8話『旅立ち』
お父さんとの特訓や、ルイズとさりげなく魔法の特訓、元よりルイズの自慢を聞いているうちに俺は成人である10歳となった。
【身体強化】を用いての筋トレや、8歳から始めたお父さんの持っていた古い鉄剣の素振りにより、ある程度まで成長し、身長はいつしか大きくなっていた。相変わらず、お父さんには模擬戦では適わないが、魔法を使えば目測では勝てるだろうという程度には仕上がった。
魔法に関してもルイズと一緒に中級魔法士用の本を読み、なんとか自分なりに改良を重ねたりして、中級魔法は殆どマスターし、上級魔法は少しだけ覚える事が出来た。平民出の俺がここまで出来たのも、死神が少し力をくれたお陰だろう。まだまだ伸び代もありそうだし、有名になるのも自由というのは努力すれば幾らでも強くなれるというのを言っていたのかもしれない。
「いや、別にそんな意味があって言ったわけじゃないですけどね」
とか、死神が言いそうな事だが、まぁ俺が勝手にそう思っておけば良いだろう。
「クロトー! ルイズさんがもう来たわよー!!」
「はーい! 今行くー!」
今日は晴れて家を出て王都にある冒険者学校に通う日だ。何故か領主の娘のルイズも俺と同じ学校に通うらしいが、領主の娘が冒険者になるなんて大丈夫なのだろうか。
「あら、クロトったら昔のお父さんにそっくりね! 顔も似てきたし、これは将来は相当なイケメンになるわよ!」
「そういうの良いから。それじゃ、俺は行ってくるよ」
「えぇ。あ、ちゃんとお金は持った? 冒険者学校に入学する用のお金と、王都で暮らすお金。一応卒業するまでは相当無駄遣いしなければ大丈夫なようにあるけど……」
「大丈夫大 大丈夫! ありがとね!母さん!それと、父さんも!」
俺たちの家系は平民だ。当然、王都にある冒険者学校に通うお金も、王都で暮らすお金も、余程かき集めないと集まらない。けれど、俺は今まで暮らしてきて不自由を感じたこともないし、それはこの両親の凄さだろう。子供がしたい事のためならお金もなんとかする。
俺は本当にこの両親の元で転生出来て良かったと心底思う。
「ほらほら、お父さんも、そんな所にいないで見送ってあげなさい。クロトの晴れ姿なんだから」
「それじゃ、ルイズさんを待たせるのも悪いし、そろそろ行くね! また帰ってくるからお母さんもお父さんも元気でね!」
「おう! クロト!気をつけて行ってこいよ!!お前ならどこまででも強くなれるからよ!!」
「えぇ! クロト!行ってらっしゃい!私達は此処で待っているからね!」
「うん!行ってきます!!」
お父さんに期待され、俺は両親のためにも、自分の為にも、冒険者になってこの世界を謳歌してみせる。前世で楽しかったことがなかった代わりに、俺はこの世界でもっと楽しいことを見つけてみせるんだ!
そう意気込んだ俺は颯爽と家のドアを開けて、両親に背を向けた。