21話 『認められた平民』
魔法の影響による煙が晴れ、中に立っていたのは無傷のクレア。どうやって防いだのかは分からないが、距離がある今ならまだ攻撃の手段はある。
「鳴り響く雷鳴よ、燃え盛る炎と共に弾け飛べ!『獄炎雷!!』」
まだ使える数の少ない上級魔法を組み合わせ作り上げた。俺の使える技中でも威力の高い技だ。
「我が身を護れ。『剣盾!』」
クレアが剣を地面に刺した瞬間、クレアを守るかのように丸く障壁が現れた。
「さっきの魔法もそれで防いだってわけか」
どの程度まで防げるのかは分からないが、さすがに今回の魔法は防ぎきれないだろう。
「ほう。中々の威力だな」
クレアを守る障壁と俺の魔法がぶつかり、激しい音を立てる。
さすがに直撃しただけでは障壁を破る事は出来ず、クレアの顔も余裕な表情だ。
「だったら、これならどうだ!」
剣を突き刺して障壁を展開しているのなら、その剣を抜けばいい。
だからこそ、俺はクレアの視線が『獄炎雷』に向いているうちに魔法を発動させた。
「地を揺らせ! 『地震!』」
俺の魔法に対し、模擬戦闘ルームは揺れている。
しかし、これだけで剣が抜けるほど緩くは刺していないようだった。
「そんな小細工など無駄だ!」
「んじゃ、これも追加してやるよ!!」
魔法で地面を揺らした時に気付いたが、模擬戦闘ルームの地面はさほど硬くはない。オリハルコンを利用している壁と比べれば天と地の差があるといえるだろう。
だからこそ、俺は右足に力を込めて、地面を踏み込んだ。
地震が起きている今しか出来ない技だが、剣を抜くにはやはり最適だったようだ。俺から見て直線上にあった剣に向け、模擬戦闘ルームの地面は割れていった。
「私の障壁を破るとは、少しは褒めてやる! しかし、この程度の攻撃では私には勝てない!」
地割れによって剣が抜け、障壁が破れたとは思ったが、どうやら俺の『獄炎雷』はクレアに効かなかったようだ。
「咲き誇り舞え! 『百花繚乱!』」
クレアの周りに花弁が舞い、俺の魔法は切り刻まれた。
そして、その勢いをもったまま、クレアは俺へと剣を繰り出す。
「さて、これで終わりだ。やはり汚らわしい男などでは私には勝てないようだな」
俺の喉元へと剣を当て、自信満々に勝ち誇るが、今回は俺の勝ちのようだ。
「その傲慢な態度さえなければ、俺は負けてたかもな」
クレアの視界から俺の存在は薄れていき、本物の俺がクレアの後ろから現れる。
「チェックメイト。俺の勝ちだ」
「隠蔽魔法か。魔法ばかりだなお前は」
「クレア。お前の剣の腕は強い。対峙しなくても分かるからな。わざわざ相手の得意分野で戦う程俺もバカじゃないさ」
「冒険者らしい言葉だな」
「冒険者学校に入る前に言う言葉か?」
「ふふっ。それもそうだな」
クレアの笑い声は少し可愛く、傲慢な態度がまるで嘘のようにも思えてしまう。これが本来の姿なのかもしれない。
「それで、汚らわしいっていう言葉は撤回してくれるんだろうな」
「まぁあなたは少なくとも私に勝てた訳だから汚らわしい。というのは撤回するわ。けれど、平民の子が汚らわしいというのは事実よ。それも、冒険者学校の中ではね」
「冒険者学校の中では? どういう事だ?」
冒険者には平民も沢山居ると本には載っていた。
だからこそ、俺も冒険者学校に入学しようと思ったし、そもそも、俺のような平民の子供でも入学出来た。
だからこそ、クレアの言っていることは理解できなかったのだ。
「冒険者学校ってのは、今や貴族たちが自分の子供を自慢する場所みたいになってるのよ。だから、貴方みたいな平民の子供は珍しいのよ。きっと、私のように絡んでくる人も沢山いるはずよ。ま、貴方の実力は私も認めるし、問題ないと思うけどね」
それだけ言うと、クレアはレイピアを仕舞い、模擬戦闘ルームから出ていってしまった。
残された俺は、クレアの言葉を再認識すると共に、ルイズが来るのを待つ事にした。
新人賞を優先しているので、更新頻度がもしも遅くなってしまったらごめんなさい。
出来るだけは頑張りますが、ご理解して頂けたら嬉しいです。




