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すみれ
すみれは場違いな山道のド真ん中に咲く。
緑色のカラダ、そして紫色を帯びた細長い顔で。
自然の澄んだ空気を感じながら、ゆらゆらと踊るように揺れる。
そこにひとりの女性が現れて、すみれは優しく掴まれて連れていかれた。
車に乗せられ山道をどんどん下る。
すみれは逃げるかのようにドアからこぼれ落ち、地面に横たわる。
途端に雨が降り始め、次第に激しさを増す。
雨に打たれて萎れながら、すみれは目を閉じた。
雨の日は大嫌い。
太陽が好きだから雨の日は憂鬱。
自分は一色で全然目立たない存在。
華やかな仲間が羨ましい。
もっと鮮やかな花になりたい。
日向で美しく咲き誇りたい。
すみれは空を見上げて溜め息をついた。