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16.親だから

「ムッとして俺を睨んでも 何も変わらん。」

「 ・・・ 」

「アル。いい加減にしろ。」

「 ・・・ 」

「アル! 」


「元はといえば、全てお前のせいだ! 」

 むぅー と口元は拗ねて、眼は睨んでいます。

「デジオが悪い!! 」

 子どもか!! とツッコミたくなります。


 ですが、ここはやはり 天下の皇帝陛下が大人になるしかありません。

「悪かった。確かに 俺が悪かった。」

「軽い! 」


 はぁー。

「本当に悪かった。今更だが、ずっと後悔しているんだ。

 無理に 夫人に頼んで お前に内緒で茶会に来てもらったこと、本当に浅慮(せんりょ)だったと 後悔している。」


 幼馴染のアルと、皇后陛下しか見たことないであろう 落ち込んで情けない顔のまま 皇帝は話します。


「俺も(きさき)のペオーニャも ガルデニア嬢に会いたかった()()なんだ。生まれたばかりの頃に、一度だけ 会えただけだったからな。

 お前が、デロデロの顔で話す 成長したガルデニア嬢を 一目見たかったんだ。

 もちろん、子どもたちの婚姻も望んではいたが まだ早いし 時期も悪い。ましてや 3歳と5歳だ。本人たちの意思を無視するつもりもなかったから、この話は もっと先のつもりだったんだ。」


「先でも ありえない! 」

 未だ むぅー としたままキッパリ言って、外方を向きます。


 苦笑しながら、皇帝は続けます。

「ジェントーレには、よく言ってきかせていたんだ。当面 茶会では、当たり障りのないよう 行動するように。

 あの子は賢い。親の俺が言うのもおかしいが、本当に聡くてビックリするくらいだ。」


 噂としてではなく、ジェントーレ殿下と実際に話したこともある公爵も 同じように感じているのか 話の腰を折ることはありませんでした。


「だからこそ、あの時のジェントーレの行動は 予想外過ぎた。

 まさか あのような無茶なことをする子だとは思わなかったのだ。

 賢過ぎたばかりに、俺たちは 物心つく前から あの子自身無自覚のままで 我慢をさせ過ぎていたのかもしれない。」


 公爵も 思うところがあるのか、黙って皇帝の話を聴き続けます。


「実はな、茶会の夜から ジェントーレが体調を崩した。」

「なっ 「侍医から、知恵熱のようなものだろう。と言われて 宰相のお前にも知らせなかった。」


「ばかやろう。」


「悪かった。さすがにちょっと 気まずかったんだ。

 皇帝として、皇太子候補の病を 宰相に伝えなかったのは 駄目な行為ということは判っている。

 解ってはいたんだが、公私の区別をつけられず すまん!! 」


 皇帝が頭を下げます。


「いや。お前の様子がおかしいのに気付いていたはずなんだ。なのに 気にしなかった 俺も悪い。

 俺こそ 公私混同だ。すまなかった。」


 そう言って、今度は 公爵も頭を下げました。


「それで、殿下は もう体調は大丈夫なんだろうな。」


「ああ、十日ほどで落ち着いて すっかり元気だ。

 病気になったのが 本人的にも 余程予想外だったのか、全快してから 俺に願い事をしてな。今度は 剣を覚えたいと言い出して、本格的に 剣術も励むようになった。」


「そうか。相変わらず 勤勉なお方だな。」


「そうだな。

 親バカな発言だと思うが。あれは出来が良すぎて 自分が真の父親なのか疑いたくなる時がある。」


「ははっ。確かに 全然似てないな。お前には 勤勉の()の字もないな。

 でも安心しろ、性格が似てないだけで、顔の造作(ぞうさく)は お前そっくりだ。疑いようがない。」

「俺とずっと一緒にいたお前に 言われたくないぞ! 」

「「くっ ぅは は は はっ      」」


 今日 はじめて、二人とも 声を出して笑いました。


「それでな。反省をした私は 腹をくくった。」


 公爵に いやそうな顔が戻ってきます。


「第一皇子 ジェントーレの婚約者として、フェルチェ公爵家のガルデニア嬢を指名したい。」


 公爵は何も言えませんでした。

 別に、皇帝や ましてやジェントーレ殿下が 嫌いなわけでも 憎いわけでもありません。

 単純に 娘のガルデニアが大事なだけなのです。


 筆頭公爵家であり、何代も続く宰相家に生まれたアルグーアです。皇后になるということが どれほど過酷なことか解っているのです。しかも 自分の想像以上に もっと大変であることも。


 だから ガルデニアに 第一皇子の婚約者になんて なってほしくなかったのです。


 第一皇子のジェントーレ殿下は、生まれてきた順番だけでなく 皇帝になるための天稟(てんぴん)も備わっていました。つまり その婚約者になるということは、将来の皇后陛下にならなければいけない。ということなのです。

 可愛い娘の苦労する未来など、望むわけがありません。


 それなのに、己の娘を 必死に殿下の婚約者にしようと暗躍している親たちの多きことが、アルグーアには 理解できませんでした。


「もちろん ジェントーレの気持ちだけでなく、ガルデニア嬢の気持ちも大切にしたい。

 あの茶会は、確実に ジェントーレの暴走だ。

 だから、明日 ジェントーレの 公爵邸への訪問を許してもらえないだろうか。

 そして、ジェントーレが暴走しないよう誰か大人の同席のもと ガルデニア嬢と ちゃんと話をさせてやってくれないか。」


 改めて、皇帝は 頭を下げたのでした。

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