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part.02 再会の予感【01】


 軽く二週間以上掛かったものの、私達はようやく王都に辿り着いた。


「ここが王都……」


 ガイドブックによれば、闇の国の王都は、魔王の御座す黒貴城を中心に円を描くように広がり、一から五までの数字が振られた街で区切られている。それらを併せて“王都”と総称するようだ。城へ繋がる橋がある唯一の街である一番街に降り立った私は、大きな城を見上げた。

 黒貴城——通称ブラックパレス、もしくは魔王城。漆黒の城だ。いかにも魔王の居る城のような堂々たる佇まいは存在感があり、今の私には禍々しいもののようにも映った。


「ユイちゃん勇者なんだし、この後は城に行くよな?」


 「案内するよ」と買って出てくれた葉さんだが、私は首を横に振った。意外そうに丸まった菫色の瞳に見下ろされつつ、気不味く頭を掻く。


「そのぅ……け、決心が、つかなくて」


 もごもごと口にすれば彼はプッと噴き出した。


「ここまで来て決心も何もないだろ〜?」


「だ、だって……私は闇の国のお偉方は何となくのお名前くらいしか知らないですし……」


「四天王については一切分からない感じ?」


「先代なら何とか……」



 そう、先代なら少しだけ知っている。

 例えば、かつて四天王は国の四方を囲むように建つ要塞に住み込み周辺の領地を治めていたようだが、先代からは何故かその任務を解かれ、魔王城仕えになったらしいとか。先代四天王第二席を務め上げた人物は優しくてハンサムでお茶目な方であるとか、そういう豆知識(?)なら、少し。

 だけど今代についてはさっぱりだ。たぶん強いんだろうなあ、くらいしか分からない。

 愛想笑いを浮かべていると、葉さんが腕を組んだ。


「……いや、どうして先代知ってて今代知らないのよ……。六十年以上前だし、生まれてないだろ?」


「うっ……」


「……ちなみに先代四天王は?」


 何やら呆れた顔をされており、どうも私の知識を疑われている気がしないでもない。


「えっと、第二席がミシロ=ハイラスコールさんですよね!」


「そうだな」


「第一席は確か……す……スバ……ツバメさん?」


「…………第三席は?」


「トランプ……違う……何だっけ……タロットさん……?」


「………………第四席は?」


「……ヨースケさん?」


 途中から笑いを堪えきれずに半笑いになっていた葉さんを見るに、たぶん違うんだろうなあ、と思いつつ最後まで答えれば。彼はその表情を維持したまま首を傾けた。


「なーんでミシロの奴だけフルネームできっちり抑えてんの?」


「ミシロさんには以前故郷でお世話になったことがありまして……」


 口にして、ふと気が付いた。


(よく考えたら闇の民の知人ならあの人達がいたっけ……)


 いや。正確には()は知人ではないか。

 余計な思考を頭から追いやり、前方を見上げると、葉さんは訝しげに片目を窄めていた。


「……ミシロに?」


「はい。酔うとよく昔話をしていらっしゃったんですが……でも、全員違いましたか?」


(すばる)さん、カルタさん……名前で連想ゲームでもしたみたいになってたぞ。ああ、でも第四席は合ってたか……」


 「やっぱり!」。つい大きな声を出してしまった私へと一瞥を投げかけた彼の言い分は理解できた。急にどうした、と言いたいのだろう。私は胸を張った。


「ふふん、実は第一席と第三席の方よりは自信があったんです!」


 見上げた先で、葉さんが整った眉を寄せた瞬間を目撃した。


「アイツ、そんなに第四席の文句言ってたの?」


「どうしてです?」


「あ〜、なんだ……不仲説があってな?」


「そういうのってデマも多いのでは? いつも楽しそうでしたし、文句なんて聞いたこともないですよ。むしろ好意的でした」


 件のミシロさんは、お酒が入るとニコニコ饒舌になる。するとたくさんの思い出話を聞かせてくれるのだ。ヨースケという名の先代四天王については特によく話題に挙がっていたように思う。嫌いな人について語る顔が、あんなに優しくあるものか。


「………………マジで?」


 しかし葉さんはどうにも信じられないようだった。噂には尾鰭が付くものとはいえ、そんなにも事実と乖離した話が出回っているのだろうか?


