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旧・脇役無双~この弓はエクスカリバーである~  作者: 古嶺こいし
この弓はエクスカリバーである
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ナッツ村

「見知らぬ天井だ」


 目が覚めたら何処かの部屋で寝かされていた。


「大丈夫ですか?」


 呼び掛けられて見てみるとおばあちゃんが居た。

 どちら様で?


「三日間目が覚めなくて心配してましたんですよ。大丈夫?お名前言えるかしら?」


 なんか凄い子供扱いされている気がする。

 名前くらい言えるわ。

 えーと、名前名前。俺の名前。


 はて?


 いやまてよ。これは度忘れしているだけだ。

 自分の名前を忘れるなんて事があるはずがない。


 思い出せ俺のブレイン!!




 『ディラアアア!!!

今度は壺割りやがったなあああ!!!』




 脳裏に甦る幻聴。



「ディラです」


 多分ディラだ。何か足りない気がするけど、これで凄い怒られていた気がするから恐らくディラが名前だ。


「そう。ディラね。良かったわぁー、頭からの出血が凄かったから。でも大丈夫そうね。そこにスープを置いておくから、飲めたら飲んでね」


 そう言っておばあちゃんは部屋から出ていった。


 頭から出血か。何したっけ?

 触ってみると包帯が巻かれていた。というか、体も包帯が巻かれている。


「…???」


 ええ?何したのかぜんぜん思い出せない。

 というか、やばい。


「なんにも思い出せない」


 自分がディラっていう自覚があるからディラなんだろう。だけどソレ以外はさっぱりである。

 困ったな。


「食べれるかい?」


 おばあちゃんが戻ってきた。


「あの、すみませんおばあちゃん。俺、ディラ以外思い出せないです」







 村の医者が来た。

 頭や体の傷を見るためである。


 医者が言うには、頭は打撲の際の裂傷。

 体は刃物による傷らしい。


「野盗にでも襲われて頭を殴られたのか。はたまた川で流された時にぶつけたやつなのか」


 バタンと医療機器を入れた鞄が閉じられた。


「どちらにしても記憶はいつ戻るか分からないので様子見ですね。幸い自分の名前は覚えているようなので」

「様子見ですか」

「なんなら村で仕事とかしてみたらいかがです?ひょんなことから思い出すかもですよ」

「なるほど」


 ならしばらくおばあちゃんのお世話になるしかないのか。


「おばあちゃん」

「はいはい?」

「しばらくお世話になってもよろしいでしょうか?」

「勿論ですとも。ゆっくりしていきなさい」


 そんな感じでこのナッツ村に転がり込んだ俺は、家の近くの工房等に通いつめていた。


「これ見るの楽しいかい?」

「そうですね」


 楽しい。

 鉄が面白いくらいに加工され、姿が変わっていく。


「弟子にしたい所だが、お前さんセンスないからなぁ…」

「ですよねー」


 試しにとハンマーを持たしてもらったが、狙いは外れて当たらなかった。


 好きと才能は比例しないのがムカつくところ。


「お前さん、もしあれだったら、魔法具屋も覗いたらどうだ?あそこなら大きな動作しないでチマチマ作るから手元も狂いにくいだろ?」

「なるほど」


 確かにソレなら。


「その魔法具屋って何処にありますか?」

「ああ、あそこの森あるだろ?」

「禁断の森ですか?」

「迷いの森な。道を外れるとすぐに出口に戻される魔法の森だよ。あの道をずっといった先にある」

「ほぉ」


 おばあちゃんにアンタは自分の事も忘れるほどのおっちょこちょいだから『禁断の森』に行ってはダメよと耳にタコができるほどに言い聞かされていたが。

 過保護すぎない?


「道を外れなければいいんですよね」

「ああそうだ。子供でもお使いできる。一度行ってみてはどうだ?」

「そうですね」


 行ってみますか。


 道々と呟きながら道を探すけど。


「…道?」


 何処だ。


「道がない?」

「見当たりませんで」


 戻って工房のおっさんに言えば、一緒に来てくれた。


「あるじゃないか」

「なんでじゃ」


 さっきそこに無かったじゃないか。


「じゃあ気をつけてな」

「はーい」


 道をずっと行く。すると何故か途中で道がなくなっていた。


 清々しいほどのぶつ切り。いや、袋小路。

 子供でも出来ることを俺はできない。と。


「……えいや」


 試しに一歩踏み出す。


「おや早かったな」


 だけなのに、一瞬にして森の入り口に戻された。

 森の入り口に待機していたおっさんが目の前にいるのがその証拠。


「俺この森に嫌われてんのかな?」

「どうした。いきなり」

「道がなくなってた」

「はぁー? あ」

「?」


 ゴソゴソとおっさんが何かをポケットから取り出した。


「これ持っとけ」

「何これ」


 細かい細工のアクセサリーだ。

 木と石が融合した面白い宝石が、細い銀の細工の中に閉じ込められている。


「これは村人の証のようなもんだ。いいからこれもって進みな」

「わかった」


 こんなもんで何が変わるのかと、そう思いつつもう一度道をいくと、今度はずっと道が続き。


「マジか」


 小さな小屋へと辿り着いたのだった。

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