えた。

 私はかずまにこまめにゆかちゃんの状況を聞きながら心配をしていた。

 するとかずまから衝撃のLINEが届いたのだった。

「言わなければならない事がある…多分単位貰えない。退学。」

どうやらかずまは学校に通う日数が足りなくて退学になるとの事だった。

 しかし、私は退学する事なんてどうでも良いと思っていたのでそう伝えると…

「社会はそうだとは思ってくれないよ…?特にあいなのご両親とかね。」

 確かに私の両親は許してはくれなそうだ。

「社会に認めてもらえなくても私はかずまの生き方、行動…全部尊敬してる。どんな人が否定してもね。」

 私はかずまにはっきりとそう伝えた。

 学歴より重要な物は人柄だ。私は人柄でかずまを好きになったのだから。

「そっか。」

 かずまは少し冷たげにそう言った。

 夜になってもゆかちゃんの状態は変わらなかった。

 私は眠くなったので少し仮眠を取ろうと思い、かずまにこれから画面録画じゃなくて通常の録画をするので返信が遅れると伝えた。

 二時間後、

「あいな今何してる?大丈夫?さすがに遅くない?やめろよ……おい、これだけ送れば気づくよね?あいな!!!」

かずまからのLINEの後、通話で気付いた。

 録画をしながらだと通知音しか聞こえない為、LINEが来たことに気付かなかったのだ。

 私は急いでかずまに謝罪をした。

「ごめん。ずっと録画してたからラインに気付かなかった。」

 私はありのままに伝えた。

「もういいよ。あいなはそういう人だから。俺に尽くすように変われないの分かってるから。」

 かずまは私にそう言った。

「でも変わる。それに録画してるとラインの通知が表示されないんだ。通話は音が鳴ったから気付いたけど……」

 私はかずまに心配をかけてしまったのは申し訳なかったが、仕方の無い事だと思ったので必死にかずまに伝える。

「変わる変わる言って変われてないよね?俺は表示されるよ。設定の問題でしょ。」

 かずまは私を信用してはくれなかった。

 私はさすがにムカついた。かずまの設定がどうであれ、私のスマホの設定とは違うはずだ。

 しかし、ムカついても言い返す事は出来なかった。

 その夜私宛にゆかちゃんから手紙が届いた。

 ゆかちゃんはかずまの幸せはもちろん、私の幸せもいつも考えてくれていた。それに気付かされて再び自分の事を責めた。

 どうして私は二人の望む人になれないのだろう。それが凄く悔しかった。

 二日後にゆかちゃんは目を覚ました。

 安心した。このまま私のせいでゆかちゃんが亡くなってしまったらどうしようかと考えていたから。

 三月九日

 かずまといつも通りに八時に待ち合わせで友達と遊びに行くと両親に伝えたのだが怪しんだ両親、特に父が外に出さないと言い出したのだ。

 どうやら両親はこんなに早くから約束しているのがおかしいと感じたらしい。

 私は何とか両親を説得し、無理やり家を出る。両親は私の事を「頭がおかしい」と罵ったが、私はどうしてもかずまに会いたかった。

 両親はどれだけ怒っているだろうと考えると帰るのが怖かった。

 私は覚悟を決めて母にかずまと会って貰えるように話した。

 かずまと母はお互い気が合ったらしく好印象だったようだ。

 しかし、父は会っていないままなので印象は悪いままだ。父からの交際の反対が続いた。

 三月十三日

 ゆかちゃんにかずまへ再び裸を送るように催促される。

 私は送ると答えたものの、自信が無かった為、送る事に躊躇していた。それがいけなかった。

「ゆかから聞いたよ嘘つき。もう他の誰かに送ったんじゃないの?」

 かずまはどうやらゆかちゃんから私の裸が送られてくる事を知っていたが、送らなかったので嘘つきと言ったのだろう。

 しかし、誰かに送ったという疑いをかけられるのは良い気がしなかった。

「そっか。でも誰にも送ってないよ。」

 私ははっきりとそう答えた。

「もう信用出来ないよ。じゃあな。」

「誰にも送ってないし浮気なんかしてないよ。」

「嘘をついた事に変わりない。」

「そうだね。変わりはないけど……」

「ゆかを苦しめるの楽しい?」

「楽しくない、苦しめたくない。」

私が悪かった。躊躇せずに早く送っていればこんな事にはならなかったのだから。

「うるせーよくそ。寝れねーまじでお前のせいで倒れるからな。もう本当に嫌。あああああああああ。もう本当に最悪。ふざけんなふざけんなよ!!!イライラする。」

 かずまは壊れたように怒り狂った。

「ごめんなさい……」

 私は謝る事しか出来ない。

「謝って済むの?いまなにしてんの?もういいやおやすみ。」

 今日の所は寝る事になった。

 三月十四日

「もう苦しめない…幸せにする。」

 私はかずまにLINEを送った。

