睡蓮
今日は彼女とデート。
目的地は有名なオシャレカフェ。
彼女と腕を組ながらカフェを目指す。
何本もの道が交差する場所へと差し掛かる。
すると交差するほぼ全ての道から見覚えのある顔が現れた。
11叉路で俺は本命彼女と腕を組んでいるところを9人の彼女に見つかってしまった。
俺以上に本命彼女も含めた10人の顔は驚きに満ちていた。
彼女を近所で済ませすぎた。
もっと遠くの女性に手を出すべきだったと後悔した。
後ろでは本命彼女。
他の9本の道ではそれぞれ9人の彼女が道を塞ぐ。
正面の一つだけ空いている11本目の道を俺は迷わずに突っ走っていった。
こう見えても昔、野球をやっていて運動神経には自信がある。
俺は彼女たちから逃げ切れることを確信した。
もう彼女たちとは縁を切り、新しい恋に向かって走るだけだ。
疾走をしながら後ろを振り向くと、一人だけ俺にかなり近づいてきていた。
そう言えば彼女の一人に駅伝の選手がいた気がする。
もう一度、後ろを振り向くと一人だけいないことに気が付いた。
そう言えば、運動能力は優れていないが頭脳明晰な一流大学に通う彼女がいた気がする。
もう何をしでかすか分からない。
相手は10人が束になって俺に向かってきている。
このまま普通に逃げていても一人ではどうにもならない。
俺は走っていた橋の手すりに咄嗟によじ登り、川へと飛び込んだ。
川の深い場所まで沈み、ゆっくりと浮かび上がってゆく。
そして俺は水面にふわりと浮かんだ。
まるで睡蓮の花のように。