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俺の飼い主 僕の異能力ペット  作者: 一つの装置
怪物獣道ファング 願いを求める500チーム
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74話 千里の道も糸から

あけましたおめでとうございます!


今年も何卒よろしくお願いします!


サソリの異能力ペット、ソウルがサシミ達の前に現れた少し前。剣山は素手のまま、ヤモリと近づきすぎず離れすぎない距離をとっていた。


「勝算?キョキョキョッ!勝つ算段と書いて勝算?今のこの状況のどこを見ればそんな戯言が出てくるべや?キョキョッ!」

「なに少しだけだ。ほんの少しの勝算だ。貴様の脳天に刀が刺さる想像が頭をよぎった。それだけだ」


剣山は一度に刀を一本しか生み出す事ができない。ハリちゃんの乗っている刀が目的地についたと判断する数秒の時間を稼ぐために、自身の額を指でグリグリさせ、刀が頭に刺さったジェスチャーをしている。顔中を舐めまくっているヤモリの足を確認しながら慎重に動く。肉を削ぎ落とされた右足を引きずっているのがわかる。


「そうか!なら!」

(来た・・!)


ヤモリは四つん這いになると高速で近づいてきた。真っ直ぐは向かって来ずに、剣山の攻撃を警戒しながらジグザグとこちらに向かってくる。


「妄想しながら死んでしまえ、べやっ!!」

「真刀・・・坂出流・・・」


両者の距離がすぐそこまで迫ると、ヤモリはジャンプして両掌から糸を出した。目の前でその行動を凝視すると、投げ飛ばした刀を消し、空間から新たな刀を取り出す。そのまま右手で掴んで腰に構えた。態勢と息を整える。


「剣山ッ!」

『居合ッ!』『卍糸ッ!』


両者が自身の武器を振り切ると、ヤモリと剣山は背中合わせになった。ヤモリの掌の糸に傷は一つもついていなく、剣山の刀は細切れになっている。だが剣山の身体はどこも切断されてはいなかった。


「お前・・糸を狙ったな?俺じゃなくて糸を。どういうつもりべや・・」

「貴様は詮索する必要はない。黙って俺のために糸を出し続けろ・・」

「べや?」


剣山の切断された左腕から血が絶えず噴き出る。真後ろにいるヤモリを睨みつけると、バラバラにされた刀を消し、右手を振りかぶった。


「フンッ!」

「おっとッ!」


その途中で新たな刀を生み出すとヤモリに斬りかかる。だがヤモリはその場でしゃがんで攻撃をかわし、すぐ側にあった木に登った。


「まぁいいべや!お望み通りッ!降り注げ!」

「ッ!」


ヤモリは口角を上げ木に掌を叩きつける。すると木から数本の糸が現れ、剣山にものすごいスピードで突撃してきた。


「キョキョッ!『卍糸』」

「ありがたい・・・!」


しかし一直線に突っ込んできた糸を、剣山は一本一本的確に、そして確実に、少ない動きでかわす。糸はそのまま勢いを殺す事なく全て地面に突き刺さった。


「流石に読まれたか。まぁ当たらなくても一向に構わねーべや!このまま糸を出して当たるまで!お前がバラバラになるまで!樹皮から糸を!糸から糸を!出して出して殺してやる!」

「・・・・・」


剣山は木の上からコチラを嬉しそうに見下してくるヤモリに目もくれず、周りの糸を見回す。ヤモリが木から離れようとしたその時、


「フンっ!」

「べや?」


剣山が一番近くに張っていた糸に攻撃した。だが結果は変わらない。刀はまたも真っ二つに切断される。


「フンっ!」

「おい・・」


しかも一度ではない。何度も刀を消し、生み出し、糸を斬ろうと刀を振るう。何十本もの刀が犠牲になっていく。側から見たらただの無駄な動きである。切断されるとわかっていて刀を振るっている。


