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20話 『模擬戦』

 模擬戦闘ルームへと入り、俺は待ってくれていた『ヴァンホーム家』の娘の前へと立った。


 模擬戦闘ルームで本気を出して戦うのはいいのだが、壊れたりしないか心配だ。

 だが、その心配は杞憂に終わった。

 ルイズが教えてくれたのだが、模擬戦闘ルームの壁は貴重なオリハルコンを混ぜて作られた壁らしく、冒険者学校に入る学生程度では傷一つ付けれないらしい。


「敗北の条件は2つ。降参するか、私が止めるかだ。もちろん、本当に危険な場合は私が止める。まぁ存分に戦うといいさ」


「クロト! 死なないように頑張ってね!!」


 先生とルイズは戦闘に巻き込まれぬよう、念の為上から模擬戦闘ルームを見れる場所へと移動した。


「さてと、戦う前に名前を聞いてもいいか?」


「何故貴様のような輩に私の名を教えると思っているのか?」


「ま、自分が負けた相手の名前は知りたいだろ? 俺の名前は教えといてやるよ。クロトだ。頭の片隅にでも残しといてくれ」


 なんとなく日本にいた時に漫画で見たようなセリフを言ってみたが、これまた逆効果らしく、相手は怒りで震えている。


「ほう。やはり私の名を教えといてやろう。『クレア・ディ・ヴァンホーム』 。貴様を倒す名前を頭に刻んでおけ!!」


 怒りに身を任せ、名前を俺に叫んだ途端、クレアは動き出した。

 冒険者学校の前で戦う時よりも速く動き、戦う前にクレアとの間にとっていた間合いなど最早無いに等しかった。


「ちっ! こんなに速いのかよ!」


 剣を取り出す暇すらない程に早く俺の前へと到達したクレアに対し、俺が今できる行動は、


「あんま最初から使いたくなかったんだけどな!」


 事前に使おうと持っていた魔法石を地面、クレア本人に当て、クレアが剣を振るうよりも前に俺は後ろへと退いた。


「くっ。こんなものを使うとは。時間稼ぎにもならんぞ!!」


 地面に当てた魔法石は小爆発を起こし、煙幕を出す魔法石。そして、クレア本人に当てた魔法石は、俺が独自に作り上げた特殊な魔法石だ。


「数秒でも持ってくれれば充分なんだよ!!」


 煙幕の中でクレアは俺の魔法石による拘束を受けている。所詮は弱い魔法を組み合わせただけの、緑の蔦による手足の拘束だが、ほんの数秒程度は確実に動きを止めてくれる。

 だからこそ、俺はあの場でこれを使うしかなかったのだ。


 バカ正直に剣の腕が高いやつに剣で挑む気なんてない。俺は勝てればいい。魔法でも、魔法石でも、色んな手段が使えるこそ、俺は新たな戦術を思い付くことも出来た。その点だけはクレアに感謝する。


「小癪! もう終わりだ!!」


 クレアが蔦を全て切り終え、俺の元へと向かう。だが、もう遅い。


「──────なっ! これは、罠!?」


 隠蔽魔法を使い、俺は自分自身を投影しておいた。クレアは俺に攻撃する前に気付いたみたいだが、気付いた時にはもう遅い。


「この勝負、俺がもらった!」


 クレアの全方位を包むように、魔法を展開し、放射する。中級魔法の『大火球(ファイヤーボール)』だが、同時に放射された数は十にも及ぶ。如何にクレアが強いといえど、さすがに避けきる事は不可能だろう。


「それはどうかしらね?」


「─────くっ! 嘘だろっ!?」


 魔法は確実に直撃し、クレアに少しはダメージを与えられたと思ったが、煙が晴れた時、クレアの体にはダメージはなかった。

 いや、ダメージというよりも、クレア自体に傷一つなかった。

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