19話 『案内』
2日か3日に1回の更新を目処に、6月30日まで頑張ろうかなと思ってます。
俺も剣を構え、貴族の娘も細身のレイピアを構える。
お互いに牽制しあい、いつ動くべきかを探っていた。
「待ちなさい!! 貴方達! 街中での戦闘は禁じられていますよ!!」
「この声は……」
俺が声に反応し、隙を見せたところで、貴族の娘はその隙を突こうとレイピアを持って走り出していた。
「やべっ。避けきれ……」
「駄目と言っているでしょ?」
寸前まで迫っていたレイピアが弾かれ、貴族の娘の手から離れていく。
どうやって今の早業をやったのか分からないが、それは俺の前に立つ、異様なオーラを放つ女の人に聞けば分かるだろう。
「貴方達は今年度の学生さん達でしょ? 血気盛んなのは冒険者として良いと思うけど、限度と節度、場所を弁えなさい」
「クロト!! 大丈夫!?」
「あぁ。怪我は特にない。この人が助けてくれたからな」
「……良かった。あ、それと、この人は冒険者学校の先生よ? 私が戦いを止めるために呼びに行ったんだから!」
戦闘が始まろうとしていた時にルイズの姿が見えないと思ったが、そういう事だったのか。
確かに、先生が止めてくれなければ最悪街中での激しい戦闘にもなったかもしれない。危なかった。
「そうか。悪かったな。それと、止めようとしてくれてありがとな。──────先生も、助けてくれてありがとうございます」
俺は先生に頭を下げ、剣を鞘へと戻した。
だが、俺の戦いの相手だった貴族の娘は納得出来ていない様子だ。
「先生。模擬戦闘ルームを貸していただけませんか? そこでなら良いですよね? 戦っても」
「あなたね……はぁ、まぁいいわ。私も4大貴族の一人娘の頼みだしね」
許可がおりた後、貴族の娘はレイピアを拾い上げて腰の鞘へと戻した後、1人で冒険者学校の中へと入って行った。
それにしても、冒険者学校の先生が断れない程の貴族、4大貴族って一体なんなんだろうか。
「なぁルイズ。4大貴族ってなんだ?」
「やっぱり知らないで戦おうとしてたのね……」
「まぁな。なんかこう、見下すような感じで気に食わなかったんだよ」
「さて、あの娘も行ってしまったみたいだし、君達の事も模擬戦闘ルームへと案内しようか」
「んー。それじゃ、クロトには歩きながら説明するわね」
先生の後ろを歩きながら俺達は模擬戦闘ルームへと案内されていた。初めて学校内に入った訳だが、辺りを見る余裕もなく、俺はルイズから4大貴族についての話を聞いていた。
「ま、こんなところね。どう? 理解出来たかしら?」
「とりあえず、少しは分かったって感じだな」
ルイズの話を聞いた後、俺は頭の中で整理していた。ルイズの説明がそもそも分かりやすいこともあったが、4大貴族の名前を覚えるのが難しかった。
とりあえず、今回俺が喧嘩を売られた相手は、4大貴族の1人、『レイジス・フィム・ヴァンホーム』という『ヴァンホーム家』の一人娘らしい。
その『ヴァンホーム家』というのが、冒険者から4大貴族まで成り上がり、現在最も王に一目置かれている貴族だとかで、その一人娘は剣の腕に対しては将来的に最強になる。と言われているらしい。
「ま、でも剣だけなら戦い方を工夫すればなんとかなりそうだな!」
「でもさっき危なかったでしょ?」
「くっ……確かに。油断していたとはいえ、さっきの攻撃は避けきれなかったからな」
「負けても仕方ないと思うけどね。とりあえず頑張ってね!」
「任せとけ!」
先生が立ち止まり、俺とルイズの方へと振り向いた。思えば、冒険者学校に入学する時にも試験がある筈だが、この先生は単純に『ヴァンホーム家』に逆らえないから、俺たちを戦わせようとしているのだろうか。
「さぁ着いたわ。ここが模擬戦闘ルーム。貴方達の実力、見せてもらうわよ」
まぁなんでもいい。先生の前で『ヴァンホーム家』に勝てば相手も言い訳出来ない筈だ。




