管理社会になる途中
仮想空間で何でもできるようになってしばらく経った。
以前までは考えつかなかったことが日常となって、子どもたちは今日も仮想空間で学習をする。
「アバターが違えば争いにつながるから」
と、AIが言えば仮想空間内では、みんな同じアバターであることが義務付けられた。
「見た目が同じだと匿名性があがるから危険だ」
と、AIが言えば、現実と仮想空間の結びつきが強くなって偽装がより困難になった。
ただ、仮想空間内で違いが見分け辛くなってしまった事も婚姻率の減少につながっているのではないか。
そんな事をAIが言ったので、交流する機会も設けた。
同じ地域、同じ誕生月、同じ年齢の人が16歳になると、1年に1度定期的に集められ、交流会が開かれる。
「あいつめっちゃ不細工だったわ」
「めっちゃ臭かった」
「でこ広すぎ」
とかなんとか陰口を言えば、危険因子として監視対象だ。
逆の良い評判もほとんど出ない。
あからさまに交流を増やすこともよくない。ライバルが増えると教わるからだ。
あくまで少しずつ、少しずつアプローチをかけていかないと。
そんな事を考えていた少年は、今日も意中の人に接することができなかったようだ。
個人連絡先だけでも何とか手に入れたい、とは思うもののライバルが増えても困る。
少年は、そんな葛藤を抱えながら今日もただ画面の片隅に彼女を映すだけだ。
遺伝子的には別の者がいいのに。
やっぱり、相手も管理した方が合理的ではないか、なんてことを今日もAIは考える。
テーマ
「毎日が誰かの誕生日」×「仮面舞踏会」
→マスクって見た目を変えるよね。
→マスク義務化=見た目のいじめ防止…誕生会のみマスクつけない。
→マスクじゃなくて仮想世界のアバター一緒にした方が見た目の差異がなくなるなぁ。
現実世界で同じ誕生日の人が集められて交流したらいい感じになる人もいるんじゃね。
→なんかディストピアになりそう。