34話 『呆気ない勝負』
――当然、会話を試みようとしても、こいつにそもそも俺の言葉が通じるなんて思ってはいない。モンスターではないし、一応人間ではあるため、言語は理解してくれるかもしれないが、どうせ平民の言葉には耳を貸してくれないだろう。
まぁ、それが分かっている上で、俺はせめて今後の為に襲ってきた理由を聞こうとしているわけだ。
「で、そのロイス家の人がなんで俺を殺そうとしてきているんだ?」
「はっ。貴様を殺そうなどとは思っていない。我々が有効活用してやろうと思っているんだよ」
いや、こいつは何を言っているんだ? 明らかに俺を狙っていた弓矢の攻撃は致命傷になり、最悪死ぬくらいの場所を狙ってきていた筈だ。それなのに殺そうとしていないなんて頭のネジでも飛んでるんだろうか。
「それで、モンスターの使役は禁術だがバレたらまずいんじゃないか?」
「そんなの貴様らを先に捕縛などしてからモンスターは処分すればいいだけの話だ」
「へぇ。でも、さすがに俺達も無抵抗で捕まる気はないけどな!」
相手は俺を殺しにきている。今からの戦闘も相手がどのように動くかは分からない。だからこそ、俺は相手よりも先に動いた。
剣を抜き、ロイス家の男へと走った。先手必勝、これこそが今最もこの状況を打破できるはずだ。だがしかし、相手もそれなりの強さを持っているのだろう。だから、俺たちへと攻撃を仕掛けてきた。念のため、相手が次に行動する手も読んどいたほうがいいだろう。
「くっ……! 貴様! 正々堂々と戦おうとは思えないのか!」
「お前にそれだけは言われたくねえよ!」
そもそも最初に攻撃してきたのは相手の方だ。なのに今更俺が攻撃してきたから、焦ってこんな事言うなんてあり得ない。貴族というのは皆こんな考えなのだろうか。理解できない。
「さすがに簡単には倒させてはくれねえか」
「当たり前だ! 貴様程度の攻撃が通じるとでも思っているのか!」
俺の剣に合わせて、相手も細身のレイピアを引き抜いて対応してきた。剣と剣がぶつかり合って、激しい音が鳴り響く。だが、そもそも俺は剣だけで戦うつもりなどない。最初の一撃が防がれたところで次の手を打てばいいだけだ。
俺は剣の柄を持っていない左手で魔法を構築し、相手へと放った。中級程度の雷魔法だが、剣がぶつかりあっている今の状況では相手に躱す術はない。
「ぐ、魔法も使うとは……姑息な!」
「ばーか。使える手は全部使うんだよ」
「ぐ、あぁぁぁぁぁあ!」
雷魔法は直撃し、相手は断末魔をあげながらレイピアを放し、地面へと倒れた。まさか魔法一撃で勝てるとは思わなかったが、相手も油断していて防御に気を回せなかったのだろう。念の為躱された後の事も考えていたが、無駄に終わったようだ。
「クロト! こっちは終わったわ! そっちはどう?」
「あぁ! こっちも終わったぞ!」
「……お、終わってなど、いない!!」
「ちっ、まぁさすがに気絶するまでの威力は出なかったか」
倒れている相手もなんとか立ち上がり、まだ俺と戦おうという意志を見せてくる。が、体に痺れが残っているのか、体はまだ震えているようだ。
「もうやめとけよ。その傷じゃもう戦えねえよ」
「ふざけるな! 私は負けないのだ!! さっきは不覚にも油断してやられたが、次はやられない!!」
「クロト! 離れて!」
「クロト。今攻撃するのは危ない」
ユリウスとルイズの声に反応し、俺は念の為相手から距離を取った。確かに今の相手は武器も持たず、攻撃すれば勝てそうだが、どうやら相手にも秘策があるようだった。
「私は、私は、貴様らを殺す! 殺して有効活用してやる!!」
魔力を溜めた相手は、ルイズとユリウスが倒したモンスターへと手を向け、復活の魔法を行使した。
ゆらゆらと死体となっていたモンスターも動きだし、もう一度俺たちへと敵意を向けはじめた。さすがにこの禁術を使うところまでは予想していなかったが、今はとにかく考えているよりもモンスターを完全に消滅させることを考えるべきだろう。
週一更新を出来るだけ頑張ります……今落ち込みが激しくてモチベが微妙なので…