「優秀な方なんでしょう? 魔法が大好きで、四天王の中で一番に魔法が得意で、とにかく魔法オタクな方だったと聞いています!」


「………………」


「あと、その方の作るお菓子が凄く美味しくて大好きだったとか……」


「……………………」


「というかミシロさんから陰口とか一度も聞いたことないですし……って、葉さん?」


 何やら無言で俯いているものだから、私は一歩足を踏み込んで彼の顔を覗き込んだ。気のせいか、その顔は少し赤い。少なくとも口元がにやけているのは確かであった。


「どうしたんですか?」


 私から目を逸らした葉さんに「見るの禁止」と肩を掴んで距離を取らされてしまった。しかしその後も興味は消えず、彼をジッと観察していると、葉さんはわざとらしい咳払いをひとつ。


「ユイちゃん、ガイドブック貸してよ」


「え。あ、はい」


 よく分からないまま、亜空間に収納していたそれを取り出し葉さんに手渡すと、彼はパラパラとページを捲ってこの城下街の地図を開いた。長い指がとある一点を示す。


「すぐ城に来ないんなら宿が必要だよな? この通りにあるロイヤルホテルって宿が中々良いよ。一番街の駅前通りで一際でかい建物だから、すぐ分かるはずだ」


「…………」


「俺はそろそろ職場に向かうわ」


 そそくさと半身を返した彼が何を誤魔化そうとしているのか、それは私には分からない。先刻の会話に照れる要素もなかったはずだが、理由についてはきっと教えてもらえないのだろう。早々に諦め、私は何だかんだで終始親切だった同行者に笑みを向けた。


「何から何までありがとうございました。葉さんがいて助かりました」


 闇の国に着いてからというもの世話になりっぱなしだった同行者に改めて礼を述べると、「怪しくなかっただろ?」とからかい混じりに告げられる。

 私は笑みを消し、頭を掻いた。


「いえ、それとこれとは話が別っていうか」


「何でよ? 酷いなー」


「だって——」


 言葉を切り、周囲に視線をやった。行き交う人や店の呼び込みをしている店員など、様々な人々が私たちを——恐らくは葉さんをチラ見している。

 闇の国に着いてから二週間と数日。

 流石に慣れてはきたけれど、やはり気になるものは気になってしまうではないか。



「——この国に来てから、物凄く目立ってるじゃないですか、あなた」


 私はこの人の正体に対する疑念を更に深めていた。

 アイドルでもないならばこの注目ぶりは一体何故だというのか。とはいえ、聞いたところでどうせ今まで何度か尋ねた時のようにはぐらかされるだろう事は予想できる。しかし最後の別れ際だし、もう一度ぐらい問いかけてみようかという気分になった。

 ジッと葉さんを見つめ上げると、面白そうに見下ろされ、少し怯む。


「葉さんって何者ですか?」


 それでも一応口を開くと、葉さんは「んー」と少し悩むそぶりを見せた後、やけに爽やかに笑う。


「その答えを俺の口から言わせたいなら有料ね」


「えええ。そこでお金取るんですか?」


「お金じゃなくてこっち」


 こっち、と彼が人差し指で示したのは、葉さん自身の唇だった。薄身のそれを見つめてみるも、何が起こるでも無し。「あれ、伝わんない?」と、意外そうにされてしまった。


「本当にユイちゃん初心なんだな」


「う、うるさいですね。何なんですか」


「ちゅーしてくれたら教えてやるよ、ってこと」


「……っ⁉︎ か、からかわないでください!」


 急にそんな、どうしたのだろう。

 何度も同じ部屋で夜を明かし、それでも特に何もしてくる気配のなかったこの人に対して、私はそれなりに気を許していたから、尚更困惑した。

 警戒する私へ向け、葉さんはにへらと表情筋を緩ませる。


「じゃあ内緒」


 …………気になる。

 もしも言う通りにしたら、本当に教えてくれるだろうか。

 いや、でも、こんな往来で……?


「そんなに見つめて、気になるならキスしてくれていいのよ?」


「い、いいです。別にそこまで気になってないですし。なんで街中でそんな事しなきゃならないんですか。もう。人前でなんて変態さんなんですか? 変態!」


 滑り出た本音に気分を害した様子もなく実に楽しげに笑った葉さんは、睨みつける私にガイドブックを差し出した。


「じゃあ、俺はもう行くわ」


 ぽん、と一度私の頭に手を置いて。


「ユイちゃんとの旅、中々楽しかったよ。この先一人だけど気をつけてな」


「……私もけっこう楽しかったですよ。ありがとうございました」


 ガイドブックを受け取りつつ笑顔を向け、踵を返した葉さんを見送った。

 背の高い後ろ姿はすぐに雑踏に紛れて見えなくなってしまい、少々の物寂しさを覚えた。存外アッサリとした別れだ。一期一会と云うには関わりすぎてしまったが、これもまた旅の醍醐味なのだろうか……などと物思いに耽りつつ、私もまた歩き出す。

 ガイドブックを頼りに教えてもらった宿に向かう途中、ある事に気が付いた。葉さんはもう居ないのに何故か私も通行人に見られているし、なんというか、ヒソヒソされているような気がするのだ。


(……何だろう?)