「フンっ!フンっ!フンっ!」

「お前・・さっきから何がしたいべや。糸ばっかり狙って。マジで頭おかしくなったべや?試しての通り、俺の糸を斬ることはお前の貧弱な刀じゃ無理無理べや!」


剣山はヤモリの言葉を無視しているのか、刀を振るのをやめない。一心不乱に攻撃を繰り返す。


「剣山くん、何してるの?早くあそこから離れないと危ないのに」

「アイツは意味のない事はしない。きっと何か考えがあるんだ」

「フンっ!フンっ!」


地面に鉄の落ちる音が響く。一回一回、力を、気持ちを込めて刀を上に下に、何百回も往復させる。


「なんか腹立ってきたべや。何したいかわからないし、無視するし、もう死んじまえべや!」

「剣山来るぞ!」


木に張り付いていたヤモリが顔を顰めて右手を握りしめる。すると剣山がずっと斬りつけていた糸から二本の糸が現れ、剣山に向けて突っ込んできた。


「・・・・・・」

「なっ!」


しかし剣山は顔色一つ変えず、その場で屈み攻撃を避ける。真上の糸が二本とも揃って地面に刺さった。


「フンっ!」

「こ、こいつ・・・!」


何事もなかったかのように、真上の糸やずっと刺さっている糸に攻撃を再開させた。糸が増えたことにより、刀の生み出しの回転が早くなっている。


「フンっっ!!」

「ッ!」


力強く真横の糸に刀を振るい、鉄の音が響きわたると同時にヤモリの心臓が跳ねた。そんな様子が変わったヤモリを、剣山は見逃さない。


「やっと・・・・始まったか」

「お前、何・・何したべやッ!」


地面に落ちた刀の破片を指差しながら大声で叫ぶ。ヤモリは信じられないと首を何度も振り、口をパクパク動かす。


「お前もわかっただろ・・この刀は切断されたんじゃない・・・・折れたんだ」

「・・・・は!?」


見た目だけではわからない。しかし刀を持ち、振るった剣山にはわかる。糸に当たり折れたということが。


「は・・・?折れた?折れた?あぁ折れた。折れたぁぁぁ?は?は?は?はぁぁぁ?適当なこと・・言うなべや!!」

「貴様が現実を捻じ曲げたいのならそれでいい。そうだったとして貴様が攻撃の手を緩めるのか?まだお前の糸は俺の刀に勝ってるぞ・・!」


刀を消しヤモリに笑いかける。顔に力をいれているのか、ヤモリの潰れた片目から血が垂れていた。


「ギ・ギギ・・・!」

「どうした・・!睨みつけてるだけじゃ、俺は死なない!来いよ・・!」

「ギギャァア!」

「ッ!」「ひっ!」「ヤモリ・・!?」


木にヤモリの指が食い込むと同時に剣山の周りを取り囲むように沢山の糸がゆらゆらと姿を表す。


「折れようが折れまいがバラバラになるのは、死ぬのはお前べやぁぁ!!」

「・・・・・」


不規則に動いていた糸が一本ピタリと動きを止めると、剣山にむかって突進してきた。


「・・・・・・」

「剣山!?」


しかし向かってくる糸に対し剣山はその場で新たな刀を生み出すと、かわすどころか迎え撃つ体勢を取る。


「お前の血をもっと見せろぉぉぉッ!」

「・・・・・ッ!」


目の前まで迫った糸に剣山は力いっぱい刀を横に振るった。


「うそ・・・」「剣山・・お前・・・」

「そんなヤモリの・・糸が・・・!」

「・・・・・・・・」

「ガ・・ガガ」


刀はまた折れると思われた。しかし刀と糸が交わるとカキンと音を立て後ろの木に刺さっる。糸の軌道が変わったのだ。剣山の握っている刀は刃こぼれがあったが折れていなかった。


