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旧・脇役無双~この弓はエクスカリバーである~  作者: 古嶺こいし
この弓はエクスカリバーである
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エクスカリバー抜きました

 マーリンガンの所へと森の中をあるいていく。

 この森に来て一週間が経つが、すっかり馴染んでしまった。


「やあ今日は遅かったじゃないか」

「来る途中でロンロさんが困ってて、荷物運びしてました」

「人助けは良いことだね」

「お返しにリンゴを貰いました」

「グッジョブだディラくん。すぐに切って食べよう」


 不器用ながらにウサギに切ったリンゴをモシャモシャ食べる。


「君なんでアクセサリー作るの上手いのに不器用なの」

「さぁ、なんでなんですかね?集中力の違い?」

「常に集中してほしいなー。見てよあれ、君に割られないようにお皿を木の器に総入れ替えしたんだよ」


 キッチンの中のお皿が茶色になってた。わらう。


「集中力って何で鍛えられるんですかね」

「……訓練?」


 二人でチャカチャカ作業中にも訊ねてみたが、微妙な答えが帰ってくるだけだった。


「もしくは、弓、とか?」

「弓?」

「標的の動きを予測したり、的確に当てたり。この魔法具を作る作業も相当な集中力が要るんだけどねぇ」


 ひとつ間違えたら大爆発らしい。

 ちなみにその話聞いたの昨日。


「弓ねぇ…」


 ブリテニアスオンラインではずっと使ってた武器だけど。


「……そういえば、ディラくん家に来るとき、というか帰るときもどっか見てるけど…」

「?」

「何か、見えるのかい?」


 なんだその顔。


「…うーん。見えるというより、視線を感じるみたいな?」


 何かが突き刺さってくる。


「もしよかったら、君に見せたいものがあるんだけど、どうかな?」









 森の中へと入っていく。


「なんで森の入り口に戻されないんだ?」

「ボクがそう望んでないからね」

「意味わからん」

「わかんなくて良いよ」


 ザクザクと草を掻き分けて進むマーリンガンの後を付いていく。

 ずっと感じていた視線が強くなってくるのを感じていた。

 なんだろう。

 体がソワソワする。


「そら、着いた」


 開けた場所に岩が置いてある。


「おお!なにこれ凄い!」


 岩には金色の棒が突き刺さっていた。

 大きさは一メートルほど。

 例えるならば金色の鉄パイプである。


「エクスカリバーだ」

「ボクはノーネームゴッズ(名無しの神具)って呼んでる。君んところではそう言うのかい?」

「岩に刺さった武器はエクスカリバーなんですよ」

「へぇー、そうなんだ。はじめて知ったよ」


 近くに来る。


 この刺さり具合、まさしくエクスカリバー。


「これ抜けます?」

「さあね、でも簡単には抜けないんじゃないかな?」


 一回だけ試してみよう。

 気分はアーサー王。

 しっかり握りしめて集中する。


「何せこれは選ばれたものしか抜けないものだからね。例えば勇者とか、英雄とか、武器の精霊に愛されたものとか」


 呼吸を整えて…。


「君が変に気にしてたから連れてきたけど、まさか抜けることなんて「ふんっ!!」


 一気に引き抜いた。


 きれいに抜けた棒がキラキラ煌めき、マーリンガンが驚きのあまり口をあんぐり開け、天からは光のスポットライトが俺を照らした。


「……抜けちゃった」

「戻しなさい」

「はい」


 ヤバイヤバイと戻そうとしたが、何故だか穴が無くなっていた。


「………」

「………」


 無言で見つめ合う俺とマーリンガン。


「あの、ごめんなさい?」


 とりあえず謝る以外思い付かなかった。










 頭を抱えたマーリンガン。


「そうか、そう言うことか」

「何がです?」

「君も一応勇者として召喚された事になっているのか」


 巻き添えなのに?


「というと?」


 それとこの棒に何か関連が?


「そのノーネームゴッズは勇者の為の武器なんだ。だから勇者の資格がないと抜けないはずなんだ」

「ほうほうほう」

「その武器を守る役目がボク」

「ウンウン」

「面白半分で見せたらまさか抜くなんて思わないじゃん!!」


 じゃんじゃんじゃん…と、エコー。


 森の中なのに。


「どうします?立て掛けておきます?」

「抜いてしまったからにはそれは君の所有物だ。きっと何処までも追いかけていくだろう」

「なにソレ怖い」


 呪いの人形みたいじゃん!!?


「仕方がない。ボクは見なかったことにするしかない。君もあれだ。さっさとそれを何かの武器に変化させて村を出た方がいい」

「なんで?」

「近くの教会が察知して来るはずだ。ボクは全力でこの村を守るけど、どうしても生まれたてのソレの気配は隠しきれないだろう。やつらは君のお友達に持たせたかったはずだからね」


 というとつまり?


「この村から逃げるしかない。嫌だろ?君の嫌いな兵士がたくさんやって来て、君からソレ奪うだけじゃ飽きたらずに、多分消されちゃうぞ」

「それは嫌だな」


 一番嫌だ。


「今なら抜いたという気配で、移動するソレの気配を誤魔化せる筈だから、明日くらいには村を出た方がいい。ボクの責任でもあるから、何とかして旅に役立つ物をかき集めよう!」

「俺もおばあちゃんに言い訳考えないと…」


 あーあ。この村好きだったんだけどな。


「とにかく武器に変化させてやれ。今のままだと可哀想だ」

「わかった。どうやるんだ?」

「念じるんだ。変われ!って」


 棒を持ち直して念じた。


 “ 変われ!!! ”


 すると棒がぐにゃぐにゃ動いて姿が代わり。


「おお…」


 仕込み弓に変化した。

 使い慣れた仕込み弓そのままだ。嬉しい。


「名前は決めたのかい?」

「名前はもう決まっている」


 弓を天に突き出した。


「お前の名前はエクスカリバーである!!!」


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