79話 糸の切れ目は刀で繋ぐ
「斬るって・・・まだ一度もあの糸を切れてないんだぞ。それに、どこに首があるかわかるのか・・・剣山・」
「・・・・・・」
「なんだぁ・・その目・・・なんなんだぁ?あぁぁ!?」
糸は円を描くように周りをクルクル回る。同じく剣山も睨みを効かせながら、首を動かす。
(変・べや。なんで・・コイツ・・・俺を見つめれる。今の俺は糸なんだぞ)
周りの糸を見つめ続ける剣山の瞳がピンポイントで糸となっているヤモリの瞳と交わる。何回も、何十回も。
(目が合う訳ない。そうだ・・偶然べや・・偶然。ただ単に何度も偶然目が合うのが印象に残ってただけべや。時計を見たら時間がゾロ目の時が多いと思う錯覚と同じ理由べや。印象に残っただけ・・・なんだか急に疑心暗鬼になってきた・・・べやッ!)
「ッ!!」
糸が数本、剣山に降り注ぐ。刀を生み出し薙ぎ払うと、糸はスルスルと空中で回っている糸の中に消えていく。
(思考能力も・・・・定まらなくなってきたべや。頭の中が、こんがらがる。ああ、やっぱり目が合っている・・・ッ!)
(攻撃の速さが増した・・!)
しかし攻撃は止まず、それどころか徐々にその糸は激しくなっていった。その場から動くことができず、ただ剣山は刀を振るう。
「だが!やることは変わりない!殺すことには変わりない!!糸と刀!力は互換!だが俺は俺自体が糸!お前は生身!切り刻まれるのはお前ってことべや!!長く戦っても腕が疲れるだけべやぁ!!」
「・・・・・ああ、同感だ・・・!」
剣山は刀を使い糸を受け止める。そして地面に糸を刀と共に叩きつけると、無数の糸が密集し、回っている中心を目指して走り出した。
「べ・べや・・!!」
「終わらせよう・・この戦いを。お前のその醜い姿を・俺はもう見たくないッ!!」
血が一滴ずつ走った場所に落ちる。周りの糸は剣山に向けて今にも突っ込んできそうで勢いであった。
「俺はこんなところで負けられないんだ。だから今すぐ、俺に勝利を譲れ!!」
「ガガッ!!無理だね!!テメーはここで終わりだぁ!!」
ヤモリが笑ったと同時に糸が攻撃を開始する。何の躊躇もなく、剣山を殺しに向かう。
「ギョギョッ!!ガガッガァァ!!」
「・・・・」
攻撃の発生源に近づくということは、更に攻撃の激しさが増すということ。さっきとは比べ物にならない量の糸が剣山に降り注いだ。刀を振ると無数の糸の勢いに押され、少しづつ、後ろに下がっていく。
「お前、力は互換とさっき言ったな・・」
「だからどうしたぁ!!この死に損ないがぁ!!」
両目を見開き、刀を持っている右腕を振り上げる。
「フンッ!」
大量の糸が一斉に突っ込んでくると同時に、刀を振り下ろし、あたりに突風が吹き荒れる。糸は風に靡かれ、剣山には当たらず、全て見当違いの地面に突き刺さった。
「べや・・べや・・」
「・・・・・・」
風が止むと、その中心にいたはずの剣山の姿はそこにはなかった。代わりに剣山がいた場所は、
「べ・・・・や・・!?」
「速さも互換だ・・・」
糸に変形したヤモリの顔の目の前だった。今の一瞬で、突風と刀を使い、ヤモリに迫っていたのだ。
(やっぱりコイツ・・・俺の首の位置が・・)
「・・・斬るッ!!」
空中で新たな刀を生み出し、振り上げる。何の迷いもなく、糸に切りかかるその姿はヤモリの首の場所が分かっていなければできないことであった。
(いーや!いーや!俺はまだ殺す!自分自身が凶器になってまでしたいんべや!!殺しを!俺は負けないぃぃ!!!)
「剣山!!右だ!!」
「ッ!!」
虎太郎の大声に反応し、言われた通り右に目を向けると、すごい速さで一本の糸がコチラに向かってきていた。気付くのが遅かった。もう間に合わない。
「グアァっ!!!」
「剣山!!」「剣山くんっ!」
その糸は剣山の右腕を貫いた。刀を握ったままの右腕が血飛沫を飛ばしながら宙を舞う。血を纏った糸の出どころを見ると、そこには半分が糸になっているヤモリの切られた尻尾があった。
「ギョギョガァァ!!お前が俺を脅かしてくれてよかったぜぇ!!一点集中、一直線の糸!!もうお前の腕も!凶器もない!!そのまま落ちて死ねぇぇ!!」
体勢を崩し真上を向いている剣山の目の前には光り輝く星と自身の切断された右腕が目に入る。真下では無数の糸。ウネウネと嘲笑う様な動きをして剣山が落ちるのを待ち構えていた。
(・・・・・油断・した・・痛みで・身体が動かない・・落ちる・死ぬ・・・コタロウが・・・死ぬ・・)
『俺達がこのバトルに勝って、お前の病気を治してやる』
『剣山』
いや・・・・・死なせない・・
『おい剣山!カッコつけてそいつに負けたら承知しねぇぞコラァァゴホッ!』
『じゃあケンケン、よろしくでちゅ・・・』
負けない!!
