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旧・脇役無双~この弓はエクスカリバーである~  作者: 古嶺こいし
この弓はエクスカリバーである
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石を投げたら褒められた

「勇者様。勇者様起きてくだされ」

「………?」


 誰の声がする。しわがれた声。ご老人の声か。

 どちら様ですか?

 そう思いながら目を開けると目の前には高い天井があった。

 駅内…にしては装飾が凝ってる。

 教会みたいな。

 てか床で寝ているのかこれ。体痛い。


「ん?」


 なんか引っ掛かると思ったら功太の手が思い切り俺の服の裾を掴んでいる。

 そこでようやくどういう状態か判明した。

 祭壇の上だよ。生け贄ですか?縁起わるいなおい。


「誰だお前」

「え?」


 そんなことを思っていると背後から話し掛けられた。

 誰だお前って。


 振り返るとゴージャスフードの髭もじゃの胡散臭い老人。


 誰だお前って、お前が誰だよ。

 どっかの仙人ですか?


「いや、あなたが誰ですか」

「わしらはこの方を喚んだんじゃ。お前は喚んどらん!!」

「そっ…」


 脳裏に甦る引っ張られた光景。


「…うですけど、俺被害者!!」

「そんなん知らんわ!!

 おい!!誰かこいつを摘まみ出せ!!!」


 老人が言うと兵士みたいな人達がわらわら沸いてきて俺を拘束。

 服を掴まれた功太の手を離そうとしていたが、畏れ多くて触れられないみたいな素振りで躊躇し、妥協案で俺の学ランが脱がされた。


「この部外者め!!いつこの神聖な教会に侵入した!!」

「侵入してない!!連れてきたのそこのオッサン!!」

「おっさん!?」

「貴様よくも国家魔術師にそんな口を!!」


 そんな大層な役職なんかこの人!そんな気はしてたけど!!


「連れて行けええええい!!!」


 フードから見える範囲の顔を真っ赤にして老人が叫び、俺はズルズル引き摺られて建物の外に放り投げられた。


「いてて…」


 目の前でバタンッッ!!と扉が閉められた。

 乱暴すぎる。

 というか、功太どうすんだアイツ。


「………」


 再び戻ろうとしたけど、扉の前で俺を睨み付けている兵士がいる。


 そもそも俺わるくないだろ。

 あのじーさん犯人じゃん。


 適当な石を拾って兵士に投げた。

 石は弧を描いて飛んでいき。

 ごん。

 兵士の頭に当たった。


「うるあああーーー!!!!」

「うわあああーーーっ!!!!」


 たかが石一つ当たったくらいでめちゃくちゃ追い掛け回された。

 槍もって、執拗にだ。


 なので頑張って逃げまくった結果。


「つーか、どこだここ」


 完全に迷ってしまった。


「寒」


 しかも学ラン取られたから肌寒い。

 周りの人達は俺のこと見てコソコソ何か言ってるし。


「はーぁ、ついてねー」


 こういう場合どうすればいいんだ?警察?


「おかーさん。見て見て、変な人ー」

「しっ!見ちゃダメよ」


「………」


 本気でどうしよう。


「居たぞ!!あそこだ!!」

「捕らえろおおおお!!」


 げっ!また来たよ!

 しかも数増えてるじゃん!


「まずは逃げるのが先だ!」












 逃げ切った。逃げ切ったが、更によく分かんないところに入り込んでしまった。


「もうヤダここどこだよぉぉ…」


 どっかの路地裏らしい。

 ネズミが走り回り、下水臭い。

 泣きたい。俺がいったい何したって言うんだ。


 家に帰りたい。

 帰ってお菓子食べてブリテニアスオンラインやりたい。


「おいそこの兄ちゃん何してんだ?」

「変な格好しやがって」

「ここらは俺らのテリトリーだぞ?なに許可なく居座ってやがる」


 次はなんだよ!!


 睨み付けたら大男達5名程。

 ふう。さて逃げるか。


 逃げる体勢に入った瞬間、後ろの小さい髭もじゃが「ああ!」と騒いだ。


「兄貴、こいつですよ、昼間兵士に追い掛け回されていた奴!」

「ああ!兵士に石ぶつけた命知らずか!」

「こんなヒョロヒョロがか?見た目によらず度胸座ってんだな」


 取り囲まれた。

 いってえ!背中叩くな!骨折れる!


「お前なにやらかしたんだ?」

「……なにも。教会の中のオッサンに拉致られたのに不審者って摘まみ出されたんだよ」


 そう言えば皆一斉に笑い出した。

 何が面白いのかさっぱり分からない。


「国家魔術師をオッサン呼ばわりとは、いいねぇ、お前気に入ったぜ」

「兄貴、こいつならいいんじゃないか?」

「だな」


 なんの話しているんだ?


「お前今日寝るところあるのか?」

「………ない」

「お前面白いからよ!俺達のアジトに来るか?」

「え…いや、その」

「なんだよ野宿でもすんのか?この時期外で寝たら病気になるぞ」

「ただでさえ寒そうな格好だもんな」

「服も貸そうぜ!この前の奴の服とか合うんじゃないか?」


 ヤバイこのままだと流されて連れていかれる。


「とっ!」

「と?」

「友達があの教会の中に取り残されているんです!助けにいかないと!」


 そう言えば、アチャーと言わんばかりの顔。


「兄さん諦めな。多分その友達とやらは勇者になるんだ」

「ゆうしゃ?」


 ゆうしゃって、あの勇者??


「なんで??」

「あー、なんかな、予言でこれから滅びの波が来るんだと。その元凶を退治するための人間に選ばれたんだよ」

「可哀想になぁ。同情はしないが、…いやお前の友達には同情するぜ」


 そんな、召喚あるあるみたいな…。

 ……………。


「どうした。急に止まって」


 考えてみた。

 これもしかして元凶を消さないと帰れない系か?


 大丈夫か?あいつレベル上げ苦手なのに。

 まて、でも、ええ…。


「とりあえず家に来いよ。そっから考えればいいだろう?」

「そうさせてもらいます」

「おうおうそうさせてもらえ」




 そうして俺は何故か異世界にきて、素性の知れないチンピラの住み処へと連れていかれたのだった。

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