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俺の飼い主 僕の異能力ペット  作者: 一つの装置
怪物獣道ファング 願いを求める500チーム
75/93

70話 刀は投げられた

お久しです!


忙しかったんです!


お願いします!

少し時は戻り、糸が木や床に辺り一面に張り巡らされている、暗闇の中、


「ここべや!チッ!また違うべや・・・」

「もっと下を狙えヤモリ。座ってるかもしれねぇからな」

「・・・・・」「ちゅぅ・・・」

 

その中心には片方しかない目を剥き出しながら注意深く周りを見渡しているヤモリと、その場で震えているハリちゃんが立っていた。ヤモリは隠れた剣山を探すために近くに生えている木を一本ずつ、掌から糸を出して横に切り捌く。ハリちゃんは動けばいつ糸に切り裂かれるかわからず、その場から動けずにいた。






(・・・・・どうする・・ハリヤマの針が使えるようになるタイミングで一斉攻撃を仕掛けるか・・・だが、まだ時間が・・・・グッ!)





少し離れた木の裏に隠れた剣山は刀を地面に刺し、切られた左腕を強く抑える。この絶望的な状況からどうやって勝つか。解決方法が見つからないまま、数分がたった。一本、また一本と次々に木が糸によって切られていく。木が倒れる音が制限時間のように剣山の頭を駆け巡る。


「あのさー着物の犬、流石に飽きてきたべや!俺ってさぁ興味ないことはとことん興味ないんべや。初めてかくれんぼをしたけど、鬼がこんなに楽しくないとは思っても見なかった!べやっ!」

「ッ!」


剣山の横に生えていた木が、二本同時に切られた。木が倒れるとその木の枝が折れ、顔に擦れて血が頰から垂れる。


「それに比べて鬼ごっこは面白いべや・・!かくれんぼと違って、強さがモノを言う。弱い奴はただ、焦った顔で追いかけ、怯えた顔で逃げ惑う。今やっているゲームとそっくりべや!それだけでも最高なのに、このゲームは殺せるときた!なんて楽しいゲームべや!早くその楽しいゲームに戻そうぜ?着物ぉぉっ!」

「・・・・・・・・」


大声でヤモリは叫ぶと木を切り倒す。しかしその木に剣山の姿はなかった。ヤモリが倒した木は、剣山が隠れている真反対の木だった。


「またまた違う・・!ならこれべや!」

「・・・・・」


ハズレだとわかるや否やヤモリは乱暴に木を切り倒し始めた。しかし一向に剣山が隠れている木を切り倒すことができない。


「違うぅ!コレも!コレも違うーー!」

「ヤモリ・・」

「・・・・・」


斜めに木を切り裂くが剣山は現れない。するとヤモリは大きくため息を吐き、空いている手で顔を掻き始めた。


「早く・・・出てこいよ・・・早く・・・死ねよ・・・じゃないと・・禁断症状が出ちゃうべや・痒い・身体が痒くなってきたべや・・!」

「おい、落ち着けって・・完璧に倒すんだろ?お?」

(なんだ・・アイツ・・・)


掌の糸をしまうと、今度は両手で顔を掻いた。しかし、その行為は顔だけでは飽き足らず、首そして体も掻きまくっている。その様子にバクトは心配そうに声を掛けた。


「それにしても限度があるべや・・・もう三十分べや・・・俺は三十分間、誰も殺してないんべや・・・!日に日にこの禁断症状が出るスピードが上がっていっている気がする。早く、早く殺さないと・・・早く命のやりとりをしないと・・俺は!」

「そ・そこまでして!殺さないとダメなんでちゅか・・・!」

「ハリちゃん!?」

「べや?」


ハリちゃんはヤモリを睨みつけていた。しかしその目は全く怖くない。しかし怒っているのはわかる。


「殺すなんて・・絶対にやっちゃいけないことでちゅ!!」

「そんなの、言われなくてもわかっているべや・・」


大声で訴えかけるハリちゃんに対し、ヤモリは当たり前かのように素っ気なく応えた。めんどくさそうに。


「じゃあ、何ででちゅ・・」

「殺さないと死んじゃうからべや・・!」

「ッ!」


顔に指を貼り付けながら叫ぶ。フラフラと歩きながら、くり抜かれた目の中から血を垂れ流す。


「見てわかるべや?今身体中、痒くて痒くて仕方ないんべや・・でも殺したら、この痒みもなくなるんべや!全部!バクトのおかげべや!」

「ちょ!お前!!」


叫んだ事で目から大量の血が噴き出す。突然の発言に、バクトは目を見開かせて、目線をヤモリに合わせた。


「俺は野良だったべや。何の面白味もない生活を、死ぬまで送ると思ってたべや。でもバクトに会って変わったべや・・!」

「おい!黙れヤモリ!」

「・・・・・」


焦りをあらわにしているバクトに口を押さえつけられているが、ヤモリは喋り続ける。


「コイツが人を殺しているのを見て、生きる楽しさを知ってしまったんべや!!」

「で・・でちゅ・・!?」

「人を・・・殺した・!?」

「・・・・・・」


ヤモリのカミングアウトに、辺り西沈黙が広がった。風の音だけが鮮明に聞こえる。


「堪んなかったべや!殺された奴の表情、息遣い、抵抗、全部今までなかった興奮が、感情が、雷に撃たれたみたいに輝いたべや!!俺も殺したい。殺さないといけない。そう思った瞬間に、異能力ペットになってたべや!コレは運命べや!殺せって能力をくれた奴からのメッセージべや!」

