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33話 『ロイス家』

 警戒しながら進む俺たちだが、その後も何度か奇襲はあった。明らかにルイズやユリウスに隙がある時でも、俺だけを狙って攻撃をしてくるということは、余程俺に恨みがあるか、平民が嫌いかなんだろう。


「つくづく貴族って奴らが嫌いになるわ」


「しょうがないわ。平民と貴族には切っても切れない関係があるのだもの」


「そう。仕方ない。それに、冒険者学校での平民の扱いはもっと酷い時もあったらしい」


「もっと酷いって、一体なにをされるんだよ……」


「さぁ? 奴隷のように扱ったり、気に食わなかったら殺したりとか、でも、近年は冒険者学校に入れる平民が限られてるから恐らく迂闊に殺そうとは思わないと思う。まともな貴族ならだけど」


 もしユリウスの言葉が正しいのならば、今俺を襲ってきてるのはまともではない貴族という事だ。実力のある平民が邪魔だから消したい。そんな程度の理由だろう。平民というだけで利益を考えていないという事だ。例え平民でも冒険者として最高ランクに位置する可能性もあるし、実力は昨日の段階で見ることも出来ているはずだ。なのにも関わらず、邪魔だからなんなのか知らないが、平民という理由だけで殺そうとしているのならば馬鹿としか言い様がない。……まぁ、最もまだ話してもいないから理由など分かりもしないが。


「なら、度々襲ってきてる相手は俺が殺しても良いんだよな?」


「分からない。けど、恐らく相手はクロトを殺したら証拠隠滅を図ると思う。相手にもよるけど、平民が貴族を殺すのは少しまずい気がする」


「でも、ならクロトにこのままやられろって言うの!? それなら私が倒すわ! 貴族の端くれだけど、同じ貴族なら問題ないでしょう?」


 貴族が平民を殺すのは良いのに、平民が貴族を殺すのはダメ。こんなよくわからないルールにはホントにうんざりする。何故俺は殺されそうな立場なのに手加減して無力化をしなければならないんだろう。


「ほぅ。この私を貴様程度の貴族が倒すと。果たして殺れるでしょうね? まぁ無理でしょうけど!」


 ルイズの言葉が癇に障ったのか、遂に俺たちへの攻撃をやめて、自らその姿を現してくれた。高笑いしながら現れた男の後ろには、先程まで俺たちを攻撃していたと思われるマスクにフードをしている男や、モンスターを何体か操っている男が居る。合計三人のチームのようだ。


「あなたね、モンスターを使役するのは禁術よ!! 貴方こそ貴族としての恥を知ったらどうなのかしら?」


「そんなこと知ったことか! どうせ後でこのモンスターも始末すれば問題はない。私は私の道をいずれ邪魔してくるであろう男を殺せればそれでいいのだからな!」


「ルイズ。ここは私に任せて」


 相手が油断しているのうちに、ユリウスは独断で動き、真っ先に貴族の後ろにいた男を一人気絶させていた。さすがに相手も突然の攻撃には耐えられなかったようだ。


「な、や、やってくれましたね。ユリウス殿。あなたでも邪魔をするのでしたら容赦は致しません。殺しはしませんが、少々の怪我を負うことは覚悟してください」


「私は元よりそのつもり。むしろあなたが怪我をしないように注意した方がいい」


「こ、この私を侮辱しましたね! ロイス家長男のこの私を! 」


「別に侮辱はしていない。実力差があるから言っただけ」


 ユリウスの淡々とした口調にロイス家の貴族は怒り始めているが、ロイス家の元々の狙いは俺のはずだ。さすがに俺を狙ってきたやつの相手をユリウスにさせる訳にもいかないし、まずは俺が戦うべきだろう。


「な、なぁルイズ。ロイス家って結構力の強い貴族なのか?」


「うーん。私もあまり分からないけど、自分の権力を誇っているみたいだし、そこそこの地位の貴族だと思うわ」


「ふーん。そうなのか。なら、俺がいっちょ相手してやるか。相手の希望も俺みたいだしな」


 もしもロイス家というのがクレアのような大貴族の仲間ならばユリウスに任せた方が後々の俺の冒険者学校での生活が安全かと思ったが、それほどでないなら俺でも問題はない。もちろん、相手の実力もよく分からないし、勝てるという保証はないが……。


「ユリウス! そいつの相手は俺がする。モンスターともう一人の男をルイズと一緒に頼んでいいか?」


「……了解した。あとは任せる。殺すのだけには注意が必要」


「分かってるって! そっちも任せたからな!」


「えぇ! モンスターの相手は私たちに任せなさい!」


 ルイズも杖を構え、ユリウスもモンスター相手に刀を構えている。対して俺の方は、貴族の男に対してまずは会話から試みる事にした。

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