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25話 『呼び出し』

 皆でBクラスのお祝いの為、飲食店に向かおうかと思ったが、どうやら俺だけBクラスの紋章を貰い忘れていたらしい。

 どうやら今日貰わなかったら困るということもあり、仕方なく3人を待たせて俺は学校へと戻った。


「ふむ。貴方が全試験をほぼ最高評価で突破した平民ですか。確かに、才能はあるようですね。これからの生活が楽しみです。それと、明日を楽しみにしていてくださいね」


 最後に紋章を受け取りに来たのが俺らしく、1人の教師が待っていてくれた。この時に教師から言われた言葉が少しだけ気になったが、3人をこれ以上待たせるのも悪いし、さすがにお腹も空いた事もあって、俺は普通に紋章を受け取って学校から出た。


「ほんっとに貴方は何してんのよ!!! それ一番大事な物よ!? 馬鹿じゃないの!?」


「悪かったって!! ったく、今日の飯は俺が出すからそれで待たせたのはチャラにしてくれ」


「マジかよ! それなら待った甲斐があったぜ! ありがとな!」

「そうね! それならアリね!」


「はぁ。貴族が奢られるなんてホントはあまり良くないんだけど、ま、私達なら良いか。それじゃ、どこのお店にするかしら?」


 ルイズの言葉に対し、誰しもが顔を見合わせ、首を傾げていた。そりゃそうだ。俺や雪は殆ど王都を見て回ってないし、グレルやケイは寮に居なかった時を考えたら飲食店なんて知っているはずがなかった。


「あ、そうだ! んじゃ『黄金の右翼亭』に行こうぜ! 冒険者が集うらしいし、酒場だけど行ってみたかったんだよ!」


「良いわね! 冒険者見習いとして、他の冒険者の姿などから勉強も出来るかもしれないしね!」


「おっけー! んじゃ、そこで決定な! ……って、俺達の年齢で酒場って大丈夫なのか?」


「はぁ。クロトはホントに何も知らないのね。この世界のどこにお酒の年齢制限があるのよ。ま、お酒なんて私たちの村には少なかったし、しょうがないと思うけどね」


「そうなのか! って事は、お酒を飲ませて……なんて事も……よし! 早く行こう! 今すぐ行こう!」


 前世でお酒があまり強くなかったことがどれ程影響するか分からないが、もしもこの姿でお酒が強ければ――


「――よっわ!! 嘘だろ!? さすがにこんなに弱いとは思わなかったわ。酒場選んだの間違いだったかなぁ……」


「そうね。私でももうちょっと呑めるわよ……」


「うぅっ。やっぱダメだ。今から飯だけ食う。すまん……」


「はぁ。無理しないでご飯だけ食べてなさい。……それにしても、冒険者御用達なだけあって、中々に美味しいわね」


 たった一杯のアルコールの力で頭の回転が鈍り、視界が揺らぐ。それ程までに、この世界のアルコールの度数は強く、俺は弱かった。

 確かにご飯は美味しいが、それ以上に吐き気が上回り、見るはずだった冒険者すら見ることが出来なかった。


 そして、最後に水と間違えて呑んだお酒によって俺は倒れた。次の日、当然の如く俺は頭が痛くなったが、こんな状態でも学校へと向かった。


「昨日は連れ帰ってくれてありがとな」


「お、おう。俺は大丈夫だけどよ、クロトは大丈夫なのか?」


「まぁな。そこまで痛くはねえかな。それより、今日はなんで俺たちだけなんだ? ルイズ達はどうした?」


 目が覚めたその時、俺の目の前に居たのはグレルだった。普段通りならルイズが起こしてくれるのだが、今日はグレルだった。いや、というよりも何故なのかは分からないが、家にルイズそのものが居なかった。


「あー、俺もよく分からんけど、貴族が優先して呼ばれてるらしいぜ。俺達は待ちぼうけで遅く登校。だから、俺とお前はこんな時間に登校出来てるわけだ」


「社長出勤か……ま、平民が呼ばれないのはなんとなく分からんでもないな。貴族としての立場は勿論として、平民の俺達はそもそも信用されてないんだろう。そして、同様に価値がない。例えBクラスだとしても、おおよそ平民はお遊びに使われると思うぜ」


「――お遊び、か?」


「確証はないけどな。おおよそ、俺達は貴族達の標的にされてイジメ、もしくは遊戯で殺されるかもな。能力の高い平民なんて貴族したら要らない存在だろう。今日は事前に平民の扱いなどを説明されてる可能性があるな。ま、こんな考えなくてもルイズかケイに後で聞けばいいんだけどな」


「そうだな。俺達が考えたって仕方ない。平民は平民らしくのんびり適当に学校生活を楽しもうぜ、クロト。――おっ、着いたな。今日が俺達の初登校の日だ」


 平民自体も少ない事もあり、今この学校の入り口に居るのは5人だった。俺とグレル。それに、名前も知らない女の子二人と、屈強な男一人だった。

 だがしかし、どの平民も俺たちと同じ、Bクラスの紋章を制服に付けている。


「……平民は少ない故に能力が高いって感じか。試験でのふるい落としも考えられるな」


「そういうことだ。能力が高ければ貴族に勝負を挑まれたりしても大丈夫だしな。学校側も考えてるんだろう」


 俺達が学校へと入ったその時、俺達の頭に直接語り掛ける声が模擬戦闘ルームへと来るようにと伝えてきた。俺だけじゃない、平民全員だ。貴族が先に来てなにを決めたのかは知らないが、


「もっと実力を知りたいって所かな」


「そういう事だな。平民は逆らえねえ。ま、もしくはここで強い貴族と戦わせて、敗北させて貴族と平民の差を分からせるってのもあるかもな。おおよそだが、模擬戦闘ルームに入ったら誹謗中傷は免れない。覚悟しといたほうがいいぜ」


 貴族の人達の策略はなんとなく分かる。Aクラスの選ばれた人と俺たちを戦わせて、平民を地の底に叩き落としてもっと従順にさせるという策略だ。

 貴族の中にもそこそこは良い人が居そうだが、こんな貴族学校だ。貴族絶対主義も多いのだろう。深く考えすぎかもしれないが、この程度は考えておいた方が覚悟は出来るだろう。

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