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0話『熱中症』

 ─────────季節は夏。


 いつも通りの朝。アラームが鳴り響き、その音に合わせて俺は起きる。今や必需品となっている携帯を見て、俺は慌てて会社へと行く支度を始めた。


「やべえ! 今日は朝から会議だったのに!!」

 朝ご飯も食べずに急いで飛び出した俺は、突然の太陽の光と、その暑さによってフラフラになっていた。


 視界も歪み、足取りもフラフラになる。音も遅れて聞こえ、次第には力が入らなくなっていた。


「おいお前! 危ねぇぞ!!」


「────────えっ?」


 怒声が聞こえた時にはもう遅かった。体に何かが当たるような感覚と共に襲う痛み。自分が一瞬どこにいるかも分からなくなり、目を開ければ見上げる人々が居た。


「人が轢かれたぞ!! 早く救急車を呼べ!!」

 朝はみんな急いでいる。俺を唯一助けようとした人が1人。怒声をあげてくれた人だ。それ以外の人はみんな急ぎ足でどこかへと向かっている。


「……お、俺も、会社に……」


「おいっ! しっかりしろ!! ───────誰か!早く救急車を呼べよっ!!!」

 一切の楽しみもなかった26年間。ただただ生きて、なんとか大学卒業してから入った会社で会社員として働いて、本当に何もなかった。

 俺が死ねば会社はどうなるんだろう。たかだが、4年目の社員などいなくてもきっとなんとかなるだろう。……あ、でも、今日の取引先との面談はどうなっちまうんだ。


「ははっ。死ぬ時まで俺は会社の事かよ……」

 目の前がどんどん暗くなっていく。痛覚が麻痺してるのか、あまり痛みはない。周りの人の声も聴こえなくなってきている。


 気力を振り絞り、目を開けて見えた最後の光景は俺には目もくれずに急いでいる人々と、唯一俺のことを心配してくれた知らないおっさんの顔だった。

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