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俺の飼い主 僕の異能力ペット  作者: 一つの装置
怪物獣道ファング 願いを求める500チーム
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72話 切断面の巧妙

お久しぶりです。


お久しぶりすぎるかも知れません状態だこの野郎!


すみませんでしたぁぁ!


サシミの断末魔が辺りに響き渡った。涙と血が交じった血溜まりにサシミの顔が映る。逆立っていた毛は垂れ下がり、目は焦点があっていない。自分自身の顔とは思えない顔がそこには写っていた。


「ガッ!ガァァーーーーッ!いでぇぇーっ!クソジジィがァァァァァァァァァ!!」

「そんな状態で!ダメだっ!」

「・・・言葉の意味もわからんか・・それとも痛みで脳が低下したか?」


血を吹き出させながら立ち上がり、こちらを見て嘲笑っている銀に突進する。


「グゥッ!!」

「サシミ!」

「なぜ動くかのぉ。今のこの状況では攻めずに距離を取るべきじゃろ?」


しかしその勢いは銀には届かない。疲れと痛みが身体にのしかかり、2、3歩踏み出しただけで顔から地面にダイブした。


「我慢は大事じゃよ・・・それが長生きの秘訣じゃ・・・」

「ガァァァァァァァッ!!!」

「ッ!」「でちゅ!?」「・・ホウ?」


サシミはコチラを見下してくる銀を一瞥すると大声を張り上げ、上体を片手で起こし上げる。牙を剥き出しながらそのまま思いっきり顔を地面に叩きつけた。


「ハァ・ハァ・・・・自分の手を切られて・・我慢できるほど、だだっ広い心は持ってねぇぇぇ!!」

「ッ!」


勢いよく立ち上がると鼻血を出しながら、再びサシミが銀に突進をかます。血だらけの顔が更に怖さを引き立てている。


(まだ向かってくるのかッ!どこにそんな力が残っている!あれだけ盛大に動いていたのだ。もう限界の筈じゃ。本物の阿呆か此奴ッ!手が切断された奴がやる行動ではない!)


焦った銀は一歩後ろに後退りながら、サシミの顔を覆う為に翼を近づけた。


「プゥッ!」

「なっ!?」


するとサシミは口をモゴモゴ動かすと銀の顔目掛けて自身の折れた牙を飛ばす。銀は突然の出来事で、近づけていた翼の動きを止めた。


「ガァッ!」

「・・・・・」


牙は勢いを殺すことなく銀の大きな左目に刺さると思われたが銀が咄嗟に目を閉じた為、まぶたに鋭く尖った牙が刺さる。片目を閉じたその隙をサシミは見逃さなかった。


(此奴・・・歯を折るために顔を地面に叩きつけたのか・・・・付け焼き刃の飛び道具を即座に作りよった・・・!)

「ガァァァァァァッ!」

(血が・・・・!)


切断された手からは血が止めどなく吹き出す。その痛みを、大声を張り上げて掻き消そうとするが全く持って意味がない。激しい痛みが向い風とともに襲ってくる。それでもサシミはいつもより一回り小さい拳を怪物化させ、怯んだ銀の頬目掛けて振るう。


「ぐうっ!」

「・・・・・」


頬に拳が減り込む。サシミは力を更に加えて押し飛ばそうとした。銀の体がのけぞっていく。


「・・・・ヌルいパンチじゃのぉ・・・」

(きいて・・・ねぇ・・!)


しかしそれ以上銀が動くことはなかった。のけぞっていた体をサシミの拳と共に押し戻し、くちばしを吊り上げる。鋭い鉤爪を地面に立てて離そうとしない。


「忘れたのか?お主は若返っている。力も若返り弱くなっている。あんなに大きくなっていた手も今やワシの顔より少し大きいくらいじゃ。切断された痛みのせいで力をコントロールできておらん。それに私は今黄金期じゃ。31歳6ヶ月19日目16時5分32秒経過。体格も力も最も輝いていた時。弱くなったものと強くなったもの・・・後者が勝つに決まっとるじゃろ・・・?」

「ッ!」


まぶたに刺さっていた牙を払いのけると翼を広げて颯爽と飛び上がる。


「ホウッ!」「うおっ!!」


すると銀は間髪入れず、未だに突き出していたサシミの左腕に乗りかかった。腕は銀の体重に耐えられず地面に押し付けられ、サシミもうそれに続くようにその場に倒れこんだ。銀がサシミの腕に乗りサシミを見下げる形になる。


「ワシを殴ったのはこの手かぁ?」

「ーーーーーーーッ!ガァァァッ!」

「サシミンッ!」「サシミィィッ!」


銀が不敵に笑うと次の瞬間、鉤爪が減り込み、腕を締め上げた。ゴキリと音を立てたかと思うと、更に強く鉤爪を減り込ませる。ゴキュリ、ゴキュリと骨が砕ける音とサシミの断末魔が響き渡る。


「卵もりんごもフライパンもお主の腕さえもワシの足にかかればハンバーグじゃ」

「アァァァッ!!!