「信じられないんだけど」

 かずまから予想通りの返信が来た。

「そうだよね。でもこれでダメだったら…

 もう本当にばいばいしていい。それくらいの覚悟を持つ。」

 私はこれで私が変われなかったら幸せに出来なかったら別れると言った。それくらいの覚悟を持って接するという意味でかずまに伝えたのだが、伝わっていなかったらしい。

「その考えがうざいんだけど。ばいばいしたいなら良いよ。しろよ。」

 かずまは私が別れたいと解釈したらしい。

 否定をしたが、かずまは折れなかった。私は本気で好きでかずまの事を考えていると伝えても伝わらなかった。

「言ってる事と行動が違うんだよ。本気で好きとか言いながら理解してない。お前の言葉とか誰が信じるんだよ。嘘つくくせに。」

かずまの言う通りだった。私はゆかちゃんに写真を送ると言いながら送らなかった。私は嘘つきだ。その通り過ぎて何も言い返せなかった。

「昨日嘘ついた時点でもう無理だよ。よくこの状況で嘘つけるよな。よくゆかを裏切れるよな。裏切ったらゆかの命を奪うことになるっていう状況でさ。」

 かずまは信じられない事を言った。

「命を…奪う…」

 私はかずまの言葉をオウム返しのように返す事しか出来なかった。

「お前がしてることは殺人だよ」

殺人…私は殺人を犯しているのだろうか。私はゆかちゃんの命を奪っているのだろうか。

 私は唖然とした。

「人殺し」

 再びかずまからそう送られてきた。

「自分に自信がなかったんだ。送ってかずまが嫌な気持ちになったらどうしようって。こんなネガティブなこと言えなかった。送るって言ったのにおどおどしてそんなこと考えてるなんて。」

私はありのままに伝えた。

「だからその考えがうざい」

 かずまはそう言った。

 だったらどうしろというのだろうか。自分に自信をつけるようにしたら良いのだろうか。

「あとゆか見つかったから、ベンチで一人で震えながら泣いてたお前のせいでな。ゆかと話してくるから暫く待ってろ。一人で何かするなよ?特に自殺とか。絶対すんなよ。浮気もな。お前に何かあったら俺もうだめだからね。嫌いになったわけじゃないから。好きだからさ。」

かずまは私にそう言い残して二時間ほど返信が来なかった。

「人殺し」かずまが私に言った言葉が何度も頭を過ぎった。

私がした行為は許されるべきではないだろう。 ゆかちゃんとかずまを裏切った私はこれから何をすれば良いのだろうか。そう考えた。

 かずまが帰ってきた。どうやら怒りは収まったらしく、暴言を吐かれる事は無かった。

「あいなは今まで何を学んできたの?ご家族がどういう育て方してるの?ただ厳しいだけで大切なものを教えられてないように思えるよ。」

 かずまは私にそう言った。

 その通りかもしれないと思った。

「確かにそうだね。私は大切なものを学んできていない。何もかも全部誰にも頼らないで教わらないで自分で考えてやってきた。」

 私は誰かに頼るという事をしなかったのだ。

「……正直、それは子供の育て方を知らないよ。愛もない。だいたい長時間怒ったら思考能力が低下しちゃう。」

 確かに私の両親は長時間私を叱る事が多かった。

  だが、かずまは自分の事を棚に上げている。そこが引っかかった。

「そんな家庭にいて誰かを幸せに出来るわけがない。本当の愛を知らないんだから。」

「じゃあどうしたらいいの……?本当の愛を知るにはどうしたらいいの?」

「親が変わる以外ない。でもそういう親は変われない。離れる以外にないんじゃないかな?」

「でも離れた所でどうするの?居場所が無いよ。」

「じゃあそれが運命なんだよ。そこまでって事。人によってはそこから進めるけどね。」

 私は考えた。両親と離れたい。特に父とは。

 私の父は声を荒らげて自分の思い通りにならないと怒るタイプだ。反抗期が来る事を許さなかった父は意見をすると反抗だと怒られる。

 そんな父が交際を認めてくれるわけが無かったからだ。


 かずまからお泊まりを提案された。

 しかし、認めてもらえるわけが無い。

 私はクミに相談をして協力してもらう事になり、クミと他の友達とお泊まりをするという事で了承を得た。


 これから先両親やかずま、ゆかちゃんとどう接したら良いのか考えている中で倒れる事が良いと考える。

 倒れればかずまやゆかちゃんが心配してくれる。弱っていれば誰からも責められない。責められる毎日から解放される。かずまやゆかちゃん、父からも。

 私は倒れる方法を検索する。画面録画をしている為、以前用意した父の以前のスマホだ。

 今思うとこの時点で既に限界を迎えていたのかもしれない。


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