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旧・脇役無双~この弓はエクスカリバーである~  作者: 古嶺こいし
この弓はエクスカリバーである
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最悪の再会

 模造剣を手に入れた。

 テッテロテー。


「これ斬れないんですか?」

「一応な」

「へー」


 どんだけ斬れないんだろ。

 あそこの木で試し切りするか。


「斬れねぇっつっても鉄の塊だから、むやみに振り回すんじゃ──」


──バゴン


 木に刺さった。

 抜けない。


「──ねえって言ってんだろ!!あーあーあー、もうどけお前。しっしっ!あそこで作戦でも聞いとけ!」

「へーい」


 ムキムキ先輩に追い出されてしまった。


 作戦会議しているらしい所へとやって来た。

 入団して思ったのは、盗賊団でもミーティングをすること。

 意外だった。なんにも考えずに突撃するのかと思ってたよ。


「来たか新入り。…お前武器どうした。まだ貰ってないのか?」

「試し切りしたら木から抜けなくなったので、今ムキムキ先輩に抜いてもらってます」

「お前本当にどうしようもないアホだな」

「つーか、よくそんなんで生き残ってられたもんだ」

「環境に感謝しろよ」


 まさか盗賊団の皆さんに『環境に感謝しろよ』なんて言葉が出てくるとは。


「確かにめっちゃ平和でした」

「お前みたいなのたくさんいそうだもんな。どんなカモだらけのところだよ」

「ははっ、ちげーねえ」


 鴨というよりいるのは鳩でしたがね。

 ああ、違うカモか。


「着いてきな、ディラ」


 ぞろぞろ皆で移動していく。

 そろそろこの怖い顔には慣れたけど、やっぱり囲まれたら威圧感やばい。


 着いた場所はなんとも危ない所だった。

 片方は崖で、もう片方は川の流れている谷。

 落石注意と看板が必要な道だ。


「この道はゆっくりカーブしてて先が見にくい。そこで俺たちがこの道の上から石や矢を降らして馬車を停止させる」


 そんな道のど真ん中で指差し確認のように俺に教えてくる。


「で、前は矢とか石で馬車がスムーズに動けなくなっているから、後ろからソンゴ達が武器持って脅しに掛かる。簡単なのはこれで済むが、護衛を雇っていれば、護衛がソンゴ達を引き留めている間に依頼人を前方に逃がすだろう。そこでお前の登場だ」


 なんとなく分かったぞ。


「一般人が、馬車襲われてパニックになっているところに、お前みたいなヒョロヒョロでもカーブ先で剣を持って立っていろ?怖さで立ち止まるだろ?」

「そうですね」


 実際俺がやられたら止まっちゃうだろう。


「そうして引き留めてる間に上の俺たちが合流して金巻き上げて終了って訳だ。なーに、抵抗しなきゃ命は取らない。優しいねえ」


 ゲラゲラゲラゲラと笑う皆さん。

 うーん。感覚が違う。でも殴られたくないから笑っちゃう。


──ビャーーーーッ!


 何の音だ?何かの鳴き声か?


「合図のタカ笛だ。仕事に掛かるぞ」

「ほら、ディラ。もう木に向かって振るんじゃないぞ」

「あ、ありがとうございます」


 ムキムキ先輩が抜いてくれた模造剣を持ってきてくれた。


 みんなできる職人のように配置についていく。


「さーて、俺も行きますか」


 気は乗らないけどね。


「ガムキー先輩もいるんですか」


 てっきり俺一人かと思った、ムキムキ先輩ことガムキー先輩も一緒だった。


「お前一人に任せてたら二次災害出るかも知れないだろーが」

「先輩方の新人思いに俺涙出そうです」


 圧倒的な信頼度0。

 色々やらかしているから否定はできない。


──ビォーーーッ!


 また違う音。


「あれもしかして獲物接近の合図ですか?」

「なんだ、それを理解できる頭はあんだな」

「おかげさまで」

「あれは距離毎に配置している。500mと、今のは50mだな。それ、そろそろ始まるぞ」


──ズズズーーーン!!!


 馬のいななきと共に轟音が鳴り響く。

 あ、怒声が聞こえてきた。


「こりゃー、俺たちの出番かもな。構えろディラ!」

「へーい」


 構えはしたが、だいたいガムキー先輩一人で終わりそうだな。

 俺は適当に振り回しているか。


 足音が近付いてきた。

 多いな。これ二人でいけるか?


「止まりやがれ!!」


 ガムキー先輩が剣を振り回し威圧する。

 その瞬間、俺はあるものを見てしまった。


「朝陽?」


 勇者姿の功太だ。


「こう「勇者様お下がりください!!」


 功太の前方に仲間らしき二人が飛び出してきた。

 一人は恐らくソルジャーで、ガムキー先輩に負けないくらいの大男。もう一人の女性はなんだ?武器がわからん。


「うるあああ!!」


 大剣を振りかざし、ガムキー先輩へと襲い掛かった!!


「朝陽お前も来てたのか!!よか「下がれ盗賊風情が!!」

「ルカ!?」


 ルカと呼ばれた女から何かが放たれた。


「うっ!?」


 クナイみたいな短剣が三本体に突き刺さっていた。

 くの一かこの人!!

 とするなら…。


「うわ、やっぱり…」


 目眩が始まった。

 毒が塗られていたのか。


「ディラ走れ!!逃げるんだ!!くそっ、勇者が乗っているなんて情報無かったぞ!!」


 剣が折られそうなガムキー先輩が叫ぶ。

 すみません。先輩、無理ですこれ。


「ルカ!!僕の友達に何するんだ!!」

「友達?でもあの人盗賊ですよ??見てくださいあの剣で私たちを襲う気ですよ??見たじゃないですか!護衛の方が無惨に切り殺されたのですよ!!」

「でも、あいつは…」


 そこでようやく功太が俺の剣に気付いたらしい。

 違うぞ功太。これ、模造剣なんだ。


 だけど気持ち悪くて立っているのがやっとで弁解できない。


「本当なのか?朝陽…」


 ちがうちがうちがうちがうちがうちがう。


 その時馬車が突然爆発し、悲鳴が上がった。


「退けえええええ!!!」

「ぬおおおおお!!?」


 遂に剣が折られたガムキー先輩が体当たりによって俺の方へと吹っ飛んできた。

 なんでこっち!?


「うわあああ!!!!」


 当然俺のような貧相がガムキー先輩のようなムキムキを受け止められるはずもなく。


──ドッボオオオオオンン!!!


 二人仲良く崖を落下し、下の川へとダイブした。



 その時の衝撃で意識が飛んだんだけど、なんとなく功太が俺のこと大声で呼んでた気がするけど、気のせいだったかな。

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