サシミの骨を粘土のようにこねくり回す。足を動かすだけで骨が砕ける。


「このままじゃ!サシミンが!!」

「・・・・・やめろ・・」

「ただしん・・?」「澤畑くん・・?」


握り拳を作ると、棒立ちをしていた禎は銀に向かって走り出した。


「ホウッ!」「アァァッ!ガァァァァァ!!」

「・・やめろ・・!」


体重を更に加えると、サシミが叫ぶ。腕は内出血しているのか青黒く変色していた。

その様子に禎は怒りをあらわにし、足をはやめる。


「やめろぉぉ!!」「ホウ?」「ただ・・し・」


銀が禎と肩に乗っているハリちゃんを確認した時にはすぐそこまで迫っていた。銀を睨みつけ右拳を振り上げる。


「サシミにこれ以上!手を出すなぁぁっ!!」


銀に飛び込み、殴りかかった。その拳は恐怖で震えている。


(なんじゃこの下手糞な大振りは・・・頭、胸、腹、足、股間・・・隙がありすぎて少なくとも5回は殺せる。じゃが・・・この童に手を出す必要はない・・・」

「グガァッ!」「うわっ!」「でちゅっ!!」


最後に全体重をサシミの腕に乗せると翼を広げて飛び上がりだの攻撃を華麗にかわした。涼しげな顔をしながら銀は将也のそばに降り立つ。


「ハァ・ハァ・・サシミ!!」

「・問題ねぇ・・・右手は切断されて、左腕の骨は粉々にされて動かせないがぜんっぜん!問題ねぇ・・・痛くねぇ・・」

「嘘つくなでちゅ・・・!このままじゃ!死んじゃうでちゅ!!」


サシミの身体はボロボロになっており、『問題ない』と呟いてはいるが全く説得力がない。


「そこの小娘の言う通りじゃ。今は強がらず動くな。ここでお主は殺さんと何度も言っておるじゃろぉ?もう白旗を上げ、ワシの能力で赤ん坊に戻ることが唯一お主に残された選択じゃ。その使い物にならなくなった両腕もワシの翼やくちばしのように元に戻せる。本当にお主はここまでよく頑張った。ワシも一瞬だけじゃが肝を冷やしたよ・・死に場所がここでは実に勿体ない。だからのぉ、大人しくワシの翼と交わり・・・ヤモリと戦って死ね・・」


翼を前に掲げ、ゆっくりと、倒れ込んでいるサシミに近づく。


「グッ!ガァァァァァァァァッ!」

(何じゃ・・・?)

「ッ!?ダメだ!!今動かしたら・・!血が・・ッ!」


サシミは銀を一瞥し、血を吹き出させながら、顎と肩を使ってよろよろと立ち上がる。すると一歩ずつ踏みしめながら銀に向けて歩みを進める。


「問題ねぇって・・・言ってんだろ・・・ジジィはここでぶっ倒す・・」

「何言ってんだよ!!そんな体で・・無茶だ!!」


いつ倒れてもおかしくない状態で禎の叫び声を背にフラフラ歩く。


「今はあいつに従おう!!あのヤモリと戦えば・・!まだチャンスは!「お前・・・俺に約束を破れって言うのか・・・・」・・・ぇ・・?」


歩みを止めるとサシミは振り返った。目は半開きになっていたが、鋭さは健在だった。まだ諦めていない。そんな目である。


「拳まで突き出してした約束を・・・自信満々に信じろって言った約束を破れってのか・・・!!」「ッ!!」






『僕はサシミを信じる!僕とお前で・・・この山を占領している異能力ペットを倒すぞ・・!』


『・・・・へっ!ノミの心臓だったお前が一丁前にカッコよく言うようになったじゃねぇか。もちろんだぜ』



そのままサシミは向き直り、同じく歩み寄ってくる銀を睨みつけた。


「お前が許しても俺が許さねぇ・・・もう後がねぇんだよ・・ここでコイツを倒さねぇと、ヤモリの時みたいに逃げちまったら・・ただのホラ吹きになっちまう・・」


態勢を低くして、ボロボロになった牙を剥き出す。少しだけだが口角も上がっていた。


「これは俺のプライドだ・・・約束を守れるチャンスが目の前にあるんだぜ・・お前が信じた約束を!!俺は死ぬ気で守り抜くッ!!」

「ちょ!サシミン!何のことでちゅか!?」

「・・・・・・」


唸り声を上げながら、サシミは走り出す。一歩前に踏み込んだだけで血が吹き出す。もうサシミの目は霞んでおり、銀が白い塊にしか見えなくなった。


「最後の忠告はしたぞ?今の痛みだけで、赤ん坊に戻してやろうと思っていたのに・・・両足まで使えなくしないといけないとはのぉ・お主の同意はもう聞かん。無理矢理でも、ヤモリの元まで連れて行く・・大量出血と痛みで死んでいなければの話じゃがなぁ!!」

「グラァァァァァッ!」


銀も飛び立ち、翼を広げ地面スレスレで低空飛行しながら、サシミに近づく。


(クソっ!血が止まらねぇ・・・足で攻撃すれば掴まれて左腕の二の舞だ・・それなら・・)








