キンモクセイ
道に立ち止まり、瞳にキンモクセイの美しさを映す。
鮮やかなオレンジ色がパッと視界を彩る。
ザラザラとした質感の花びらが四つ。
花びらはヒトデのようなカタチをしていて、少し猫背。
花びらのフチには僅かに白が浮かんでいる。
その花びらがひとつの場所に集まり、綺麗に咲き誇る。
花びら四つの小さな花が重なり合って、大きなオレンジの花を完成させている。
やや薄めの茶色い枝は、花を支えるには細すぎる体でひっそりと存在している。
目を凝らすと、枝には節があるのが分かる。
今にも折れそうなほど細い枝を、緑の葉とオレンジの花が隠すように伸びている。
葉は天を目指しているものが多く、少し唇のカタチに似ている。
葉の中心には濃い黄緑色の筋が通り、その筋からは無数の白い線が枝分かれしながら外に伸びている。
光が反射しツルツルとした表面が晒される葉もいれば、ザラザラとした冴えない裏面を晒す葉もいる。
右曲がりに反り返っている葉もいれば、あまり反り返らずに存在する葉もいる。
縦長の四角形の中に埋め込まれた正方形。
正方形のキンモクセイの上下には黒が存在し、落ち着きを演出する。
右手の親指と人差し指を押し当てて広げると、大きくなるキンモクセイ。
見るのをやめてスマホをポケットへと入れる。
一瞬で世界は変わり、ビルが立ち並ぶ都会へと戻ってきた。
生で本物のキンモクセイが見たいと心から思った。