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22.常識≒非常識

「あらあら 怖いわ~。うふふっ。」

 皇后陛下は とても嬉しそうです。


「じゃあ 仕方ないわね。

 ニアちゃん、私のことは 『ペオ』と呼んでくれる? 」

 皇后陛下ともあろう方が、小首をかしげて 可愛らしくおねだりポーズをしているではありませんか!?


「!」

 ガルデニアは、少し離れて控えている侍女たちへ 助けを求めるように小さな体ごとキョトキョ卜と動かしました。


「ふふっ。デーは本当に可愛いなあ。何方(どなた)かの あざと可愛さとは違って。」

「あら! 嫌だわぁ~ 自分のことは棚に上げて。」

「母上は 何を言ってるんでしょうね? 僕は男の子ですから、可愛さなんて望んでないですよ。

 それよりも デー。

 母上は 残念ながら 言い出したら聞かない人だから、諦めて呼んであげてくれる? 」

 ガルデニアの隣に座っているジェントーレ殿下も、小首をかしげて のぞきこんできます。


 うわぁー 親子ですねぇ。そっくりです。そっくりな御尊顔で、そっくりな仕草をしています。可愛さを望んでないはずでは!!

 もちろん そんなことをされては、常識ある非常識な3歳児のガルデニアは拒否できません。

「ペオ様? と御呼びしても良いですか? 」

 小さいため 当たり前に上目遣いになってしまい、しかも 迫力の親子にせまられて恐かった為に うるんだ瞳で、ガルデニアは訊ねました。


「きゃー!! 天使!! そのまま飾っていたいわ!! 」

 皇后陛下は大喜びです。

「母上。デーは ()() ですからね。」

 そう言いながら、ジェントーレ殿下は ガルデニアを横から抱きしめます。


「まぁ! やーねー。 心が狭い男は嫌われるわよ。」

 皇后陛下は、どこに持っていたのか分からない扇子が現れて その不敵な笑みを隠します。


 ニッコリにっこり。

 細めているにもかかわらず 目力がたっぷりなそれぞれの眼で見つめ合って、親子で微笑んでます。

 何故でしょう?ポカポカというよりは、寒々とした空気です。今日も天候は良くて、茶会日和のはずなのですが・・・




「殿下。申し訳ございませんが、そろそろ お時間です。」

 偶然(?) タイミングよく(?) 控えていた騎士が、ジェントーレ殿下に声をかけました。先日、公爵邸にも一緒にきていた騎士の方でした。時間のない今日は、会釈だけして ジェントーレ殿下をそくします。


「残念だけど、僕はもう行かなければいけないみたいだ。

 デー、またね。来週は ゆっくり会えると思うし、もっと会う回数を増やせるようにするからね。」

 そう言って、椅子から降りて挨拶をしようとするガルデニアを止めて 名残惜しそうに髪を撫でてから 宮殿内に戻っていきました。



 殿下の後ろ姿が見えなくなってから、ガルデニアが皇后陛下に向き直ると 凄く幸せそうな御顔をされていました。

「こ  ペオ様?」


 ガルデニアの呼びかけに、一瞬の間の後 とても優しい御顔になりました。まるで ガルデニアを褒めてくれる時の母様のようです。


「ニアちゃん ありがとう。」

 そう言って、陛下は ガルデニアの手を両手で包みました。

 思わず首を傾げてしまいます。ガルデニアには、陛下から お礼を言われる覚えがないからです。


「ジェントーレと出会ってくれて ありがとう。ジェントーレ(むすこ)と仲良くしてくれて ありがとう。まだ3歳なのに、婚約を受けてくれて ありがとう。嫌がらずに、もうお勉強を始めてくれて ありがとう。そして、色々お願いして ごめんなさい。」

 陛下は 伏し目がちになり、涙が滲んでいるようにみえます。


「私こそ ありがとうございます。

 初めに フィーから、話しかけてくれました。それで、最初にお友達になってくれました。その後 いっぱいお話しして、仲良くなって お話しする度に どんどん仲良くなってます。フィーはとっても優しくて 私、大好きです。」

「そう。ニアちゃんに優しいのね。良かった。」

「はい。とっても優しいです。」

 陛下の慈愛の表情は続いています。


「ねぇ、ニアちゃん。ちょっとだけ 私の自慢を聞いてくれる? 」

 そう言って、返事を訊くこともなく 陛下は話し始めました。


「ジェンはね、凄いの。まだ1歳になるかならないかの頃から、周りの大人たちの言葉を理解しているようだったわ。

 いつでも将来の皇太子として恥ずかしくない振る舞いをしているわ。

 勉強も 先生方が望む以上の結果をだしてくれて、帝国の未来を一生懸命考えているの。

 城に仕えている者にも ちゃんと感謝して過ごしているから、皆からも慕われていると思うの。


 でもね、あの子 我儘を言ったことがないの。いいえ、我儘どころか 一度も願い事をしたことがないのよ。子どもなのに。」

 話しながら 皇后陛下の御顔は、どんどん淋しそうになっていきました。


「でもね! そんなあの子のが 初めて我儘を言ったの。

 ニアちゃんよ。

 ジェンが、おねだりしたのも 無茶をしたのも あのお茶会の日だけ。

 しかも今、目の前で初めての表情をいっぱい見たわ! 普段のジェンと比べると、まるで百面相していたみたいよ。ぅふふっ。私に対しては いつも以上に可愛くない口調だったけど、ニアちゃんには 甘々だったわね。


 私はね どんなことがあっても、あの子の唯一を守ってあげたいの。

 ニアちゃんに会って、ジェンが見せつけてくれて、その想いは ますます強くなったわ。

 もう 皇帝を、いいえ帝国中を敵に回しても 息子のワガママ(初恋) 成就させてみせるわ!! 」

 皇后陛下は、言い切った感満載で 清々しい御顔をされていました。


 帝国を敵にするのは、是非とも私の関係ないところでしてほしい。と切に願う、内容をしっかり理解できている 非常識な3歳児のガルデニアでした。

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