11話『共闘』
次の日、ルイズの顔はなんていうか、眠そうだった。
「な、なぁ、昨日はあまり寝付けなかったか?」
「い、いや、違うわ!違うの!別にドキドキして眠れなかったとか、緊張したとか、そういうのじゃないわ! だから、気にしないでちょうだい! さ、早く行くわよ!」
「ド、ドキドキ? まぁよくわかんないけど、別に元気そうだな。良かった。結界もそろそろ消えるし、朝ごはんを食べたら向かおうか」
朝ごはんは夜とは違って作ることは出来ない。だからこそ、領地から持ってきた干し肉やパンを使って簡単なサンドイッチのようなものを作り上げた。
「はい。こっちはルイズの分。少し多かったらごめんな」
「あ、ありがと。これくらいなら楽勝よ」
ルイズは宣言通り俺よりも少し多くしたサンドイッチを簡単に食べ切り、早々とテントなどを片付け始めた。
……と言っても、結局はテントなどの片付け方が分からないらしく、俺が殆ど1人でやる形となり、結界が消えるとほぼ同時になんとか出発する事が出来た。
それからというもの、俺が料理を作り、テントを張り、ルイズは魔法の勉強をする。そして、ルイズも慣れてきたのか普通に会話しながら一緒に寝る日々が続いた。
そして、半月という日々が過ぎた頃、俺達は領地から王都に向かう最後の関門である『淀みの湖』へと辿り着いていた。
「なぁ、さすがにこの湖近くでは野営したくないよな?」
「え、えぇ。さすがに私も薄気味悪いし、モンスターも沢山居るし嫌だわ」
「それじゃ、今日は久しぶりに夜も進む形になるけど大丈夫か?」
「もちろんよ。ここ最近魔法の勉強もしたし、そろそろ強いモンスターとも戦いたいわ!」
夜に野営せずに進むのは非常に危険だが、この湖はまだ俺たちでは倒せないモンスターも棲息している。
だからこそ、この辺りでは野営しないで夜という時間も掛けて湖を抜けてしまいたいのだ。
「最悪俺たちじゃ勝てないモンスターと出会ったら、【隠蔽魔法】を無詠唱で掛けるから、全力で逃げるんだぞ」
「分かってるわ。そういえば、あまり気にしたことなかったのだけれど、あなたって幾つの魔法に素質があるの?」
『淀みの湖』付近はモンスターの数は多いものの、まだ入り口付近ということもあってモンスターは見えてこない。だから、ルイズはあまり警戒しないで俺に訊ねてきたのだろう。
「そ、そうだな。あんまり言いたくはないんだけど、」
「なによ。恥ずかしがってないで早く言いなさいよ。どうせ私より少ないんでしょう?」
俺は死神による力のお陰だとは思うが、全てのおいて素質だけはある。全ての魔法、そして、武器に対してもだ。アニメやラノベの異世界転生のように、初めからチートみたいに強いわけではないが、努力次第では幾らでも俺は強くなれた。
けれど、この素質のことは無闇やたらに言うべきではないと分かっている。
「まぁ、ルイズにならいいか。絶対に誰にも言うなよな。俺はどんな魔法でも覚えれば使えるんだよ」
俺の言葉に対して、ルイズは最初唖然としていた。いや、頭がその事実を処理出来ていないのだろう。
ようやく理解したと思えば少し体をプルプルと震わせていた。
「な、な、なんですって!? あなた、って事はどんな魔法も使える素質があるってこと!? なによそれ! 」
「あ、あぁ。まぁ一応な。けど、難しい魔法とかはやっぱりそれなりに勉強したりしないと無理だけどな」
「そんなの当たり前じゃない! けど、凄いわ。あなた、その素質は本当に凄いわ。ごめんなさい。少し馬鹿にする気でいたけれど、まさかあなたって凄い人だったのね」
ん? なんか思っていた反応と違う反応だ。もっとこう、怒鳴られたり、殴られたりされるものかと思っていたけど、案外こいつも魔法に関する事なら素直なのかもしれん。
「そ、そうか? まぁ、悪く言えば器用貧乏ってやつだけどな」
「そうね。あなたはその素質をもっと理解して、使いこなした方が良いわ。そうすればきっと、」
「───────ルイズ! 左に避けろ!!」
珍しくルイズが真面目に俺にちゃんとした言葉を伝えようとした矢先にモンスターが襲ってきた。
なんとか俺の言葉が間に合ってルイズに怪我はないが、もしも避けることが出来なかったのなら、ルイズが元々立っていた場所を見れば、その悲惨さは理解出来るだろう。
「ちっ、『ポイズンフロッグ』か」
「そうみたいね。それも、複数居るみたいよ」
「それじゃ、ルイズ。寝る前にこっそり練習していた魔法の力を今見せてくれ」
「なっ!! 起きていたならちゃんと言いなさいよ!!……ごほん。まぁいいわ。距離もあるし、あなたが私を少しの間守りなさい」
「あぁ、任せとけ」
『ポイズンフロッグ』は相手を溶かす粘液と共に、猛毒の舌を利用して遠距離攻撃もしてくる厄介なモンスターだ。
そんなモンスターからルイズが詠唱終わるまで守りきるのは難しいかもしれないけど、冒険者になるんだから任せれた役割くらいは果たしてみせなければならない。
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