22話 『冒険者学校の真実』
ルイズと先生が戻ってきて、俺は先生から詳しい事情を聞くことにした。
「なぁ先生。さっきクレアが言っていたんだが、冒険者学校が貴族の人達のお遊びにみたいになっているのは本当か?」
「まぁ、冒険者学校が貴族の方達の支援によって維持出来ているというのは確かですね。ですが、例えば先程クレア氏に勝利した貴方のような、平民の子も少しは居ます。もっとも、冒険者学校内においては権力は武器にもなります。それだけは心に刻んでおいてください」
先生は模擬戦闘だけが見たかったのか、寮の位置と部屋について俺たちに教えて去ってしまった。
残されたルイズはまさか俺が勝つとは思わなかったらしく、未だに呆然としている。それに、まさか冒険者学校が権力も重視されるとは思わなかった。
「おーい。とりあえず今日は疲れたし寮に行こうぜ?」
ルイズの前で手を振り、なんとかルイズの意識を元に戻す。というよりも、俺が勝つことを内心では信用してくれていなかったのだろうか。
「はっ! そ、そうだ! クロト! 凄い、よく勝てたわね!!」
「んー。まぁな。って言っても、クレアとは剣を交えてないし、本気の実戦ならまた違ったかもしれないぞ?」
「それでも凄いわよ。あのクレアよ? 確かに純粋に剣で戦えばクロトでも勝てないだろうけど、使える手は全て使うのが冒険者だし、勝ちは勝ちよ。だから、あなたはそれを誇るべきだわ」
クレアは冒険者学校に入学する前からモンスターを狩りに度々王都から抜け出して居たらしい。俺が王都の門で会った理由も、どうやらクレアがモンスターを狩りに行っていたからだそうだ。
剣1本、そして1人だけでここまで出来るのならば、確かに俺の剣程度じゃ勝てる確率は皆無に等しいだろう。
「そうか。ま、クレアもなんか認めてくれたっぽいしな。というかルイズ、さっきの先生の言葉は本当なのか?」
「えっ、先生の言葉?」
「はぁ。やっぱりお前は聞いてなかったのか……」
「なんか言ってたかしら?」
ボーっとしていたルイズに対し、俺は先生から聞いた言葉を話した。
と言っても、軽く一言呟いた程度だが、その内容は俺とルイズが寮の中で同じ部屋という事だった。
「は、はぁぁぁぁぁ!? 私とあなたは男女よ!? 同じ部屋とか有り得る訳ないでしょう!?」
「し、知らねえよ! 俺は平民だし、ルイズの小間使い的な扱いなんじゃねえか? 冒険者学校は貴族の学校だしよ」
「まぁ確かにそう思われても仕方ないわね。でも、例えそうだとしてもよ? 男と女がひとつ屋根の下で暮らすとか、学校側としても大丈夫なのかしら?」
「うーん。けど学校側の指示には逆らえねえしな。それに、俺とルイズなら1ヶ月くらい一緒に寝てたし大丈夫だろ! 」
王都まで来る間にルイズとは何度も一緒に寝ているし、今更ルイズと暮らすということに抵抗はない。むしろ、知らない人と一緒になるくらいならルイズと一緒の部屋の方がなにかと便利だろう。
「……はぁ、まぁいいわ。それよりも貴方は学校が始まってからもこうして試合をするつもり? 平民出のあなたはこれから先も絡まられる可能性は高いわよ? それに、クレアに勝ったという情報が広まればもっと―――」
「―――当たり前だろ? 俺は来るものを基本的には拒まないよ。それに、色んな人と戦えるのは楽しいしな」
「ま、貴方ならそう言うと思ったわ。私もできるだけはアシストするけど、私や貴方より強い人なんていっぱい居るんだから、調子には乗っちゃダメよ? 学校初日が大事なんだから!」
学校初日からクレアのように戦いを挑んでくる人はさすがに居ないとは思うが、念の為魔法石は作っておいた方がいいかもしれない。
「モンスター用の魔法石なんだけどなぁ……」
「それならこれから先も断れば良いのよ?」
「ま、連続での試合はしないようにするよ」
クレアに勝った情報がいつ他の学生に流れるかは分からないし、それに平民出という事もあるし、貴族の人達の考えはよく分からない。
だからこそ、俺は一刻も早く魔法石を作る為と、クレアとの戦闘で疲れた体を休める為に、ルイズの手を引いて寮へと向かったのだった。




