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俺の飼い主 僕の異能力ペット  作者: 一つの装置
怪物獣道ファング 願いを求める500チーム
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80話 殺戮が勝ち



「グギュッ!!べや・・・べや・・」

「・・・・」


糸から元のヤモリに戻ると、素っ頓狂な声を出して、地面に落下した。斬りつけられた首を抑えながら、這いずる。


「ダハっ!首が・・イデェ・・・」

「剣山っ!」


虎太郎と智晴はそんなヤモリを尻目に、真横を通り、剣山の元に走り寄った。


「どうしよ・・・血が・・」

「大丈夫だ・・着物を結んでくれ・」

「わ・わかったっ!」


剣山に言われた通り、虎太郎は着物を破ると左腕と同じように右腕に結びつけて、血を止める。しかし完全には止まらず、血がポタポタと両腕から滴っていた。


「・・な・・何でお前・・俺の首の位置が分かった・・・糸になっているのに・・なんで・」

「・・・・・・」


ヤモリの瞳に余裕はもうなかった。脳を駆け巡る疑問が今のヤモリの全てだった。剣山はそれに応えるように、口を開く。


「俺は・・見ていた。貴様の首を。貴様が糸に変わる前からな」

「べや・・!?」


嘘偽りのない真実を語る。余裕のないヤモリの瞳から見る剣山の瞳は、ヤモリとは違う、汚れ一つない綺麗な瞳だった。


「最初から俺はお前の首しか見ていなかった・・・・しかし、途中から目が追いつかなくなって、どこに首があるかわからなくなった」

「・・・あ・・?」


予想していた答えではない。更にヤモリは混乱する。新たな刀を生み出し口に咥え、杖のように使い、剣山は立ち上がった。


「あの速さでクルクル回っていてはさすがの俺の目でも追いつくことはできない・・」

「じゃあ、お前・・・なんで・・」











「偶然さ・・・」

「ッ!」


言葉は一瞬。答えは単純だった。フラフラと揺れながら、口角を上げる。


「どのみちあそこで決め斬らなければ俺は糸にバラバラにされていた。それにお前が焦って俺の腕を吹き飛ばした時に確信したたんだ・・あそこ付近に貴様の首があると・・・・」

「付近・・・偶然・・・たったそれだけ・・?なんの根拠もない・・・」


まだ信じられないのかヤモリは首を何度も横に振る。


「俺はお前の強さを身をもって知っている。こうしないと・・両手を失わないと・・・偶然じゃないと・・お前の首を斬ることは出来なかった。もうすぐ貴様は気絶する・・・・・・俺の・・・勝ちだ・・」


『勝ち』その言葉を聞いた瞬間、ヤモリは全身の力を抜いた。


「はは・・俺を・・・殺さないんべや・・?20は殺したべや・・・」

「・・俺は貴様にはならない・・・元のヤモリに戻って・・・野生に戻って・・勝手に死ね・・」


冷たい視線で刀を口に咥えなおす。その様子を見ていたバクトの足は震えきっていた。


(やられちまった・・逃げっ!)

「グルゥ!!」


我にかえり、その場から離れようとしたバクトを剣山は見逃さなかった。刀を構え直し、首を思いっきり振るう。


「ガァァ!ガハッ!!」

「逃げるな・・・貴様は警察に連れて行く・・」


刀を振り飛ばすと、バクトの脇腹に勢いよく刺さった。耳と脇腹の痛みによって体勢を崩し、動きが取れなくなった。


「貴様のペットが起こしたことだ。飼い主が責任を取れ・・・・」

「ハァ・・・・?俺が・・?アイツの・・・・・・?」


先程のヤモリと同じ目をしたバクトが震えた手で土をにぎりしめている。


「なんで俺がアイツの分まで!!この山で殺しをしたのはヤモリだ!!俺じゃねぇ!!」

「・・・アイツがああなったのは貴様が原因だ」


鋭い眼光でバクトを睨みつける。怒りが沸々と感じる表情をしていた。バクトは小刻みに震えている。


「ッ!」

「アイツの殺しへの執着は異常だ・・病的にまで楽しく殺しを行う動物なんていない。俺達動物はそんなふざけたことに脳を使わないからな。だが、そんなことに脳を使える貴様みたいな人間が、俺たち動物の脳を捻じ曲げ、奥底に眠る感情を引っ張り出すんだ。よく言うだろ。ペットは飼い主に似るって・・・貴様に似たんだ。似てしまったんだ。だから貴様が、アイツの代わりに責任を取るべきだ・・全ての殺人の責任を・・」

