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もふもふ

肉球に口づけを

作者: 山目 広介

 強制的に、さっせられるぅ~。


 それはある日の目覚めのことだった。

 気付くと唇に温かく柔らかいものが押し付けられていたのだ。

 薄っすら目を開けると、目の前に飼い猫が佇む姿が見える。

 冬の寒い朝。休みの日。眠い。

 そして私は寝返りを打つ。猫の願いを無視したのだった。


 だが、そう簡単に話は済まない。

 しばらくすると回り込んだ猫が再び私の唇をまた肉球で塞ぐ。

 やめて~、寝かせて~、と再度寝返りをした。無情にも猫の訴えを棄却する。


 しかし、またしても回り込み、それでも肉球にキスをさせる飼い猫。

 私は抵抗した。手を伸ばし、猫を抱きかかえて布団に入れて寝かせる。


 だがしかし直ぐに猫は起き上がり、目の前でこちらを見下ろすのだった。

 そして、そろりと前足を持ち上げていく。ああ、また口を塞がれる未来が見えた。

 素早く手を握り、じっと見つめる飼い猫を見つめ返す。諦めない猫。

 私は根負けして、抱きかかえてキッチンへと向かい、猫に朝食を与えるのだった。




 先週は唇に爪を引っかけられたのだから、まだマシな起こし方だからだ。

 私の唇は目覚めスイッチではないんだけどな。


 どうしてこうなったんだろう。

 私が先に起きていると、餌をやりに猫を起こして抱きかかえてキッチンへと行くのだが、寝ていると起こすのだろうか。それともいつものお返しなのだろうか。


 可愛いんだけど、やめて欲しい。

 もうちょっと寝かせてよ。全く、仕方ないんだから。

 マスクでもしていたら防げるのだろうか。

 次はマスクでもして寝てみるか。




 数年前の頬のツンツンと突くのから、猫パンチビンタに移行して、その攻防からなんとか打ち勝ったというのに、また変な技を身に着けて起こしに来るとは。

 飼い猫にも困ったもんだ。


 以前飼っていた猫はいやんいやんと鳴きながら起こして、私が抵抗して布団に入れると10分ぐらいは寝て、また起きてなーなー鳴いていた。そして仕方なく起きて餌をやっていた。その時も顔の前にいた。



 少なくとも猫は人の顔を認識している。

 家族も頬を引っかかれて顔を洗う時に沁みたと言っていた。


 そして、歩いていたりすると足にすり寄ってくるから、身体も認識しているはずだ。

 なのになぜ、顔をつつくのだろう。いや、布団から出ているのが顔だけだからというのはあるのだが。

 布団の脚の間や足の上に乗ってきたりもするのだから布団越しでも認識しているはず。


 若い頃は後ろから肩へとぶつかってきたりもあった。

 成長すると正面から訴える、とかあるのだろうか。


 でも野良猫とかは顔を見て甘えた声で鳴いて来る。人懐っこい猫だろうけど。その方が生き残りやすいのだろう。




 だがせめて声かけで起こしてくれないのだろうか。


 私は願う。私より遅く起きてくれ!!




 後日。

 飼い猫は唇を押さえるのは止めてくれた。

 しかし引っかかれる。生傷が絶えない。洗顔で傷口が沁みる毎日。


 そんなある日のこと。目覚めると口の中に猫の手が……。




 また別の日。

 暖かくなって布団から身体が出ていたからか、お尻をもふっと触られました。



 飼い猫との攻防はまだまだ続く。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いたずら好きなかわいらしい同居人感。最初の一文で語るに落ちる。心底こいつのことが好きなんだろうなと。 [気になる点] 洗顔のくだりが地味に痛々しい。妙に鮮明といえばいいのか。 [一言] 苦…
[一言] 猫と……猫と毎日イチャイチャしているんですね……ずっと新婚さん状態で……!
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