23.平和に
皇后陛下と濃密な話もでた御茶会ですが、その後は ガルデニアの好きなものや色など 好みを聴いてきたり 穏やかな時間が過ぎていきました。
そうして、ガルデニアが気に入った 御城のお抱え職人が作ったお菓子をいっぱいお土産に持たせてもらい 無事 公爵邸に帰っていったのでした。
公爵邸に帰ると、母親である公爵夫人が待っていました。娘のマナーには 絶対の自信がありますが、やはり まだ幼い娘を 長時間一人で外出させるのは心配だったようです。例え行き先が 至れり尽くせりの御城だとしても、親としては気になるの当たり前のことでしょう。
どうせ、フェルチェ公爵などは 心配で 今日の仕事は捗らず 帰るのは遅くなるに決まっています。一刻も早く帰りたいところを、宰相補佐が許してくれるはずもなく 今日中に帰れればいい方なのではないでしょうか。まったく残念な筆頭公爵です。
「ニアちゃん おかえりなさい。皇后陛下との御茶会はどうだった? 疲れているだろうから、お部屋で少しおやすみなさいね。」
そう言いながら、公爵夫人は 愛娘を抱きしめました。
「母様 ただいま帰りました。御城では 皆 とても良くしてくれたけど、やっぱり疲れたみたいです。ちょっと眠いです。」
「そうね。頑張ったわね。エルガーに お部屋まで連れていってもらう? 」
そう言って、抱きしめたまま 家令のエルガーに目線を送ります。
「母様も エルガーもありがとう。でも、今日は大丈夫です。」
そう言って、母親から少し離れて 笑います。
「お嬢様!! お嬢様は エルガーの唯一の楽しみを奪うのですか?
よよょ 」
と、舞台ばりに言われてしまい、結局は 抱っこで自室まで連れていってもらうのでした。
少し自室で眠っていたガルデニアは、夕食の時間ということで 起こされました。
今日のメニューは、全て ガルデニアの好物ばかりでした。
「お嬢様。今日はとてもお疲れになったでしょうから!! ということで、いつも以上に 料理長のボナシボが 気合いを入れて作ってましたよ。」
「わぁ、食べたら ボナシボに ありがとうて言いにいかなきゃ。」
「感想も言ってあげなきゃね。」
「はい! でも食べなくても 美味しいっていうのは絶対分かるから・・・
あとは、食べて 私がどんなになったか ちゃんと伝えなきゃ。」
「そうね。ボナシボも喜ぶでしょうね。」
瞳をキラキラさせながら 食事を味わい始めたガルデニアを、嬉しそうに見ながら 公爵夫人も食事を始めました。
「ところで ニアちゃん。皇后陛下との御茶会はどうだった? 」
「えっと・・・ ちょっと困ったの。」
「あら どうして? 」
「あのね、ペオ様て呼ぶことになったの。」
困った顔をしながら話していたガルデニアは、フォークに刺したテリーヌを口に入れた瞬間に 幸せそうに頬っぺたを押さえました。
「あら、仲良くなったのね。良かったわね。
ペオーニャ様は 母様が学園に入った時 最上級生で、皆から えーっと そうね とても頼りにされていたのよ。」
昔を想いだしているからか、なんだか歯切れ悪く 遠い目をしています。
「頼りにされる。なんて、さすが皇后陛下になられる方ですね。かっこいい。」
「あら、ニアちゃんだって 何事もなければ いつかは皇后陛下よ。」
「皇帝や帝国中を敵に回してはイヤです。」
今度は ガルデニアの瞳は、うるうるしてきます。
「え? なんで敵に回すの? 」
「だってペオ様が、『敵に回しても 息子の初恋 成就させてみせるわ!! 』て 力一杯言ってたの。」
「あらあら。それは大変ねぇ。『王子様』に好かれると、命がけだわ。」
クスクス笑いながら、母親まで 物騒なことを言いだします。
「母様まで、そんな!! 怖い!! 」
本当に 泣いてしまいそうです。
「ニアちゃん ごめんなさい! 大丈夫よ。冗談だから。
ニアちゃんとジェントーレ殿下が結婚するのは、元々 決まっていたようなものだから。
だから、二人が好きだと思っているなら 一番平和なことなのよ。
誰も、敵に回ったりしないわ。」
ガルデニアを安心させるには十分な笑顔で、公爵夫人は微笑みました。