「・・・・・・・グゥ・・あぁぁぁ・・!俺は・・アイツの飼い主なんかじゃねぇ!勝手に喋って、勝手についてきただけだ!!」


痛みに耐えながら地を這いずる。しかし、全くその場からは動けていなかった。


「キョキョッ!!キョキョキョキョキョキョ!!キョーー」

「ッ!笑ってんじゃねぇぞ!!ふざけるなよ・・犬も!ヤモリも!クソがッ!負けやがって・・おいテメー・・・俺の完璧はどうなる!!!」


その様子をみていたヤモリは吹き出し、笑いだした。馬鹿にされたと感じたのか、バクトはヤモリに食いかかる。唾があたりに散らばる。


「なぁ・・バクトォ・・捕まりたく・・ないべやか・・?」

「当たり前だぁ!あんな豚箱に俺が入るわけがねぇ!!犯罪者なんて完璧じゃねぇ!!なぁ頼む・・・勝ってくれよぉぉ!」


地に顔を伏せ、歯を食いしばる。ヤモリはそれを確認すると力なく手を挙げ、剣山を指差した。


「わかった・・・べや・」

「・・・・」


するとその指先から一本の弱々しい糸が伸びでる。今にも消えそうであった。


「おい・・・まだ動くのか・・」

「もう・・限界べや。あと数秒で俺は気絶して・・能力は消える・・だが、まだ一本・・動かせる力は残っている!!だから、最後の勝負べや・・・」


身体を起こそうと地に手をつき力を入れる。


「諦めろ・・貴様は負けたんだ」

「完全には負けてない!俺はまだ・・・気絶してないべや・・お前に拒否権はねぇ!!俺も限界だがお前も限界べや!!両腕を切断されて、立ってるだけでやっとな筈・・・ここまできてトドメを刺す余裕はないべや!だから・・勝負・・べや・・・」

「・・・・・・」


覚悟を決めた者には何を言っても通じはしない。今のヤモリは覚悟を決めていた。


「俺の糸は・・お前の真横を通って、飼い主の心臓を突き刺す・・」

「コタロウをだと・・?」


剣山に動揺の顔が浮かんだ。ヤモリはニヤリと口角を気持ち悪いほど上げる。糸が更に伸びる。


「わかるだろ?お前を通るんべや・・止めねぇと飼い主に刺さっちまうぞ?勝負べや・・俺の糸か・・お前の刀・・どっちが強いか!!俺を・・止めてくれよ!!」

「チハル!コタロウ離れろぉ!!」

「こっち!」「ゴホッッ!」


ヤモリの声と共に糸がすごいスピードで向かってくる。宣言通り剣山の真横を通ろうとしていた。本気だと確信した剣山はバクトの腹に刺さっていた刀を消し、新たに生み出した刀を咥える。智晴が虎太郎の手を引いて走る。


「グルゥゥゥゥッ!!」

「ギョァァアアァァ!」


刀と糸がまじわり、今度は斬れずに火花が散る。またヤモリの糸が追いついたのだ。勢いに押し負けそうに足に力を入れると、血が流れ出す。


(斬れないッ!またパワーが増した・・!)