糸が残り数メートルに迫る。すると剣山は牙を鳴らし、ヘッドバンキングの様に身体を前にスイングして、体勢を無理矢理元に戻した。その勢いのまま、真上に落ちてくる自身の腕に大口を開け、鋭い牙で噛み付いた。
「グルゥゥゥゥ!!」
(ガッ!?立て直した!それどころか・・・自分の腕を・・・!?)
喉を鳴らし、口内には血の味が広がる。吐き気を催すその感覚を痛みで誤魔化す剣山。逃さまいと強く自身の腕に噛み付いているため、切断された腕からは大量の血が噴き出ている。剣山の両腕の断面も同じように滝のように血が流れ出ていた。
(俺は約束したのだ。任されたのだ。遂行しての約束だ!投げ出さない!諦めない!放棄などしない!俺は今生きている!!この痛みが生きている証!自分を見失うな!)
(ダメだぁぁ!・・・糸が間に合わない・・!)
目一杯首を捻り、噛み付いている腕を振り上げる。血塗れの右腕の手はまだ力強く、刀を握っていた。その瞳は覚悟を決めた揺るがない瞳。そのまま噛み付く腕が握っている刀で振り斬ろうと。この一撃に全てを、剣山はかけていた。
「グルルゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
(俺の首の位置が分かってんなら!斬れたら俺の勝ち、斬れなかったら俺の負け!!あ?違う!斬られたら俺の負け!斬られなかったら俺の勝ちだ!!今まで俺の糸は斬れなかった!!斬れちまう!斬れない!斬れるかも!斬れるはずがねぇ!!勝てる!負ける!勝てんだよ!!負けそう!勝つのは俺べやぁ!!)
絡みまくった糸の様な思考を巡らすヤモリ。糸がそれに応えるように、下からゆっくりだが伸びてくる。だが、その糸は遅すぎた。
(そこダァァァァァぁぁぁ!!!!!)
剣山は真正面の糸ではなく、首を動かさなければ見えない左の糸に斬りかかった。すると刀が糸に当たったと同時に、全ての動いていた糸がその動きを止めた。
「ゴフッ!おぁっ!ハァ・・ハァ・ハァ・・・」
剣山は糸を通り抜け、顔から地面に着地した。腕を放り捨て、刀も消す。息を荒げながら自身の斬りつけた糸を見やる。
「やった・・・のか・・」
「あそこが・・あの子の首・・?」
「おい・・おい・・・・」
耳を押さえながら、焦りをあらわにするバクト。剣山が斬りつけた部分の糸を見つめる、虎太郎と智晴。全員が糸に釘付けになった。すると、
「何!!」「ッ!!」
一本の糸が剣山目掛けてすごい速さで近づいてきた。
「ハァ・・・ハァ・ハァ・・」
「剣山!!動け!その場所から逃げろ!!!」
「はは・・やれぇぇ!!ヤモリ!」
剣山にはもう、一瞬にしてその場から動く気力はもうなかった。下を俯き、自身の血溜まりを見つめることしかできない。
「俺の刀は・・・物は斬れるが、生き物は斬れない・・・・」
糸が目の前に迫る。
「生き物は斬れず、痛みだけが残る。斬れないんだ・・・生き物は。糸は生き物じゃない・・だがお前は・・・・まだ生き物だ・・・!」
糸が剣山の眉間ギリギリでピタリとその動きを止めた。
「糸は斬れ、お前には痛みだけが残る・・・!!」
剣山が斬りつけた部分の糸が静かな音を出し、真っ二つに分かれた。斬れた。斬れたのだ。剣山の刀が糸を切り裂いた。
「斬れた・・・・・」
「うん・・斬れた・」
斬れた糸を中心に全ての糸が吸い込まれていくかのようにその糸を覆った。すると次の瞬間。
「ガハッ・・・!!」
「・・ヤモリィ!」
糸が分散し消え、中から白目を剥いて首を押さえているヤモリが姿を表した。顔から地面に激突する。
「やっと貴様を・・・追い越せたな」
残り・401チーム
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