7話『夢』
モンスターとの戦闘の次の日、魔力の使いすぎや、体の動かしすぎで筋肉痛なんかが起きると思ったが、案外そんなこともなく、むしろ体が軽く感じていた。
「お父さん! 今日はお休みの日なんでしょ?」
「あぁそうだぞ! どうしたんだ?」
「ねぇねぇ!お父さんって昔冒険者だったんでしょ!お母さんが言ってたよ!!」
「おい! あんまり冒険者だったことは内緒にって!」
「あらあら。そんなこと私言ったかしらね〜」
お父さんが冒険者だということは、お母さんに聞く前から分かっていたが、こういう風にお母さんから聞いたと言った方がなにかと便利だろう。
それに、本当に冒険者だったのなら、俺にもその戦闘スキルなんかを教えてもらいたい。
「はぁ。まぁ一応な。名前とかは別に知れ渡ってないが、そこそこの冒険者だったよ。クロトは冒険者のランクが分かるか?」
「うん!えっと、カッパーとアイアン、あとはなんだっけ?」
「はははっ。まぁそうだよな。冒険者にはランクがあってな、カッパーとアイアンそれにブロンズ、シルバー、あとはゴールドとオリハルコン、最後にアダマンタイトだな。ゴールド以上は王都にもあんまり居ないし、聖騎士にもなれるらしいぞ」
「へぇー! お父さんはどこだったの?」
「あなたも聖騎士になってくれれば王都に住めたのにねぇ……」
お母さんの言葉を聞き、お父さんは頭をガクッと下げてうなだれていた。まぁ聖騎士になるのなんて余程才能がなきゃ無理そうだし、お母さんも冗談で言っているだけだろう。
「お父さんはあと少しでシルバーになれたくらいだよ……」
「えっ!そうなのっ!? すごい!お父さん凄いね!! 」
「そうか? そうか! そうだよな! お父さんは凄いんだぞー!」
「それでなんだけど!僕も冒険者になりたいから、お父さんに色々教えてもらいたいな!!」
ここで冒険者になりたいというのを切り出すのは少し間違ったかもしれない。俺の言葉を聞いて、朝ごはんを作っていたお母さんの手も止まっているし、お父さんも少し難しそうな顔をしている。
「冒険者になるの、ダメ、かな? お父さんみたいにカッコよくなりたいし、お母さんとお父さんにもっと楽させてあげたいなって……」
「クロト!」
お父さんに突然大きな声を出され、俺は精神年齢26歳にして少しだけビビってしまった。
「な、なに……?」
「いや、大きい声を出してすまない。けどな、お前がその歳でそこまで考えてくれるのとても嬉しい。けど、まだ早い。冒険者になるのを止めはしないが、もう少し待ってくれないか? お父さんもお母さんもまだ寂しいんだよ」
「そうよ。それに、領主様の娘さんも王都に行くのが10歳の時なんだから、せめてその時までは家に居なさい! 」
「う、うん! もちろん! けど、それまでお父さんの暇な時に色々教えてくれたりする?」
「勿論さ! 息子が冒険者になりたいだなんて、むしろ俺としては嬉しいさ! 頑張って俺を超えてくれよな!」
「こらこら。冒険者なんて死と隣り合わせなんだからあんまり嬉しがっちゃダメよ。本当なら成人になる10歳でも行かしたくないんだから」
お父さんは喜び、お母さんは少し困った表情をしていたが、俺の冒険者になりたいという言葉に対しては否定されなかった。子供のやりたいことを受け入れてくれるのも、やっぱり良い親というものだろう。
けれど、少し疑問に思ったのが成人が10歳という所だ。日本では20歳だったが、この世界では10歳で成人らしい。それも、両親の会話を今も黙って聞いているが、10歳になったら何かしらの学校に通わなきゃいけないらしく、結局は家を出ることになるそうだ。
「お父さん!お母さん! 僕、成人するまでに沢山特訓して強くなるね!」
「そうだぞ!その意気だ!!」
「はいはい。さっさと朝ごはん食べるわよ! 準備なさい!」
こうして、俺はシルバー寄りの元ブロンズ級冒険者であるお父さんの元で、10歳になるまで冒険者としての特訓が始まった。
あと3話で連載続行か決まります……