14話『激闘』
俺たちの前に立ち、目をギョロギョロと動かしながら口を使ってカチカチと威嚇のようなことをしてきているキラー・マンティス。
もしかしたら、こいつが幼少期に出会ったマンティス・ベビーの成長したやつなのかもしれないが、区別する方法はない。
そして、マンティス・ベビーはまだなんとなく小さくて可愛いといえば可愛いのかもしれなかったが、キラー・マンティスとなれば別だった。
足の本数も増え、何故か12本になっており、鎌も2本から4本になっている。最早カマキリといえるのか分からないくらいの変貌だろう。
「ルイズ。こいつに俺達は勝てると思うか?」
「なに弱気になってんのよ。ここで逃げたら私達はきっと後悔するわ。冒険者として、強いモンスターとの戦いも楽しまなくちゃ!」
ルイズは根っからの冒険者気質を持っている。もしくは、自分の魔法に自信があるだけの馬鹿だろう。
けれど、こんな馬鹿でもこういう時は俺の心を動かしている。
「ま、女の子に言われたら俺が戦わない訳にはいかねえよな」
「そうよ。まだ戦ってもいないのに諦めるなんて私達らしくないわよ!」
ルイズが魔法の詠唱を始め、俺は腰から剣を抜き取り構えた。
キラー・マンティスも俺たちの戦う姿勢を見て、少し警戒しているようだった。
だが、警戒してくれている間はチャンスだった。俺がどんな行動をするかキラー・マンティスは分かっていない。だからこそ、俺は剣を右手に持ち、左手には魔力を溜めた。
「ルイズ! 援護は任せたぞ!!」
「えぇ! 分かったわ! 出来るだけ巻き込まないようにもするわね!」
ルイズが最初にどんな魔法を使うのかは分からなかったが、俺が走り出した途端に『ファイヤーボール』という火の魔法を3発同時にルイズは放った。
3発の魔法は、キラー・マンティスに吸い込まれるように向かっていったが、勿論そう簡単に当たるわけがない。カマキリとしての羽を使い飛び立ち、キラー・マンティスにファイヤーボールが当たることはなかった。
だが、これでキラー・マンティスのターゲットはルイズになった。
「ナイスだ。ルイズ」
ルイズにも聞こえないような声で感謝をし、俺は左手に溜めていた魔力を使って隠蔽魔法を発動した。
隠蔽魔法によって俺の姿は消え、キラー・マンティスも俺を見失い、敵はルイズ1人だと思っているようだ。
「───────終わりだ」
キラー・マンティスが飛ぶのをやめ、地面に降りてきた直後、俺はキラー・マンティスの頭へと剣を突き刺した。
突き刺す瞬間に俺の気配に気付いたようだったが、気付いた時点では遅かった。
「なっ! まだ生きてんのかよ!」
剣が頭に刺さりながらも、鎌を振り回し、体を揺らし、羽を使って飛ぶ。どうにかして俺を体から引き離したいようだ。
「くそっ。この高さじゃ降りれねえ……」
「クロト!! 頑張って耐えてちょうだい!!」
「……えっ?」
ルイズの声が聞こえた刹那の瞬間、俺の視界は真っ白になり、直後に体へと痺れが回ってきた。
意識が一瞬だけ飛び、俺の意識が戻った時には、キラー・マンティスと共に俺は地面へと落下していた。
「ルイズ! 俺を殺す気か!!」
「ごめん! クロトなら大丈夫だと思ってたの!! それよりも、そのモンスター、まだ生きてるわよ!!」
「くそっ。生きてるとかマジかよ!!こいつしぶといな!」
落下していきながらも息があるキラー・マンティスは羽をもう一度使い始め、地面への落下を阻止しようとしていた。
「もうこれしかねえよな……」
俺は自分の剣が刺さっている頭へと手を当て、傷口へと手を突っ込んだ。生温いような気持ち悪い感触が俺の手を包み込むが、今はそんな事を言ってられない。
キラー・マンティスも傷口をいじられて痛いのか、空中で暴れ始めているし、俺のしがみついている腕力もそろそろ限界だろう。
「今度こそ、さよならだ」
傷口に突っ込んでいる手から俺は『フレイム』という魔法を連続で発動し、そのまま頭を爆発させた。
辺りに肉片と体液が飛び散り、ルイズが嫌な顔をしながら避けている。
そんな中、俺は体だけとなり、羽も使えなくなったキラー・マンティスと共に地面へと落下していた。




