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12.宰相閣下の忙しない一日

 今日は、いつもより宮殿内が慌ただしい。その理由はたぶん、皇后が催す茶会のためだろう。


 我がルナルコバリ帝国には、5歳になった第一皇子と 生後8か月の第二皇子がいる。どちらの皇子も聡明で、将来の帝国を背負っていくにふさわしい皇族だといわれている。

 特に第一皇子であるジェントーレ殿下は、頭脳明晰と言われながらも 常に教えを乞うことを怠らずない謙虚さを持っていて 将来 第一皇子が皇帝になられた暁には なお一層 帝国が繁栄していくだろう。といわれている。

 また 容姿端麗で、地位だけでなく 見目も麗しいため 貴族どもの政略的な意味としてだけでなく 令嬢たち本人も ジェントーレ殿下の相手になりたくて必死だ。


 そんな中での 皇后主催の茶会とあって、招く側は当たり前であるが おそらく招かれる側も 気合が入っているのだろう。なにしろ 今日は 茶会という名の、実際には 未来の皇帝との仲争奪戦 なのだから。

 貴族の令息は 将来の側近候補として、令嬢は 未来の皇后 側室候補として 集まってくるのだ。


「まあ、ウチは関係ないがな。」

 と、つい声が出てしまった。


「何がでございますか?」

 少し後ろを歩いていた 宰相補佐のムーロに聴こえてしまったようだ。


まあ、別に構わないが。

「今日の茶会は、凄いだろうなー。と思ってな。我がフェルチェ家は 参加しないから、良かったと思っただけだ。」


「参加されますよ。」

 と聴こえた。


「は? 何が?」


「ですから、参加されます。とお答えしたんです。」


「いや。だから。何が 何に 参加するんだ。」


「ですから。宰相のお家 フェルチェ公爵家のご令嬢であるガルデニア様()、第一皇子殿下であるジェントーレ殿下の御見合い御茶会() 参加されるんです。」


「はぁあーーー?」


「やはりご存知なかったんですね。機嫌が悪くないので そうだろうな。とは思っておりましたが。ま、今更知っても仕方ないですね。お時間的に、もうそろそろ お着きでしょうから。」


「それを早く言えーーーー ・ ・ ・

 宰相は、あっという間に見えなくなりました。




 ガルデニアとオルキディアに会って、参加を止めさせようとしたが無理だった。

 くっそーー!! デジオめー。俺を騙しやがって!!

 ムーロもムー口だ!! あいつも分かってて黙ってやがった。しかも、俺を引きずって連れてかえり いつも以上に仕事をさせおって!


 まあ せめてもの救いは、今日で婚約を決めることは絶対ないことだ。

 デジオにはムカつくが、奴も腐っても皇帝だ。今の状況で 婚家を決めて発表するなどありえない。

 ガルデニアは可愛い。めちゃめちゃ可愛い。

 あんな可愛い子が他にいるわけがないが、誰にもやらん!!第一皇子になんて冗談じゃない。未来の皇后なんて、そんな大変なこと 私の可愛い可愛いガルデニアにならせるわけがないだろう。

 まだまだ時間はある。絶対に、ガルデニアを 皇室の魔の手から逃れさせてみせる。


 あの書類の量。今日は、何時に帰れるだろうか。

 ガルデニアにできた友達の話を聴けるのは いつだろう。




 宮殿の廊下を歩いていると、なんだか 視線を感じる。何故(なにゆえ)だ?

 悪意は感じないが、それでも 気持ちのいいものではない。


 ・・・ 殿 が ・・・ 婚 ・・・ 決 ・・・


 なんだろう? 不思議に思いながら執務室に戻った。


 ムーロが いい笑顔で出迎える。

 嫌な予感しかしない。


「なんだ。何かあったのか。」

 不機嫌な顔を隠さずに訊いた。


「御茶会が 先程無事に終了したそうです。」


「そうか。」

 それがなんだ?


「そこで、皇子殿下が 皇帝陛下に直訴したそうですよ。伴侶には、このご令嬢がいい。と。」


「そうか。」


「ガルデニア=フェルチェ様だそうですよ。」


「そうか。」

 ・・・   え?


「え?」


「だから、宰相のお嬢様だそうです。」


「なんだと一ー!!」


 それを聞いた瞬間、宰相はまた 見えなくなりました。

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