85話 親しき仲には未来なし
何ヶ月ぶりでしょうか・・・
本当に何ヶ月ぶりでしょうか・・・
よろしくお願いしまぁぁぁす!
扉を開けてから数秒。禎はその場から動けずにいた。目の前の光景がこの世の光景とは思えない。禎達と同じ境遇の者たちが目の前で走り、歩き、飛び、喚いている。あちこちを行ったり来たり。大きなシャンデリアの上には顔をニヤつかせたセキセイインコまでいる。
「全員、参加者・・・」
「おい行くぞ!ハリヤマ達探すんだろ。ここでボーっとしてるよりマシだ」
「う、うん・・・」
禎を小突き、サシミは走り出した。それに続くように禎も扉が連なる道を走り出す。
「サシミ、やっぱりこの部屋番号って」
「あぁ、きっと異能力ペットのナンバーだ。俺たちの部屋の番号は500だったからな」
扉にはそれぞれ異なる三桁の番号が大きく書かれていた。サシミは右手の甲を見せ自分のいた部屋番とNo.が一致していたことを知らせる。
「バラバラのナンバー。言ってた通り、ランダムだ」
「なら探すぞ。急がねぇと時間切れになっちまう」
長い廊下を走り、一つ一つ部屋番号を確認していく。だが一向に探しているハリヤマ達の番号が見つかることはない。ただただ異能力ペットやその飼い主の怒号や叫び声が聞こえるだけである。
「クソっ!この階にはいねぇ!他の階行くぞ!」
「ここ4階だから先に上の階を確認しよう!」
禎が上の階に向かおうと階段を登り、サシミもそれを追いかけようとした時、
「そこのネコの兄さん!!ちょっと待ってぇ!」
後ろから声をかけられた。振り返るとそこには緑のインコが羽をバタつかせてコチラに笑いかけていた。
「なんだ・・・コッチは急いでんだ・・・」
「どぉー?俺と組まない?ナンバーは156!結構強いでしょ!お兄さんのナンバーは・・・」
インコは自身の羽を高らかに見せびらかしてきた。顔を近づけサシミのナンバーを確認するとその動きを止めた。
「あ〜やっぱりなんでもないや。引き止めて悪かったね。そんじゃねぇ!!」
「あ!?おい!」
笑みが消え、引き笑いに変わると颯爽とその場から去って行った。
「今のなんだ・・・?腹立つ!」
「どうしたの?サシミ」
一向に登ってこないサシミを心配し禎が戻ってくると、本人はイラついた表情で毛を逆立てていた。
「さっき仲間にならねぇかって誘われたが俺のナンバーを見た瞬間どっか行きやがった」
「きっとサシミのナンバーが500だからだよ。部屋のテレビに出てたでしょ?不明って。きっと怖いんだよ。強さの指標で不明って書いているのが」
「イライラするぜ。数秒無駄にしちまったじゃねぇか!!早く行くぞ!」
「いたっ!もう、僕に当たらないでよ・・・」
サシミは禎の頭を蹴り飛び越えると階段を登る。それに続くように禎も後を追った。
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「この階、なんか少なくねぇか・・・」
「下の階に行ったか、まず部屋から出てないか、もうグループが決まったかのどれかだろうね。もう10分くらいは経ったし・・・」
5階に着くとホテルの構造は何も変わっていないが、4階に山ほどいたような参加者はこの階にはいなかった。空中に鳥は一匹も飛んでいない。防音なのだろうか、下の階の怒号も聞こえず静かだった。
「あまり時間がねぇな。取り敢えず探すぞ!」
「うん・・・」
4階の時と同じように走りながら部屋の扉を一つ一つ確認していく。息を切らしながらも見落としがないように。しかしこの階にもハリヤマ達のナンバーは書かれてはいなかった。もうすぐ突き当たりに差し掛かろうとしていたその時、
「ん・・・?サシミ!」
「なんだよ・・・ッ!」
何かに気付いた禎が廊下の先を指した。その先にいたのは、
「呪・・・!」
「マーズ!」「火星ちゃん!」
火星ちゃんだった。どこかに向かおうとしていたが禎達の姿に気づきその動きを止めた。
「まさかテメーを見つけてこんなに安心する日が来るとはな」
「よかったぁ。あれ、富士崎先輩は?」
「・・・呪」
火星ちゃんが目を伏せて口を開こうとしたその時、
