エピローグ
ヴァーミリオンという名の貴族がこの世から消え去った。それは当然の報いであり、世の中には連帯責任というものがある。だからこそ、一家は世界中のどこにも居場所をなくし、名前すら奪われ消え去った。
ヴァーミリオンの父母に対しては少し可哀想という気持ち芽生えてくるが、仕方のないことだとも思っている。なにせ、ヴァーミリオンは魔人に成りかけてしまったのだ。魔人という存在はダイヤモンド級冒険者くらいでないと対処出来ないモンスターであり、一人で一つの国や街を滅ぼせるほどの力を持っている。
だから、一家もこのような報いを受けてしまった。
そして、ヴァーミリオンの使った禁忌の魔法は元々禁じられていたものではあるが、今後はより一層禁じられることとなった。
実際にヴァーミリオンが使った禁忌の魔法はそれほど強いものではなく、頑張れば誰でも使えるような魔法だ。しかし、ヴァーミリオンは禁忌の魔法と適性がありすぎた。
だが、それによってヴァーミリオンの使った禁忌の魔法は封印指定され、使ったものが居れば即死刑であり、名前すらも奪われる事となる。また、当然ながらどの街にも入れず、世界中に知れ渡ることから辺境の村にも入ることは出来ない。
財産も全て奪われることから、死よりも辛い罰と言えるだろう。
けれど、逆に禁忌の魔法をより禁じたからによる因果かは分からないが、最近では禁忌の魔法を使う違法者は増えてきている。ヴァーミリオンに憧れたのか、魔人に憧れたのか、単に禁止されているのを使いたいだけなのかは分からないが、結局のところ増えていることには変わりはない。
「んで、今日は魔人の討伐かい? 近頃増えてきてるからね。助かるよ。でも、あんたは一人で大丈夫なのかい? 見たところ仲間は居ないみたいだけど……」
禁忌の魔法を使用した者や、少なからず増えてきている魔人の成りかけや、魔人本体の討伐依頼は冒険者ギルドに張り出されている。
そんな中、私はクロトが居なくなってから殆ど毎日違法者の討伐や、クロトを生き返らせれる復活のスクロールを探し求めていた。
当然の如く、私一人では魔人に勝つことは出来ない。だからこそ、ギルドの職員も心配してくれているのだろう。
だがしかし、私には仲間が居る。それに、私には何故だか分からないが、クロトの持っていた力が受け継がれているのだ。どうやってかは分からないが、恐らくは私の手を最後に握った時、その力は受け渡されたのだろう。全てにおいて適性を持つ力を。
だが、そのクロトの力を借りれたからこそ、私は今やダイヤモンド級冒険者にまで成り上がれている。ここまで来てようやく、クロトを助けることの出来る復活のスクロールがあると伝承されている迷宮へと潜れるのだ。
「……早く会いたいな」
当然、伝承されているくらいだから復活のスクロールがあるかなんて分からない。けど、それでも希望を持つことくらいは出来るのだ。
「ん? お嬢ちゃん何か言ったかい?」
「いえ、なんでもないわ。それに、私は大丈夫よ。なにせ、私には心強い仲間が居るからね」
「そうかい、気を付けて頑張るんだぞ」
ギルドの職員から応援され、私はギルドから出る。ギルドの前では、私の心強い仲間が待っていてくれた。
クレア、グレイ、ユリウス、ケイこの四人と共に、今日も私は魔人の討伐とスクロールを求めて旅立つ。
クロトの願いである、誰もがゆっくり生活出来る世界を作る為に――
ご愛読ありがとうございました。次回作と、現在連載している作品もぜひよろしくお願いします。




