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旧・脇役無双~この弓はエクスカリバーである~  作者: 古嶺こいし
この弓はエクスカリバーである
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記憶リターン

「ん?」


 小屋の方でなく、何故か違う方向が気になった。

 そこに何があるわけでもない。


 なのになんか視線みたいなの感じる。


「鹿とか?」


 森ならいそう。でなければウサギ。

 まぁ、いいや。

 とりあえずはこっちだ。


「こんにちわー」


 ドンドンドンと扉を叩く。

 すると。


「開いとるよー」


 との声が中から。

 入っていいのか。じゃあお邪魔しまーす。


 ガチャリと扉を開けるととてもいい臭い。


「おおお。めっちゃキラキラしてる」


 部屋の中にキラキラが溢れている。

 その中に、青銀の髪の毛の人が腰掛けながらコーヒーを飲んでいた。

 最初女の人かと思ったんだけど。


「あれ?知らない人だね?でもここに来ることができたってことは村の人間ってことだよね」


 声が男だった。


「つい最近住み着きました。ディラです」

「ふーん。真名隠しか、でも魔術師ではなさそうだね」

「え!」

「え?」


 え?真名隠し?


「あの、俺の名前はディラではないんですか?」

「え?んん?どういうこと?」

「………自分の名前すら忘れるおっちょこちょいでした」

「落ち込まないで、事情はきくからさ」


 この人はマーリンガンという名前だった。

 こんな見た目して87歳のおじさん。

 詐欺じゃん。


「つまるところ記憶喪失と」

「頭打ったらしいですからねー」


 おでこに傷が残ってしまった。


「ふむ。記憶を治すために少し頭の中を見させてもらうよ。良いかい?」

「どーぞどーぞ」


 頭を差し出すと鷲掴みされた。

 そんな掴み方…。


「うーん。落ちたときに打ったね。痛そうな打ち方。上から降ってきた人に弾かれてだから勢い凄いし」


 どんな打ち方したんだろう。


「おっと、その前に結構ショックなことあったみたいだよ?お友達かなー?絶望のような顔してるね。二人とも」


 何があった。


「…君盗賊団だったの?へー、意外だなー」


 まじか。俺悪者だったの?


「んん?これは、どういうことかな?……」


 マーリンガンがこっちを見る。


「聞きたい?」

「聞かせてくださいよ」

「君別の世界から来たっぽいよ。勇者召喚の巻き添えで」


 へー。


「そうなんすか」

「あれ?思ったよりも反応薄いね」

「実感ないんですもん」


 無いものは客観的にしか感じられない。


「こんなもんかな。どうするかい?君、結構ショックなことあったらしいけど思い出す?」

「拒否したらどうなるんですか?」

「多分もう思い出せないよ。毒が回ってそれでおかしくなっているみたいだから」

「えええー」


 どうしよう。別に今のままでもとりわけ不自由してないけど。でもせっかくだしな。


「治してください」

「わかった。じゃあ力を抜いて」


 力を抜くと、頭の中のノイズが取り除かれていく。

 ああ、なるほど。


「俺は小野寺朝陽か。なんで盗賊団の時の名前は覚えているんだよ。短期間だったのに」

「怒られまくってたからじゃない?記憶って恐怖体験の時のが強く刻まれるっていうし」

「なるほど、一理ある」


 どうりで思い出すときに怒鳴り声ぎみで名前呼ばれてたんだな。納得納得。


「じゃあお金は…」

「あ、待ってください」

「ん?」

「俺今一文無しなんです」

「うわ、そうだった。じゃあどうしよう。あ!」

「?」


 にんまりとマーリンガンが微笑む。


「君、向こうで内職で硝子玉と針金でアクセサリー作ってたよね」

「そこまで記憶見たんですか。完全趣味でしたけどやってましたよ」


 推しに合う色で合わせたりとか。


「実はボク少しスランプ気味でね、良ければ手伝ってくれないかい?」


 示す方向には数々の装飾品。


「元々そのつもりだったんで良いですよ」

「よし、決まりだね。じゃあ明日の朝から来てくれないか?はい、これ持って来れば辿り着けるから」


 マーリンガンにおっさんに渡されたのと違うデザインの物を渡された。


「了解であります」


 そうして棚ぼた的に記憶が甦らせることができ、さらには職場まで手に入れたのであった。


「……」


 帰り際。やっぱりとある方向が気になる。

 行ってみたい気もするけど。


「また今度にしよう。そうだ、名前とかどうしようかなー。……いいや、ディラで。直すのめんどくさいし」


 ディラの方がきっと言いやすい。


 森に入り出口に向かっている最中良いことを思い付いた。

 道から足を出し、一歩。


 瞬時に森の入り口に戻された。

 とっても楽だ。これからこのショートカットで戻ろう。



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