 別に可笑しな服装ではない筈だし、朝に鏡を確認した時は寝癖もなかったように思う。闇の民と光の民はパッと見だけならそこまで差異がない生き物だし、そうだとしても昨今は交流も盛んなので私が異国の民だから目立っているわけではないだろう。……まあ、光の国でならこういう対応にも慣れてはいたが、この国に来てからの日々でこんな視線に晒されるのは初である。

 何故、と浮かび上がった疑問に適当な解答が思い浮かばぬまま、もやもやを抱えながら往来を歩いた。


「……ん?」


 ふと、前方にある本屋が目に留まった。正確に言うと、私が気になったのは建物ではなくそこから出てきた客である。

 中肉中背の男性と、偶々目が合った。それだけならば何の問題も無いが、しかし男は私を見つめたままその場で立ち止まり、持っていた袋を漁って雑誌を取り出したのである。そして何事かを確認して、また私を見て、私に見られている事に気が付いたかそそくさと雑誌を小脇に抱えて立ち去っていくではないか。

 何とも怪しい。

 まるで怪しんでくれと言わんばかりの露骨な行動だ。

 私はとりあえずその本屋に入る事にした。雑誌類が置いてあるコーナーを探し当て、平積みされていた一つの雑誌に目が止まる。並んでいる数が他の雑誌に比べて明らかに多く、また目立つ場所にあるこれは、闇の国の人気雑誌なのかもしれない。


 月刊ブラックとのロゴが踊るそれを手に取り、表紙を眺めた。『魔王様、子供になられる⁉ 噂の真相に迫る!』『今月の四天王』『“魔法使い”の次の恋のお相手は……』などのフレーズが詰め込まれており、どうも魔王たちについて囃し立てる雑誌のようだ。

 封がされていないのを良いことに、表紙を捲ってみた。カラーページには金髪青眼の美青年の写真が掲載されている。まるでお伽話に出てくる王子様のような、優しげで繊細な風貌だ。どうやらこれが魔王様らしいが、とてもじゃないが最強の名を背負っているようには見えない。近々対面する事になるその顔を感慨深く眺めた後、もう少しページを捲ってみた。


 『魔法使いの逢瀬を独占入手‼︎』——いかにも隠し撮りっぽいモノクロ写真がでかでかと載っている。お情け程度に女性側の目線に黒い線が入っているだけで、それ以外は何のモザイク処理もされていないその写真を見て、雑誌を握る手に力が入った。

 これは少し前に葉さんと立ち寄った和菓子屋だ。男の方、見覚えがある。オールバック、垂れ目、綺麗な顔、どう見たってこれは葉さんだ。あの時食べていた三色団子も机に置いてあるし間違いない。それに、もみあげの毛だけを伸ばした髪型や覚えのある服装など、黒い線が目元に入っている女はどう見たって私である。


『噂の絶えない魔法使いの次なる恋のお相手は年若そうなお嬢さん? 現在光の国へのバカンス中と噂されていた若宮葉介が現れたとの情報を聞きつけ、記者は目撃情報を辿った。某茶屋でその姿を見つけることができた』


『先代から四天王として王家に仕え、魔王様よりも強いと謳われる最高の魔法使(まほうつか)い。彼こそは魔法使いの中の魔法使いだと、畏敬の念を込めて“魔法使い(マジックマスター)”と呼ばれるようになった彼だが、女性関係の奔放さも城一番と言われ——』



「…………」


 ——若宮葉介。それは四天王第一席の名であるらしい。しかも、この雑誌によれば先代から四天王をしていたとある。つまりいつかミシロさんが話していた“ヨースケ”とは、彼のことだったのだ。


 ……なるほど?

 あの人の正体をアッサリ教えてくれた雑誌をゆっくりと元の場所へ戻し、ローブのフードを深めに被った。周囲の視線がこちらに向けられていないかつい確認してしまう。

 葉さんはつまり、怪しい人でも危ない人でもましてやアイドルでもなかった。偉くて有名な人だったのだ。城の幹部ともなればそりゃあお金もあるだろう。


 なるほど。

 ……なるほど。


 これまで不思議に思っていた様々な事柄にようやく答えを得た我が胸に去来したのは、すっきり、爽快といった感情ではない。先刻のもやもやが復活し、さらに深刻に胸中を渦巻いていた。

 だって、私は一応聖剣グランシャインを託された人間であるからして、近い未来であの人と戦うことになるのである。

 …………胃が痛くなってきたなぁ。


(というか、それなら教えてくれてもよかったのに……)





 魔王城は目と鼻の先、いつでも行ける場所にあるけれど——


(決心が付かない……)


 そんな訳で、私は王都を散策していた。本屋を巡り、この国の情報誌などを買い漁ってみたり、街中を走る車を何となく眺めたりと忙しい。


 今立っているのは「駅」と呼ばれる公共施設の近く。電車という魔導機械の車両が走る特殊な施設で、人々はその電車に乗り、他の街へと繰り出すようだ。詳しい作りは知らないが、蛇のように細長いそれは見たところ随分と動きが速い。バスを利用した時から思っていたが、この国の移動手段はあまりにも便利である。馬車くらいしか公共の移動手段が無い光の国とは大違いだ。

