17話『冒険者学校の前に』
ルイズが俺の身分を証明するという事もあり、俺の検査はルイズに見られながら行われるという形になっていた。といっても、門兵による装備などの検査は、毎日王都に入る人が多い為か、それ程入念には見られることはなかった。
もちろん、魔法による探知なんかも行われたが、反応したのは精々モンスターの魔石や、魔法を封じ込めた魔法石なんかの類だった。
「君は、身分的にはまだ冒険者ではないようだけど、この魔石はどうしたのかな?」
盗んだ、或いは襲って奪った。とでも思われているのだろうか。
いや、勘繰りすぎか。少し気になったから聞いてきている程度だろう。
「村から王都までの間に倒したモンスターの魔石です」
「ほぉ……モンスターを倒したのか。まだ冒険者にもなってないのにか?」
「はい。これから冒険者になりたいと思っているので、経験にもなりますし、モンスターから逃げるよりも、戦う方が生き延びる可能性が高いと思ったから倒しました」
「それは、この少女も一緒、という事で良いんだね?」
「は、はい。一応そうですけど……」
少しの沈黙が流れ、辺りが少し不穏な空気になる。もしかしたら、さすがに冒険者にもならずにモンスターを倒して魔石を持ち帰ったのはまずかったのかもしれない。
もしくは、辺境の村とはいえ、貴族の娘を戦闘に参加させたという事実……
「そうですか! それにしてもこの魔石綺麗ですねぇ。一体どのモンスターから取れたんですか?」
俺の考えていることは全てただの無駄に過ぎなかったようだ。門兵はどちらかといえば自分も欲しいのか、どのモンスターからかどうかが気になっているみたいだ。その証拠に、そろそろ行列的にもヤバいのにメモを書こうとしている。
「あ、えーっと、モンスターは一応ポイズンフロッグで、淀みの湖周辺ですね。他には、検査とか大丈夫ですか?」
「はい! 大丈夫です! 大変お待たせしました! ようこそ王都へ!!」
魔石の情報を瞬時に紙に書き、その門兵は自分の仕事をまた再開し始めた。
まぁ、そんな事はどうでもいい。それよりも、今は、
「やっと王都だー!!!」
「ちょ、ちょっと!!あんまり騒がないでよ! 注目集めるじゃない!!」
「王都にやっと着いたんだし、これくらい良いだろ! 他にも観光してる人なんかも居るしさ!」
俺の声に反応してか、周りの人が少しずつ俺たちへと視線を向ける。その度にルイズの顔がどんどん真っ赤になっていき、羞恥心が耐えきれなくなったのか、ルイズはスタスタと歩き始めてしまった。
「わ、私はとりあえずお風呂に入りたいから行くわよ!」
さすがに初めての王都で1人きりになるということは俺でも怖い。
だからこそ、俺は早歩きで行ってしまいそうなルイズを追いかけた。
「あら。結局あなたも付いてくるのね。まぁさすがに約1ヶ月行水程度じゃ、体も汚いわよね」
「うーん。まぁな。それに、ルイズと離れるのもなんとなく少し寂しかったしな」
「──────なっ!? そ、それならさっさとお風呂入ってる冒険者学校の手続き済ませに行くわよ!!!」
「お、おう。そうだな。それじゃ、1時間後に入口で」
怒っているような、喜んでいるような? そんな表情をしながらルイズは風呂屋へと入ってしまった。
「うっし。それじゃ、俺も行くか!」
1ヶ月ぶりのお風呂を俺は約束の1時間程度楽しみ、風呂屋の入口でルイズを待っていた。
だが、待っても待ってもルイズは来ない。既に約束してから2時間は経過している。
「ま、まぁ。女の子だしな。時間掛かるんだろ」
今から手続きした後になにを買おうか考えつつ、結局ルイズがお風呂から出てきたのは約束から3時間。俺が待ち始めておおよそ2時間経過した時だった。
話進めるの下手なんだよね……