「コレで俺とお前の能力は同等だ。やっと俺は、お前と同じ土俵に立ったぞ」

「認めない・・・!俺の糸に切断できない物なんてないっ!認めないべやぁぁ!!」


待機していた糸が次々と剣山に攻撃してくるが、糸を弾き飛ばし全ての糸の軌道を変える。刀の生み消しを繰り返す。糸は剣山に擦りもせず新品同然の刀に止められ、火花が散る。


「認めないッ!認めないぃぃぃ!!!」

「・・・・フッ!」


一瞬だけ糸が止んだ隙に地面に刀を突き刺し、鍔を踏み台にしてジャンプした。その瞬間に地面の刀を消す。


「認めなァガッッ!」「ヤモリッ!」

「・・宣言通り・・・刺さったな・」


勢いを殺すことなく新しく生み出した刀で木に張り付いているヤモリの額と木を同時に貫く。先程まで激しく動いていた糸がピタリと動きを止めた。


「ガ・・・ガ・・ッ!」

「チッ、まだ意識があるのか。早く気絶しろっ!」

「ガァァッ!」「耐えろヤモリ!」


両脚を木に掛け、ヤモリの額に刺さっている刀をグリグリとかき混ぜる。ヤモリの脳みそには尋常じゃない痛みが刀が動くたび襲ってきていた。しかしヤモリはどんなに深くこねくり回しても一向に気絶しない。


「・・・なんだ貴様。いいから身を任せて眠れ!死ぬほうが楽な痛みの筈だ!普通の刀ならば死んでいる!もういいだろ!貴様はここまでだ!」

「それは・・・お前・・べや」

「ッ!なに・・?」


震えた今にも消えそうな声で刀に手を添える。剣山はヤモリのその不気味さに一瞬だけ刀を抜きそうになった。


「俺はまだ・・楽しむんべや・・・・この能力で・・卍糸で・・・まだ殺したいんべや・・・満足してないんべや・・・!」

「!!」「糸が・・・」「雨森さん!」


なんの脈絡もなく周りの全ての糸がまた一斉に動き出す。しかしその動きは不規則で、辺りの木を切り裂いたり、ただ上空に伸びていったり、地面に潜っている糸が何百本もあった。虎太郎は智晴の前に立ち、震えた手で木刀を握る。


(なんだいきなり・・・糸が奇怪な動きを・・・)

「俺はまだ!生き残るッ!」

「ッ!!」


ヤモリが叫ぶと刀を触れていた手に力を入れた。するとパキリと音を立てて剣山の刀が折れる。赤かった手を見ると何故か少し薄く、白くなっていた。突き立てていた刀を折られた為、剣山の体制が傾く。


(こいつ、素手で折ったというのか!貴様の糸とほぼ同じ切れ味なんだぞ・・!それになんだ・・腕まで白く)

「剣山!そいつから離れろ!何かする気だ!」

「チィッ!!」


木を力強く蹴り上げ、虎太郎の元に吹っ飛ぶ。不安定な場所で体勢を戻すことができず、地面を転がった。


「ハァ・・ハァ・・ッ!またか・・・貴様・」

「何・・・アレ」「・・・・まだ戦えというのか・・・」


ヤモリの額に刺さっていた刀の破片が細かく刻まれ落ちる。ヤモリの張り付いていた木もバラバラになっており、そこにいたのは、


「ギ・ギ・ギギィィ!ギィ!ギ・!」


身体全体が細い糸になっていたヤモリだった。上半身から下半身にかけて順番に糸になり、その場で動き回る。一本一本は白い糸だが形はさっきまで頭を貫いていたヤモリだった。周りの全ての糸が結び合い、ヤモリの身体を形成している。糸で出来たヤモリが地面に自分の足を形成しているうちの糸を二本突き立てて、空中に浮いていた。糸からヤモリの声が響き反響しあっている。








「貴様また成長したのか・・自身の身体まで糸にする能力に・・・成長したのか・・・!!」

「ギョギョギョギョッ!ガ・・ガガッ!」








『卍糸化』




残り・402チーム



ありがとうございました!


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