 まあ、これらの便利さは全て魔力というエネルギーがあるからこそ。魔力を扱う術について光の国はどの国よりも劣っているから、文化の遅れも仕方のないことかもしれない。闇の民や花の民からはそんな魔法のない暮らしが新鮮に映るようで、異国から見れば時代遅れの要素は光の国では重要な観光資源の一つとなっている。他の国にはない魅力と言うものだ、これも悪くはないだろう——などと、いつか酔っ払った聖王が熱く語っていたのをふと思い出した。

 今にして思えば、内心では遅れているのを気にしていたのかもしれない。


 一番街駅の周辺は商店街の比ではないほど混み合っていた。人混みの中、フードを目深にかぶり、ぼーっと突っ立っているだけの私はさぞや邪魔で不審だろう。


 そう思い道の隅へ移動したのはついさっきのことだ。

 赤煉瓦を組んで作られた重厚な駅舎を観察する。見上げるほどもある建物はそれなりに時を重ねてきたのだろうが、手入れが行き届いているのか、古びた印象はない。

 用も無いのに駅舎内に侵入するのは憚られ、次は足早に歩く人々をぼんやり眺めることにした。

 濃紺や紫など、濃い色のローブを羽織っているのは魔法使いだろうか。黒スーツの人も多く、闇の民は暗い色味の服を好んで身に付ける傾向があるように見受けられた。


 そんな中で、ふと白いスーツの男性を見つけて、私の目は彼に釘付けになった。

 燻んだ金髪。艶やかな革靴。太陽光を浴びて輝く純白のスーツが、暗い色ばかりの雑踏で浮いている。私が立つ道の反対側に、その人は背を向けて立っていた。誰かを待っているのだろうか。よく見ればケータイを耳に当てて、通話中らしい。

 ——胸の奥で、まるで私以外の誰かが騒いでいるような気がした。

 月を背負った白い人が私たち(﹅﹅﹅)へ手を差し伸べてくれた、寒い、凍えるような冬の夜が脳裏に蘇る。同時に、隣を歩いてくれた横顔や、何度も庇ってくれた広い背中も思い出す。


「……ミシロ、さん?」


 記憶の中の後ろ姿にピタリとハマったその姿に、思わず名前を呼んでしまった。

 私の声が聴こえるはずがない。

 独り言の音量で、この人混みで、距離だって最低でも五メートルは開いている。

 それなのにその人は振り向いた。

 その瞬間に強い向かい風が吹き、私のフードは背中へと追いやられた。


 ——目が合った、と思う。


 その人は、ミシロさんは、ケータイを落っことした。

 落としたケータイを拾うでもなく、ただ私を見つめて、それどころかこちらへ歩いてくる素振りすら見せた。踵を返し、一歩踏み出して、こちらへ——

 私の心臓は、不安からか喜びからか、とにかくうるさく騒いだ。冷や汗のようなものまで流れている。爽やかな風が心地よいのに、だらだら流れてくる。呼吸が浅く、息苦しくなってきた。

 前に歩き出すことも逃げ出すこともできずにただミシロさんのことを見つめていると、そんな彼に向かって結構な勢いで飛びつくように近付いた人物に気が付いた。


 白い腕に抱き付いたのは、農紫の髪の美しい人。

 気配に聡い人だったのにミシロさんは全く気が付かなかったらしく、ビクッと体を揺らしてその人を呆然と見下ろした。ミシロさんに親しげに触れるその女性は、何やら笑顔で話しかけている。二人の姿が——というか、ミシロさんの姿が先ほどよりも小さく見えるような錯覚を覚え、私はごくりと喉を鳴らした。

 手の中に『流れ星の杖(トゥインクル・ロッド)』を召喚する。杖の先端で地面を叩いた。カツン、と小さな衝撃が杖から手のひらへ伝わる。

 魔法陣も、詠唱だって省略して、私は魔法でこの場から立ち去ることにした。


「————」


 懐かしい(﹅﹅﹅﹅)名前を呼ばれたような気がして最後にまた彼を見た。やっぱり目が合ったから、色んな感情を飲み込んで笑って見せた。


「……ごめんなさい」


 小さく手を振る。

 視界が暗転し、私は次の瞬間には長期滞在の予約を取ったホテルの前に足をつけていた。

 杖を指輪に戻し、詰めていた息を深く吐き出す。


「……なんでまた逃げちゃったんだろ……」


 胸の中を満たすのは後悔か。

 とてもじゃないがこのまま散策を続ける気にはならなくて、私はホテルの客室へ戻ることにした。



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