マイリトルラバー???
とある日の大学図書館
「理想の恋人ってのは、幼い頃から自分好みに育てるのが一番いい。」
アキラはそう力説する。
「源氏物語の紫の上みたいにか。」
「ああ、そうだ。でだな、俺はタイムマシンに乗って幼いサキをしつけることにしたんだ。」
僕は思わず飲みかけのコーヒーを吹き出した。
「おまえなあ、頭おかしくなったんじゃないの。だいたいタイムマシンなんてどこにあるんだ。」
「作った。」
「おい、いったいどうやって作ったんだよ。」
「根性で。」
アキラはどうやら冗談を言っているのではないようだ。
やつは大学始まって以来の天才、マッドサイエンティストなどと呼ばれている。
実際、空間をねじ曲げて”どこでもドア”を作ってしまった男だ。
本当に、天才となんとかは紙一重なやつなのだ。
「タイムマシンについてはわかった。で、よりによってサキちゃんの過去を改変するだって?」
「ああ、実はもう会ってきたんだ。」
サキちゃんがやってきた。アキラの首筋にぎゅっとしがみつく。
「お兄ちゃん、会いたかったよ。」
アキラはにやにや笑いながら言った。
「な、変わっただろ。」
確かに変わった。
サキちゃんはアキラのことは、「アキラくん」と呼んでいた。
それに、こんな感じで愛情表現をする子じゃなかった。
ずいぶん甘えん坊になったみたいだ。
「じゃあ、俺たちはいくわ。いまからデートなんだ。」
そういってアキラは腕を組んでサキちゃんと去って行った。
そういえば、あいつ・・・、妹ゲー好きだったなあ。
1週間後の大学食堂。
僕はサービスランチを、アキラはいつも通りカツカレーを食していた。
「ところでひとつ聞きたいことがあるんだが。」
「なんだ。」
「そのお前の顔の傷、どうしたんだ?」
アキラの顔は傷だらけで、頬には青あざができていた。
「たいしたことじゃない。サキにやられた・・・。」
アキラはニヤニヤ笑いながら言った。
「ちょっとな、他の女の子を見てたらサキが怒ってな。ボコボコにされた。」
「それにしてもひどい顔だなあ。」
アキラはカツをスプーンで器用に切り分けながら言った。
「なにせサキは空手と柔道の有段者だからなあ。」
「おいおい、サキちゃんってお茶とお花を習ってたんじゃないんか?」
「俺が変えた・・・・・。イテテテ。」
どうやら口の中も切れているらしい。カレーライスなど食わねば良いのに。
そういえば、アキラって格ゲーも好きだったなあ。
2週間後、学校近くの葬儀会館。
僕の前にはたくさんの花に飾られて微笑むアキラの生前の写真がある。
そして前方の席では黒い服に身をつつんだサキちゃんの姿も、
サキちゃんは放心しているのか、顔は蝋人形のように無表情だ。
アキラは3日前の夜、何者かに銃で撃たれたらしい。
弾丸は心臓を貫き、即死だったそうだ。
目撃者もいない。
あることを思い出して、僕はこの場をすぐにでも離れたくなっていた。
生前、アキラの言っていたことだ。
「俺はな、サキをゲームの主人公みたいに育てたいんだよ・・・・。」
アキラは確かに妹ゲーも格ゲーも好きだったけど。
たしかあいつが一番好きだったゲームは、サバゲーじゃなかったっけ。
以前アキラのうちに遊びに行った時付き合わされたことがある。
確か、女の子が主人公で、ゾンビを銃で撃ち倒していくってやつ。
サキちゃんはなぜか楽器ケースを持ってきている。
あのケースの中身は本当に・・・、楽器なのか?
彼女の手が楽器ケースに伸びた。
僕に与えられた時間はあとどれくらいなのだろうか。
育成ゲームを現実世界でやってしまうと・・・という発想です。
とりあえずタイムパラドックスは一切無視して(面倒なので)超短編にまとめました。