「ギョァァアアアアアァァ!!」


メキメキと音を出す刀、牙からも血が滲むほどの勢いで刀を押す糸。力はほぼ互換だったが、どちらも一歩も引かない。


「はは・・・いいぞ・・いいぞ・やはり俺の完璧は崩れない!俺は完璧のまま生き続ける!」


自由になったバクトは脇腹と耳を押さえながら、その場から逃げ出した。目を見開き、冷や汗をかきながら歩みを進める。


「コレが最後の、殺しべやァァァァァァァァァ!!」


ヤモリが叫んだその時、


「ッ!!」

「キョキョッ!」







パキンと音を立てて、刀が折れた。折れてしまった。糸に押し切られ、刀が真っ二つに。ヤモリの糸が剣山の刀をまたも追い越した。しかもそれは、最悪の形で。


「コタロウッッ!!」

「キャッ!坂出くんッ!!」

「ッ!」


勢いを止めることなく、糸は一直線に虎太郎に向かってきた。虎太郎は近くにいた智晴を押し飛ばす。糸が目の前に迫り、目を瞑った。その時、


「何・・・?」


糸は左へと曲がった。それはもう綺麗に、虎太郎の目の前で。何が起きたのか、剣山達は理解が追いつかなかった。虎太郎を見逃した糸が向かった先は、




「ゴハッ・・!」

「ッ!」



バクトの心臓だった。真後ろから突き刺さり、貫通している。何が起きているのかわからないバクトは口から血を垂らし、震えた頭をヤモリに向ける。


「・・・・・・あ・・?なんだよ・・コレ・・・ヤモリテメー・・・ゴバッ!なんなんだよコレ・・?俺はあの犬の飼い主じゃ・・・ねぇぞ・・!」

「あぁ、知ってるべや・・・お前は・」






俺の飼い主べや・・・・





バクトを刺した張本人のヤモリは、口角を釣り上げ目元は悦びに満ち満ちていた。今まで見たことのない、幸せそうで、それでいて不気味な顔をしている。


「はぁ・・・・?」

「誰も、着物の犬の飼い主を殺すなんて言ってないべや・・・」


全身の力を抜き、倒れ込むヤモリ。しかし、顔はしっかりとバクトを見つめる。静かにバクトを嘲笑うヤモリ。


「グハッ!!」

「捕まりたくないんべや?なら死ねば捕まらないべや!!完璧でいるにはその方がいい!!俺もハッピーお前もハッピー!べや・・・」


糸を少し動かして反応を楽しんでいるようだった。剣山はその場から動けずその光景に顔を歪ませる。


「お前の耳を削ぎ落とした時、いつもより遥かに大きい満足感が俺を襲ったべや・・・だから殺したらもっと凄いんだろうって思ったべや・・だから、殺しができなくなる前にバクトを殺せて、なんて俺は幸せ者・・・べや・」

「おいやめろ・・・やめろぉぉぉぉぉぉッッ!!ーーーーっ!アァァァアァァァァァツ!!」


痛みに我慢できず、無意識に糸を手で掴もうとすると5本の指全てが切断されてしまい、更にひどい断末魔をあげる。その光景に口が心配なほどに釣り上がっていた。


「なぁ、バクト?ありがとうな?笑うことを教えてくれて・・・楽しいことを教えてくれて・・・俺に殺しを教えてくれて・・・飼い主でいてくれて・・・最後に飼い主として、責任をとって死んでくれて・・・ありがとうなぁ!!」

「やめろ・・・感謝なんかするんじゃねぇ・・・俺は・・お前の・・飼い主じゃない・・!!やめろって・・言ってんだろうがァァァァァァァァァ!!」







『卍糸』

「・・・・・・・・・」








指を下にチョンと動かすと、騒いでいたバクトは大口を開けながらその場に倒れ、動かなくなった。それと同時に糸が消えていく。飼い主が死んで、能力が無くなったのだ。剣山達はただ見ることしか出来なかった。


「着物・・・俺の・勝ちべや・・・」

「・・・・・・こんな勝利で嬉しいのか・・・・俺はやはり貴様のことが理解できない・・」


ニヤニヤ笑っているヤモリから視線を外し、バクトを見やる剣山。智晴はその場に腰を下ろした。


「勝負が終わるのがゴールなら・・・俺はお前の能力を追い抜いて、先にゴールした。お前がなんて言おうとも俺の勝ちべや・・・俺に負けたお前が・・この先どうなるか・・・・見たかったべやぁ・・・」


ヤモリの瞳が徐々に閉じていく。腕を力なく動かし、舌を足す。


「俺の方が・・・お前より強かった・・べや・・・強い・・キョキョッ・・・!あぁ楽しかった・・・・また殺りたい・・・べ・・・・や・・・」


瞳が完全に閉じ、動かなくなった。ヤモリがついに気絶したのだ。元のヤモリに戻っていく。


「・・・・・・・チッ・・勝ち逃げか・・嫌な気分だ・・」


風に揺られ、立っているのがやっとの剣山が、ヤモリの気絶を確認したその時、


「剣山くん!坂出くんがぁ!!」

「ッ!」


真後ろから智晴の大声が聞こえ、何事かと思い振り向くと、


「ゴハッ!!ハァ・・ブハッ!」





智晴に抱き抱えられた虎太郎が鼻血を流し、血を吐き出していた。青ざめた顔で剣山に笑顔を作っている。




「剣・・山・・・」

「コタロウ!!」






残り・400チーム










ありがとうございました!!


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