3.おちゃかい というなの
ガルデニアの肩をがっしり掴み 傍から見れば脅してるような形相で 娘に言い聞かせている公爵は、それ以上に怖い顔をした宰相補佐に引きずられながら 執務室に戻っていきました。
「ニアーーーーー! おと も だ ち だ け だ か ・ ・ ・
「お待たせしてごめんなさい。」
公爵夫人は、傍に控えていた騎士の方に声をかけました。
そして、全て夫にチクった公爵夫人は
「さあ ニアちゃん♪ 遅くなってしまったわ。行きましょうね。」
と 清々しい微笑みをうかべるのでした。
ガルデニアにとっては 初めての宮殿です。キョロキョロしたいです。
色々感動しながら歩きたかったのですが、淑女にしては速すぎる けれど 決してそうとは悟られない気品を漂わせて歩いている公爵夫人に付いていけません。
直ぐに察した騎士は、公爵夫人に確認をとり ガルデニアを庭園近くまで抱いて連れていってくれました。
走るはずのない公爵夫人を、歩いて案内する騎士の一歩が大きいことも 気取られてはいけません。ドレスの下の足さばきは 見えませんから大丈夫ですが、騎士の方はもちろん ズボンを穿いてらっしゃいます。しっかりと足の動きが見えてしまいますから。
「かあさま すごいです!! わたしも わらいながら あるいてるばしり ができるようになるため がんばります。」
騎士の腕の中、瞳をキラキラさせて 母を尊敬しています。
「ニアちゃん。笑って走っているなんて、淑女のまえに 人としてどうかと思うから止めてね。母様は、も ち ろ ん そんなことしてないわよ。」
と 少しも化粧崩れしていない完璧な美しさの微笑みで答えます。
いよいよ 庭園に到着しました。
庭園に着くと、騎士から 今度は 侍女の方に交代です。
「だっこしてくれて つれてきてくれて ありがとうございました。」
「色々と面倒をかけてごめんなさい。ありがとうございました。」
連れてきてくださった騎士の方は 驚きながらも 深々と礼をとり 持ち場へと移っていきました。
もう一度言いますが フェルチェ公爵家は 筆頭公爵家です。
ですので お茶会の参加も 入場は最後でなければいけません。走ってきた(?)ので、順番的に ちょうど間に合いました。
そうして ゆったり優雅に 庭園の奥まで進んだところで、こちらも予定通り 御到着です。
『 第一皇子殿下、皇后陛下の御着きです。 』
皆が一斉に 最上級の礼を取ろうとします。
「やめましょう。今日は 子どもたちが主役です。自然に行動させてはどうでしょう。」
皇后陛下が仰ることに、大人たちは礼をとり -仰せのままに- との意思表示をしました。
ルナルコバリ帝国には、現在5歳になった第一皇子殿下と 8か月の第二皇子殿下がいらっしゃいます。
このお茶会には 5歳の殿下が 将来 皇太子、そして ゆくゆくは皇帝になられた時に 側近となり得るご友人候補として、子爵家以上のご令息が呼ばれています。
と同時に、伯爵家以上のご令嬢も呼ばれています。理由は、言わずもがなのこと。
これから 幾度となく開かれる予定のお茶会ですが、初めて開催の今回は 殿下より年上のお子様の方が多いようです。
現皇帝が皇太子時代、皇太子妃の御懐妊が発表されました。
ということで、 貴族の 特に高位貴族の方々は 第一殿下のご友人 あわよくば伴侶となり得ることを夢見て せっせと励んだのでは?と 邪推されてしまうほど 皇子殿下と同じ年生まれのご令息、ご令嬢は多いいのです。
偶然でしょうか? 今年もベビーブームのようです。今年は、第二皇子殿下が御生まれですからね。
申し訳ございません。お茶会の話に戻しましょう。
皇族からの招待を断るということは 本来であれば許されないことではありますが、この会に限っては 招待時に『事前の連絡不要 と 子どもの状況を最優先』という意味が はっきり明記されていたのです。
手がかかる子や、当日 調子や機嫌の悪い子、つまり お茶会に出れるレベルじゃない子は 出席するな!! ということです。出席して失敗するよりも、次回に向けて 一にも二にもレッスン! を推奨しますよ。と伝えているんですね。
なので必然的に 今回のお茶会には 5歳以上しか出席していないのでした。
唯一人を除いて ですが。