表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

おじいちゃん、それはフラグって言うんです。

【プロローグ】



「なんでこの娘は食パンなんか咥えて走ってるんだ!行儀が悪い!それに人にぶつかっておいて詫びも無しとは!どういう教育を受けとるんだ!!」


おじいちゃんが大声で叫んだ。


おじいちゃん。これは恋愛対象としてのフラグを立てるイベントなんだよ。王道のパターンなんだよ!

そうでもしないと主人公との会話が始まらないんだよ!


私は心の中で叫んだ。

おじいちゃんには伝わらなかった。


-遡ること数時間前-



「はぁ・・・この恋愛シミュレーションゲームにも飽きたなぁ。やっぱりRPGの方を買っておけばよかった。」



夏の都会はコンクリートの照り返しでひどく暑い。

とてもじゃないけど外には出られない。体を動かした方が良いのはわかっている。

けれども都会は暑すぎて無理。引きこもり気質の私には・・・・


なので夏休み中は家に引きこもる予定で恋愛シミュレーションゲームを買ったはいいが、3日ですべてのヒロインを攻略してしまった。我ながら恐ろしい才能だ。


世のリア充女子であればこのようなことに貴重な女子高生最初の夏休み3日間を無駄にはしないのだろう。

けれども私には一緒に遊べる友達もいなければ、もちろん彼氏もいない。

周りから見たら充実していないように思われるのだろう。

でも私はこの現状に満足しているので周りからどう思われようと知ったことではない。


なんてことを一人で考えていた。


しかし・・・購入したゲームも飽きてしまい途方に暮れていた。


そんな私の状況を知ってか知らずか、母親から一言・・・


「そんなに暇なんだったら、お父さんと一緒におじいちゃんのところに行って来たら?孫娘が遊びに来たらおじいちゃん喜ぶとおもうから。」


私はこのどうしようもなく退屈になってしまった休みから抜け出したかったから、二つ返事で了承し、父親と私の二人で父方の実家に遊びに行くことにした。

とは言え、おじいちゃんの暮らす地域は、人間よりも野生動物のほうが多いのではないかと思えるほどのド田舎だった。けれども都会暮らしの私にはどれもが新鮮だった。


・・・数年くらい前までは。


「お父さん、さすがに高校1年にもなってあんな田舎に行ってもやることなくて家にいるのと変わらないんだけど。」


私は仏頂面で父親に話しかけた。


「そうか?庭の木を登ったり、裏山で秘密基地作って近所の男の子と遊んだりしてたじゃないか。」


父親はニコニコしながら私に話しかけてきた。


「馬鹿を言え!一体何年前の話をしているのだ!高校1年にもなって秘密基地ではしゃいでいたらおかしな娘だと思われるだろ!あなたは実の娘がそんな目で見られてもいいのか?」


なんて会話をしながら車に揺られること数時間。目的のおじいちゃんの家に到着した。


おじいちゃんの家は広い庭に立派な蔵が立っている。

もともとは農家をやっていたそうだが、腰に来るとの理由で農家を辞めてしまい、今はご近所さんと仲睦まじく余生を過ごしているとのことだ。


おじいちゃんの家の玄関を開け、私はおじいちゃんを呼んだ。


「おじいちゃん。遊びに来たよ。愛しの孫娘が。」


居間の奥から野太い声で返事があった。


「おう!よくきたな。スイカが冷えてるから食べろ!」


開口一番スイカのすゝめですか・・・。まぁ、食べるんですけどね。


おじいちゃんは顔も怖いし声もでかい。初めて会う人はきっとビビッて近づかない。

マナーや礼儀にも厳しく、子供のころからよく怒られていた。特に箸の持ち方は何度怒られたか覚えていない。

絵に描いたような堅物だ。

そんなおじいちゃんも今は隠居生活の身。暇を持て余しているようで、私たちが来たのがよほど嬉しかったのか、見たこともない魚や獣の肉なんかを囲炉裏で焼き、これまた何なのか検討もつかない山菜なんかをふるまってくれた。


都会ではなかなか味わえないものをおなかいっぱい食べさせてもらった。


「そうだ!そういえば家からゲーム持ってきたんだ。おじいちゃんテレビ借りていい?」


私はおじいちゃんの家には似つかわしくないほど近代的な最新型テレビを見て、持ってきたゲームのことを思い出した。


「おう!買ったはいいがこんな田舎じゃあんまり見ることもない。好きに使え!」


私は最新型テレビにゲーム機を繋ぎ、3日で攻略を終えた恋愛シミュレーションゲームを起動した。

ふと、私は考えた。この退屈な夏休みをエンジョイするべく、普段できないことをやってみようと。

ただ普通にゲームをしても面白くない。かと言って新しいゲームを買うお金は無い。

そもそもゲームショップがない。

今あるもので楽しむには・・・・

頭をフル回転させ、今までにない閃きを期待したが、特に思いつくことはなかった。

仕方がないのでゲームのコントローラーを手に取り、ゲームを起動した。


「へぇ・・・それがげーむ機って言うんだな。手に持ってるそれで動かすのか?」


じいちゃんが物珍しそうにコントローラーを覗き込んだ。


「やってみる?」


私はおじいちゃんにコントローラーを握らせた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