表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

2.おしろへ

「お嬢様。どこか 苦しかったり、痛いところはないですか?」

 侍女のマルニタが、丁寧に髪をとかしながら聞いています。


「どこも いたくないです。いまも とってもきもちいいです。」


「それは ようございました。お嬢様の黒髪は素晴らしいですから、今日は 横をまとめるだけでおろしておきますね。」

 そう言って、器用にサイドの髪を後ろでまとめ 小花を使って ふんわりとした雰囲気に仕上げます。


「お待たせ致しました。鏡でご覧になっていただけますか?」

 まだ足のつかない高さの椅子から、お嬢様をおろします。


「わぁ!! このドレス、きるとひろがって おはなみたい!! とってもかわいい!! かみもかわいい!! マルニタ ありがとう!!」

 ガルデニアは大喜びで 同じ目線で見ているマルニタに抱きつきます。


「もったいのうございます。とっても可愛いのは、お嬢様が とってもとっても お可愛らしいからですよ。

さぁ、奥様にお見せしましょうね。」

 マルニタは お嬢様を愛おしく見つめながら話します。


 ホールに向かうと、公爵夫人であるオルキディアが 家令のエルガーと待っていました。


「まぁ!! なんて可愛らしいのかしら。外に連れていくのが怖いくらいだわ!!」


「本当に。いつもお可愛いお嬢様ですが、今日は一段と可愛らしくていらっしゃいます。これでは、他のお嬢様方に申し訳ないですね。」

 ちっとも申し訳なさそうにない顔でつぶやきます。


 ホールで待っていた他の使用人たちも、全員 満面の笑みで肯いています。


「美しい花々を もっと愛でていとうございますが、残念ながら そろそろお時間でございます。どうぞお気を付けて行ってきてくださいませ。」

 いくつになっても女性を喜ばせる見目と話術で、今日もエルガーは絶好調です。


「「「「「行ってらっしゃいませ。」」」」」


 皆に見送られ、馬車に乗り込んだ二人は お城へ向かいました。


「かあさま。きょうは ごあいさつをするだけですか?」


「我が邸でお客様をお招きした時は、ご挨拶をした後 そのまま部屋に戻ったり 時々一緒に 母様のテーブルでお茶をいただいたりしているわよね。」


「はい。」


「でも今日は、一緒に御挨拶した後は 子どもたちだけでテーブルについて お茶をしたり、お話したり、お庭を観たりして過ごしてね。母様たちは 別のテーブルでお話しているから、何か困ったことがあれば 誰かに伝えてちょうだい。」


「わかりました!」


「大丈夫? 困ったことがあれば、すぐ伝えてね。母様もできる限り ニアちゃんのこと見ているからね。」


「はい。ありがとうございます。わたし がんばります。マルニタに おともだちのつくりかたもおしえてもらったのでだいじょうぶです。」


「あら、そうなの? マルニタは、何て教えてくれたの?」


「えっと・・・

おめめをみて、にっこりわらってごあいさつをすればいいです。っていってました。そのあとは おやしきのみんなとおはなししているように、いつもどおりおはなしすれば わたしはだいじょうぶだそうです。」


「そうね。マルニタの言う通りだわ。ニアちゃんたちには まだ 本当のお友達を作ってほしいものね。」


「かあさま??」


「ごめんなさい。聞こえなかったわね。マルニタの言う通り、ニアちゃんはいつも通りご挨拶して お話していれば大丈夫よ。」


「はい。おしえてくれて ありがとうございます。」


 のんびりと話して過ごしていたら、宮殿に到着しました。

 フェルチェ公爵は 筆頭公爵家ですので、お城とは 所謂お隣のようなものです。ですが、広大な敷地ですので 公爵邸から出て外門に廻り そこから宮殿に到着するまでに時間がかかるのでした。


「アル様!!」


 エスコートされて先に馬車を降りた公爵夫人が驚きの声をあげます。もちろん、淑女として範囲内の声量です。


「とうさま?」


 邸で夜にしか会えないと思っていたガルデニアは、急いで馬車から降ろしてもらいました。

 母親越しに見える父親は、初めて見る険しい顔をして 母と話していました。


「今日 参加するとは聞いていないぞ!!」


「申し訳ございません。アル様にお話ししたら絶対に反対されるから 必ず内密にするようにと・・・」


「誰が?」


「それは・・・」


「オルキディア、君は 誰の妻なのかな?」


「もちろん アル様の妻ですわ!! アルグーア=フェルチェ公爵の妻です。」


「だったら 「とうさま こわい!! かあさまをおこらないで!」


 そう言って、ガルデニアは母である公爵夫人のスカート部分に抱きつきます。


「ニア!!! あぁ ごめんよ。父様は別に 母様に怒っていたのではなくて、奴に怒 「うそ!! おこってました。かあさま かわいそうです。」


「ぁぁ・・・ そうだね。父様が悪かった。オルキディアもすまない。君にあたってしまって。でも、今度からは 絶対に私に言ってほしいな。私の方で、なんとかするから。」


 謝っていたような気がしていましたが、最後はしっかり くぎを刺しています。


「いえ。(わたくし)こそ、前日に陛下からの頼み事とはいえ アル様にお伝えせず申し訳ございませんでした。」


 こちらも謝っているようで、しっかりちゃっかり言い訳と 犯人を言いつけて 急に取り出した扇子の陰で気配を消して溜息をついていました。


「それにしても、ニアは なんて可愛いんだ!! こんなに可愛いと やっぱり帰った方が・・・」


「アル様。」


「あぁ! オルキディア。君は いつ見ても美しい。どんなドレスや宝飾品をつけようとも、君自身の美しさには敵わない。だから 私がエスコート出来ない今日は 帰った方が・・・」


「アル様。無理です。」


 なんだか 公爵は、公爵夫人とガルデニアをお邸に帰したいようです。


「??? とうさまは、わたしたちにかえってほしいのですか? わたし、おともだちをつくるのをたのしみにしていたんですが。」


「そうか。ニアはお友達がほしいのか。」

 急に 公爵は、情けない顔になりました。


「・・・ ・・・」

 微妙です。微妙な空気が漂います。


「そうだね。ニアもお友達がほしいよね。そうだね ... そ う だ よ ね . . .」

 やっぱり微妙な雰囲気です。


 そして

「分かったよニア。優しいお友達を作って 楽しんでおいで。

でもね! 父様と約束だよ。お友達しか作っちゃいけないよ。絶対 ぜーったい、お友達しか作っちゃいけないからね!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