『ナグレ・・・』








「ッ!」


すると、身体全身に、脳裏に、痺れる声が聞こえた。片言な野太いサシミに似た声でハッキリ「殴れ」と語りかけてきたのだ。その声が聞こえたと同時に手を切断された右腕が無意識に攻撃をする構えをとった。何かに操られているかのように勝手に腕が動く。切断された断面がよく見える。


「あぁ、そうだよな・・!何だかわからねぇがオレも同じことを思ってたぜ・・・やっぱりぶん殴らねぇとなぁ!!」

「誰と会話してるんじゃ?殴る?その腕でか?ホホウッ!コイツは傑作じゃ!!」


鉤爪を大きく広げながら地面に食い込ませる。翼を掲げ突っ込んでくるサシミを嘲笑う。


「テメェはぶん殴って倒す!歯ぁ食いしばりやがれェ!!」

「気合でどうこうできるとでも思っておるのか?そんなの現実では通用せん。少しは大人にならんかぁ!」


翼を前にかざし、走る勢いを止めないサシミを待ち構えた。


「サシミン!ダメでむぐッ!」

「・・・・・ッ!」


その様子に焦ったハリちゃんが叫ぼうとしたが、禎がハリちゃんの口を塞ぎ、息を大きく吸い込むと、


「負けるなぁ!サシミィィ!!僕はお前を信じてるぞぉぉ!!」

「ッ!」


とても大きな声で叫んだ。真剣な顔でサシミを見つめる。


「信じたところで無駄じゃ!ワシの翼の方が速い!それにそんな役立たずの腕で殴られたところで!大したダメージにはならんわ!」


しかしその声も虚しく、翼は伸びていく。両者の息がかかるところまで近づいていた。あと数秒で翼が顔に触れる。


「覆った!!お主の負け・・・・ホ・・ウゥ・・・・?」


しかし、翼はサシミの顔の前でその動きを止めた。銀は信じられぬ物見るようにサシミの右腕を見つめる。


(なんじゃ・・アレは・・ワシは一体・・・何を見てるんじゃ・・)


サシミの切断された腕の断面の骨から白く細い枝のようなものと赤い糸のようなものが這い出てきた。その白い物体は骨と同じ太さになると、先端が五つに分かれる。赤い物体はそのままの細さで伸びていく。その物体達は紛うことなき、サシミの骨と血管だった。


(まだ触れていない・・・ワシの能力は使っていない・・・!!)

「何・・アレ・」「・・・動いてるでちゅ・・」


今度は断面の肉が沸騰したかのように動くと、這い出てきた骨と血管を覆い始める。断面の皮が肉を更に覆う。毛が一本、また一本と皮から生え、サシミの身体と同じ焦げ茶の色合いになる。


(骨が・・肉が・・毛が・・・!!戻ったのではない・・此奴・・・・・・・!)

『猫ぉ!!(パンチ)ィィィィッ!!!』

「グガァァァァァァァァァァァッ!!!」

「ギ、銀ッ!」


再生した。切断されたはずの右手が元通りに、いや、新品以上に綺麗になっていた。間髪入れずにサシミは元に戻った右拳を握りしめ、怪物化させると銀の顔面を思いっきりぶん殴った。銀は自分の顔より遥かに大きくなった拳に抵抗することも、踏ん張ることもできず、将也の真後ろまで吹き飛ばされる。


「ガフッ!ゴホッ!」(意味がわからん・・何故ワシが殴られる・・それに何じゃあの腕。ワシの能力ではない。ワシの能力であれば、切断された手が本体にくっつくはず・・手が腕から生えることはない!再生することはない!ならば・・・アレは一体・・)

「おい・・クソジジィ・」

「ホウ・!?」「おい・・嘘だろ・・」


追い討ちをかける、信じられない光景が銀の目に止まった。何かが擦り合う音がすると、粉々に骨が砕かれていた左腕を、サシミがグルグルと大きく回していたのだ。左腕の折れた骨まで再生している。


「お前さっき言ってたよなぁ?大人になれって・・・コレで俺は少し大人になれたよなぁ?『成長』したんだからよぉ」

(間違いでも、気のせいでもなかった・・・血が止まったのも、骨にヒビが入っていたのにアレだけ機敏に動けていたのも・・成長途中・・だったのか・・ワシのクチバシを割るパワーに、切断された手まで元に戻す再生能力・・・・)


ボロボロだった牙も綺麗に生え揃えられていく。放心状態の将也を無視して、銀に向かって歩みを進める。


「化け・・物・」「・・・・・」


銀が割れたクチバシを庇い、後退りしながら『化け物』とそう呟いた瞬間、サシミは足を止めた。全ての牙が口の中から見えるほどにサシミは満面の笑みを浮かべる。しかし牙が不気味に光るその顔は悪魔そのものであった。


「化け物?なんだそのブサイクな呼び名。俺はなぁジジィ・・・・・・・・









怪物だ・・・」


異能力ペットの能力は成長する。善も悪も、差別せずに成長する。









それがたとえ怪物でも。







残り・402チーム




ありがとうございました!



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