「なぁにしてるのぉ?火星ちゃん?」
「呪!」
「あ?なんだお前ら・・・」
曲がり角から猫と犬の二匹の異能力ペットが顔を出した。犬は壁を嚙り首だけを出しており、猫は両手をダラーンと下げて気の抜けるような声をあげながらサシミの前に姿を現した。
「君達こそだぁれ?」
「グシシッ!コイツ、飼い主を連れてきてやがる。アホだ!」
猫は首を左右に一定間隔で傾げながら近づき、犬は歯をカチカチ音を立てながら禎達を嘲笑ってくる。
「んだとコラッ!」
「おっと、暴力は禁止だぜ。だが能力は使える。だから危ないのさ」
顔だけを覗かせている犬に近づき睨みを効かせる威嚇するが、犬は全く怯むことはなく笑い続けると目元の224のナンバーが光出した。
「「「「ゲシシシシシシシシシシ」」」」
「ッ!」「うっ!」
すると次の瞬間一匹だった犬が二匹、三匹と増えていく。
「「「「「「飼い主を人質にとれる能力なら、危ないからよぉ!」」」」」
「分裂の能力か・・・!」
「「「「「「「名前はバイバイ。No.224の雑種犬。『己分裂』って能力。人間くらいなら数の暴力で余裕なんだが、今は禁止。よかったなぁ?俺がこの能力で。助かったなぁ?」」」」」」」
バイバイはどんどん増えていき、一瞬で禎達を取り囲んだ。
「それでぇ?火星ちゃんに何か用?」
「テメーらこそ何の用だ!そいつは俺たちの仲間だ!」
「嫉妬かい?ゲシシ!」
「それって以前まででしょ?もうわたち達の仲間だよ。この3チームで挑むの」
「悪いが他のヤツを探せ。どけ!クソ分裂!行くぞマーズ」
サシミは増えたバイバイ達を押し退け元いた道を引き返し始めた。
「殺死・・・」
「おい、何してんだよ。時間がねぇんだ!ハリヤマを見つけっぞ!」
しかし、火星ちゃんはサシミの後を追ってきてはいなかった。その場から一歩も動いてはいなく、着いていく気は感じ取れなかった。
サシミは苛立ちながら火星に近づき手を取り引っ張る。
「ごめんね?もう仲間は3チーム揃ったんだ。まだ揃ってないちみ達に着いていくのは危ないから。わたち達は今から火星ちゃんの部屋に行ってそこで待機するんだ」
「「「ゲシシッ!振られやがった!」」」
「火星ちゃん・・・」
「マーズ・・・」
「呪呪呪・・・」
猫はフラフラと近づいてくると、限界まで垂れている目をサシミに向ける。その表情は禎を震わせた。
「ホントにごめんね?わたちの名前はリッキャ。パパがつけてくれた最高の名前。ちみの名前は?」
「・・・サシミ」
「フヒッ!サシミ、よろしくね」
垂れ下がった腕を上げ握手を求めてくるリッキャ。ギザギザの歯を剥き出しにして笑いかけてくる。その歯が噛み合い、No.444の文字が浮き上がっていた。
「・・・行くぞ、ただし」
「あ、うん・・・」
「・・・・・・フヒッ」
サシミは差し出された手を握ることはせず、顔を逸らして下の階へ向かうため、元いた道を引き返し始める。
「気をつけろよ・・・マーズ」
「じゃあね。富士崎先輩によろしく・・・」
「呪呪・・・」
サシミは火星ちゃんを一瞥し歩みを進め、火星ちゃんは禎の言葉に小さく頷いた。
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火星ちゃんと別れ、3階に向かう禎達。その空間には重い雰囲気が広がっていた。いつもであれば大声で喋っているであろうサシミですら言葉を発さずにいた。
「本当に、よかったのかな・・・」
「ああするしかねぇ・・・マーズが決めたことだ。それにあのメス垂れ猫・・・」
「ムカつくほど気味が悪い・・・!」
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「火星ちゃんの友達、友達想いのいい友達だねぇ?いいな〜いいな〜いいなぁぁ!!」
「呪呪呪・・・」
「・・・わたち達も早く仲良しになろうね?」
残り・400チーム 現在休戦中
チーム決め 残り16分
今後も不定期で更新していくので温かい目で見てください!
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