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32話『奇襲』

 二人と離れた俺たち三人は、森の中をひたすら突き進んでいた。入った時は殆ど居なかったモンスターも、奥に連れて何度か見かけることが出来る。もちろん、不用意に手を出してはいないから、未だに戦闘はしていないが。


「で、なんでお前達黙ってるんだよ」


 ルイズの事だから普通にユリウスと仲良くなると思ったが、何故か一言も喋らなかった。沈黙が流れる中で、俺は黙っている二人を喋らせようと思ったのだ。


「もしもモンスターと戦う時に連携取れなくなるだろ? なんか話題でも見つけて喋ろうぜ」


「……クロト。それは話題見つからないやつ」


「そうよ。あなたがそんな事言うから出てきそうだった話題が見つからなくなったじゃない!」


「えぇ……俺のせいなのかよ……」


 みんなを仲良くさせようと思った俺が二人に責められる。納得はいかないが、俺のことで二人が仲良くなれるならそれはそれでアリかもしれない。

 けれど、俺たちがようやく話始めようとしたその時だ。探知魔法になにかが引っかかったのだ。さすがにモンスターだとは思うが、強さまでは分からない。警戒はした方がいいだろう。


「クロト? 警戒してるけど、モンスターでも現れたの?」


「いや、探知魔法に引っかかったやつがいてな。モンスターかも分からないが、いつでも戦闘は始められるようにした方がいいとは思う」


「そうですか。けれど、私の予想ではモンスターではないと思います。おおよそですが――」


 ユリウスが自分の中の考えを言おうとした時だった、茂みから明らかに俺を狙ったであろう矢が放たれたのだ。ゴブリンアーチャーというモンスターや、弓を使うモンスターは多数存在する。俺が男で厄介な可能性があるという理由で狙われたのかもしれないが、仮にモンスターならば警戒の薄いルイズから先に殺すだろう。


 だからこそ、今回の攻撃はモンスターではなく、人間による狙った攻撃だ。


「クロトっ! 屈んで!」


 矢が俺に当たるという直前でルイズの声が聞こえたが、その時の俺の行動は遅かった。明らかに間に合わない。矢を受けるしかないと思ったその時、俺はユリウスに頭を掴まれ、無理やり地面へと倒された。


「なにしやが……っ! 」


 ユリウスの突然の行動にはビックリしたが、どうやら俺は助けられたようだった。ユリウスは俺を無理やり倒すと、刀を抜かずに矢を掴んで投げ返した。


「申し訳ない。これしか手段がなかった」


「い、いや、助けられちまったな。ありがとう」


「ちょっと! 大丈夫なの!?」


 心配したルイズが倒されて立ち上がり始めた俺の元へと駆け寄ってくる。その間には俺たちへの攻撃はなかったが、次にいつ死角から攻撃がくるかは分からない。それに……


「毒まで使ってくるとはな……」


 ユリウスの投げ返した矢は無数にある木の一本へと刺さっており、刺さっている部分は腐り始めている。もしも、俺に直撃していればただではすまなかった筈だ。


「クロト。今回の遠征は貴族が襲ってくる。気をつけた方がいい」


「えぇっ!? どうして他の人が襲ってくるのよ!!」


「ルイズ。俺は平民だ。それこそが理由なんだよ」


 俺を殺そうと躍起になっている貴族の存在はいるはずだ。そいつらが今回の遠征にかこつけて、俺を殺そうとしてきている。森の中で俺が死んでも、モンスターに殺られたとでも言えば問題にはならないだろう。


「そんな……平民とか貴族とか、そんな理由で殺すまでするのかしら……」


「ルイズ。冒険者学校は貴族主義だ。自分の邪魔になりそうなやつを合法的に殺せるのなら殺す。もちろん、ルイズや……」


「――私も別に平民とかは気にしていない。実力が全て」


「そうか。ま、ルイズには危険が付きまとうし、迷惑掛けちまうな」


 この世界の貴族にも、ルイズのようにまるっきり気にしない奴や、ユリウスやクレアのように実力さえあればどうでもいいと思う奴も居る。

 まぁ、逆に貴族以外絶対に認めないという奴も居るというわけだ。


「私は別にいいのよ。気にしないでちょうだい」


「ありがとなルイズ」


「クロト。移動した方がいい。留まるのは危険」


「あぁ、それもそうだな」


 俺たちを襲った敵がいつまた襲ってくるのかは分からない。念の為警戒しながら移動した方が良いだろう。

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