18.こうしゃくけ
今回も 会話文だけのところがあります。
読みづらくて申し訳ありません。
「じゃあ これからは、二人で話すとき、『フィー』とよんでくれる? 」
「うん。フィー。」
とても可愛い笑顔で ガルデニアは頷きました。
「!! ありがとう デー。とても嬉しいよ。」
頬を赤くしながらも、ジェントーレ殿下は とても嬉しそうです。
「フィーとデー。まるで おそろいみたい。」
「お揃いかぁ。うん そうだね。二人でお揃いなんて 本当に嬉しいよ。」
殿下は、耳までほんのり赤くなっています。
聡明な殿下は 実年齢の5歳よりも大人びていますが、それでも幼い二人のやりとりです。とても微笑ましいため、空気として立っているのが 非常に難しいエルガーとマルニタでした。
すっかり紅茶が冷めてしまいました。
マルニタの侍女スキルを総動員し 雰囲気を壊さないようにして、熱すぎない紅茶を入れ直しました。
そうなのです。熱くない紅茶をお入れするということは つまり、すぐ飲んでくれないと すぐに冷めてしまう。ということです。実は 既に2回入れ直していました。
すると今回は、わざわざ殿下がお礼を言ってから 紅茶を飲まれました。そして
「今の私には 丁度いい温かさだ。香りもいいし、とても美味しいよ。」
話していて喉が渇いていたのでしょうか。さすが皇族! 気品を崩さずに ゆっくりと、ですが 飲み干してしまいます。
「勿体ないお言葉。ありがとうございます。」
フェルチェ公爵家では、使用人にも感謝を表してくれますが それが当たり前でないことを マルニタは重々承知しています。
にもかかわらず、皇族の第一皇子殿下が 言ってくださったのです。マルニタもエルガーも、噂以上の御方だと 実感しました。
大事な大事な公爵家の姫であるガルデニアが、将来の皇后陛下になるのは 苦労がうかがえて心配でした。ですが、こちらの皇子殿下なら 大丈夫ではないか。と、それでも幸せになれるのではないかと思いました。
これを機に、フェルチェ公爵家の使用人たちは フェルチェ公爵派から 第一皇子殿下派へ 移行するのでした。
とてもとても大事なお嬢様ですが、筆頭公爵家の令嬢として いつかは政略で嫁がなければなりません。
でしたら、皇族として 公務で大変な思いをするのは間違いないのですが、上位貴族であれば 大なり小なり義務は付きものです。それならば 義務の量にかなりの違いがあるとはいえ、それを支えてくれる旦那様の人格が良い方が いいに決まっているのです。
「みんながいれてくれるおちゃはね、おいしいだけじゃなくて やさしいの。わたし だいすきなの。
あのね、ごはんもおかしも おいしいから たべてみて。」
そう言って、ガルデニアが勧めます。
時間がお昼前の為、軽くつまめる軽食と 焼き菓子が出されていました。
当主への食事でも 毒見はしない公爵家ですが、さすがに今回は 実施しました。
ですが、それを御伝えしていませんし 殿下としての御立場的に無理だろうと思っていました。
ところが、
「本当だ。これも 凄く美味しいね。」
なんの躊躇もなく サンドイッチを御召し上がりになりました。控えていた騎士は 内心かなり動揺していたようですが、なんとか踏みとどまっていました。
これを以って、公爵家の厨房も含めて 第一皇子派一直線です。
二人で、「「美味しいね。」」 と話ししながら いくつか御召し上がりになり 少し落ち着いたころ ジェントーレ殿下が 真剣な顔で ガルデニアに話しだしました。
「ねえ デー。茶会の時に 僕が一番のお友達になって。て言ったの憶えてる? 」
「もちろん おぼえてる。あれ? もしかして いまはちがうの? 」
ちょっと悲しそうなガルデニアの表情に、慌てながらも 嬉しそうに殿下は 続けます。
「違わないよ。デーは、茶会の時よりも もっともっと大切な 僕の一番の友達だ。」
「よかった。」
殿下が お友達でなくなったら、また友達0人になってしまう。と焦ったガルデニアは ホッとします。
「ただね、僕にとってデーは 一番のお友達だけじゃなくて 一番大切な女の子でもあるんだ。」
「?」
「茶会で、『デーのことが好きだ。』て言っただろう?」
「うん。わたしも フィーのことすき。」
「!! ありがとう。でもね、たぶんだけど デーが言ってくれた『すき』と 僕が言った『好き』は ちょっと違うと思うんだ。」
「? よくわからない。」
「そうだよね。うまく言えなくてごめんね。えーっと・・・」
エルガーとマルニタが もどかしくて、口が挿みたくて 空気感が薄れてきています。
「そうだ!
ねえ デー。デーのお父上とお母上は 仲がいい?」
「うん。とってもなかよしで、ふたりがいっしょにいるときは ニコニコおはなししているわ。ときどき かあさまをおいかけっこしたり、ひざまずいてプレゼントあげたりしてる。」
お嬢様。それは 仲がいいとは、ちょっと違います。と 空気たちは思っています。
「ふふっ。そうなんだ。仲良しなんだね。
僕はね、大人になったら デーと そうなりたいんだ。」
「? おおきくなったら おいかけっこしたい。てこと? 」
「どうして そこになるの。違うよ。
大きくなったら 結婚して、夫婦になって、いつか デーみたいな子どもたちに 『父様』『母様』とよばれたいんだ。」
「とうさま かあさま? 」
「そう。これから ずっと 二人で仲良く過ごして、大きくなったら結婚して 一緒に城に住んで 子どもができたら一緒に遊んで、そして ずっと仲のいい家族でいたいんだ。」
「 」
「だからね、必ずそうなろうね。という約束として『婚約』したいんだ!! 」