盗賊団生活
バルバロ盗賊団。この王都を中心で活動している大盗賊団である。
手際よく素早くどんな獲物も逃がさない素敵な素敵なこの組織の下っ派にいるのがこの俺。
小野寺朝陽。通称ディラでございます。
「ディラこれも洗っとけ!!」
「へーい!!」
「ディラ!!お前また塩と砂糖間違えやがったな!!」
「へーい!!」
──パリンッ
「また皿割ったのかディラ!!何枚目だ!!?」
「へーい!!」
地獄である。
なんで俺こんな地下アジトで雑用しているの?
おっかしいなぁ。普通異世界召喚ってワクワクドキドキものじゃないの?
なんで小間使いやってるの?
「ディラアアア!!!」
「へぇぇぇーい!!!!!」
なんで俺毎日怒られてるん!!??
「ディラ。お前不器用にも程があるだろう」
「自分でもそう思います」
廊下でスッ転んで一面小麦粉だらけにしてしまい掃除している最中、通りすがりのボスにそう言われた。
わざとじゃないんですよ。そんな目で見ないで?
「まぁ、人と言うものは得手不得手があるからな」
その言葉はあれかな?もしかして俺ボスに憐れまれてる?
「よかったら仕事別のにするか?」
「いいんですか?」
「これ以上皿を割られたら堪らん」
「ほんとすいませんでした」
でもわざとじゃないんですよ。割ったの。
「と言うことで此処に配属することにした」
「よろしくお願いします」
3日で俺が配属されていたキッチンからボスに「アイツ使えない」通達で異動した先は。
「…………」
「…………」
「…………」
郊外で人を襲う部署でした。
皆顔怖い。配属されて早々ですが、異動届け提出したいです。
「コイツ恐ろしく不器用だから剣を持たせるな」
そしてこんな事をボスが皆に通達。
え、じゃあ俺ここで何をしろと?
「何ができるんすか?こいつ」
「陽動には使える。足早いからな」
陽動…!? まさかの!?
「ほぉー」
なるほどと言いたげに皆が俺を見てくる。
「よろしく頼んだぞ」
そう言ってボスが去っていった。
残された俺。
「陽動か。いい働きを期待してるぞ」
「は、ははははは…。頑張ります…」
「じゃあ早速だが、仕事だ」
「え、もう?」
目の前に積まれた武器の数々を見せられた。
「これを馬車に詰め込め」
「…へーい」
剣にメイスに斧に。なんだこれと分からないものも馬車に詰め込んでいく。
はぁ、本当に何やっているんだろう。俺。
「終わったのか?」
「終わりましたー」
もう全部乗せた。
弾も。
「じゃあ乗れ、出発するぞ」
言われた通りに皆の乗っているところへ行こうとしたら、ばか野郎と頭を叩かれた。
「お前はここで武器が落ちないようにするんだよ」
「…なるほど」
それなら俺でもできる。
ロープでぐるぐる巻きにして固定し、荷台に乗り込む。
うーん。乗り心地悪い。
「これ着とけ」
「?」
上服が投げ渡された。
広げてみればTHE山賊みたいな服。
「…絶対俺似合わない」
「文句言うな。良いから着ろ」
着た。
「ぶわははははは!!お前似合わないな!!」
「馬子にも衣装とか言うが、お前には反対の意味だな!」
「ひーっ!!腹痛てぇ!!」
「………」
こいつらいつか殴る。
「おら、行くぞ。せいや!!」
馬車が動き出して、坂道を登り始める。
「うおおおおおお!!!武器が落ちないようにするってこれのことかよ!!!」
角度のせいで武器がずり落ちていくのを必死にロープ引っ張って食い止める。
ようやく坂が終わり、天幕が明るくなった。
「……外だ」
3日振りの外。
思わず天幕を開け放って淀んだ空気を一蹴したいが、怒られるのでやらない。
「でも覗くぐらいならいいよねー」
指で隙間をあけて覗き見。
「………」
戻す。
兵士がウロウロていた。あの日以来嫌いになりました。
ファッキュー。
「許可書を提出してください。はい。どうぞ」
ゴトゴトゴト。
ドナドナドナ。
絶対こいつら門番に賄賂渡しているよってくらいスムーズに門を通過できた。
良いのか?大盗賊団だぞ?
それとも癒着しているんですか?
「まぁ、でもファンタジーあるあるか」
見た目だけならブリテニアスオンラインなんだけどな。
違いはステータスウィンドウが無いところとか、盗賊団に入団できてしまった点か。
「けっきょく功太に会えなかったけどちゃんと勇者出来てるんかな、アイツ」
いささか心配。
俺が3日外に出られなかったから教会に行くことも出来なかった。
言っても多分追い掛け回されるんだけど。
「でもアイツはコミュ力高いから大丈夫か」
ここでも上手くやるだろう。
少なくとも俺よりは。
「そろそろ着くぞ。ディラ、お前は逃げ道を塞ぐ役だ。後で模造剣を渡すから、お前は振り回さずにソレを構えて立ってろ。もしくはなんとかして通さないように立ち回れ。足が早いなら得意だろ?いいか?怒られたくなかったら余計なことすんなよ?」
「へーい」
きっとボスに俺が動くと二次災害に繋がると言われているんだろう。
遂にカカシにまで落ちたか。笑う。
でも模造剣を構えて立ってるだけなら怪我もしなさそうだし、気が楽だ。