「何言ってんだ・・・ゴホッ!」

「有意義に生きてきた奴にはわかる訳ないべや・・・だから、お前らみたいな奴をこの糸で殺しまくってやったべや。師に手伝ってもらってな・・・」


まるで自分のことのように、バクトの犯した罪を嬉しそうに話すヤモリ。だが未だに身体全身を掻き毟っている。


「10人殺した辺りでこの痒みが襲ってきたべや・・・・抑えることは出来なかった。だが後悔はない。どんな事にも犠牲はつきもの。わかってくれたべや?俺は殺さないと、死んじゃうんべや。コレは俺の、食事べや・・」

「食事・・・・」


口を大きく開け、舌を震わせた。よだれも垂れ、物欲しそうに虎太郎達を見つめている。


「クッソ!何で言うんだよ!俺の完璧をかき乱すんじゃねぇ!!」

「言っても構わないべや。どうせここで殺すんだからっ!!」

「ダメでちゅ!」

「べや?」


ヤモリと同じように、バクトは叫びながら自身の髪を掻き毟る。するとハリちゃんが口を開いた。ハリちゃんはいつ襲われるかわからない恐怖からか、涙を流しながら顔を伏せている。


「それでもダメなんでちゅ!!殺したら!死んじゃうんでちゅよ!!殺すとか殺しとか!そんなこと言うなでちゅー!!」

「・・・・・・・・・」

(なんだ・・・急に静かに・・)


それでも叫ぶのをやめない。ヤモリはハリちゃんの声が耳に入り、掻き毟っていた手を止める。口を開けながらハリちゃんに向き直った。その顔は徐々に笑顔になりつつあった。


「じゃあ・・・・それは死ねって、俺に言ってるんべや・・・・?」

「違うでちゅ!!楽しく生きる方法なんて他に山程あるでちゅ!馬鹿みたいな誰かが不幸になる一つの偽物の楽しみを見つけて、本当の楽しいことを見つけてないだけでちゅ!!


苦笑いしながら、ハリちゃん一点を見つめる。息を荒げながら、心から思っている言葉をハリちゃんはヤモリにぶつけた。


(もう隙ができるとかどうでもいいべや・・殺せるなら関係ない・・・それに・・・このハリネズミ・・・・・・うるさいべや・・)


自分の今までやってきたことを否定したハリちゃんに掌をかざしながら、一歩前に踏み出した、次の瞬間、






『ニャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーッッ!!!!!』



「ベヤッ!?」「っと!びっくりしたぁ!」

「何!?どうしたの!?」

「・・・・・コレは・・」

(この・・・声は・)





更に高い山がある方角から聞き覚えのある声が、山全体に広がった。ヤモリは何が起こったのか理解できず、その場でたじろいでいる。


「サ・サシミン・・・・?サシミンでちゅ!サシミンの声でちゅ!」

「あの猫・・!何がしたいんべや。ただ居場所を教えてくれただけべや!覚えたべや・・!」


ハリちゃんは驚きながらも嬉しいのかその場で何度もジャンプをしており、ヤモリは声のした方角の山を凝視する。




(大方、喉でも怪物化したのだろう。だがなんだ・・・いつにも増して酷い断末魔だ・・かなり遠くにいるようだが、胸に響く・・・)


剣山も同じく、座りながら横目でチラリと山を見る。


(しかし、コレはチャンスだ・・サシミの声に気を取られている今が、アイツの首に刀を突き立てれる、絶好の機会・・・・)


今度は身を乗り出し、木の裏からガラ空きなヤモリの背中を見つめた。刀を握りしめ、タイミングを伺っていたその時、





『ケンザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンンンッッッッ!!!』

(ーーッ!)


サシミが剣山の名前を、さらに大きな声で叫んだ。その瞬間剣山は心臓が勢いよく振動するを感じた。


「あぁ?何叫んでるべや?あの猫。意味不明べや」

「・・・・・なんでケンケンを・・」


全員が何故剣山の名前を叫んだのか、呆気に取られている中、


「ッ!おいヤモリ!」

「べや!?やっと出てきたべや!!思ってたより近くにいたべや!」


剣山が勢いよく、隠れていた木から出てくると、その勢いを止めずに走り続ける。ヤモリはこのチャンスを逃すまいと、しまっていた糸を掌から出す。


「剣山!」「剣山くん!?」「ケンケン!!」

(馬鹿か俺は!!何故動いた・・!何故声のした方に走っている・・!ヤモリを無視して、俺は一体何をしているんだ・・・!)


剣山の身体が勝手に動く。自分でも理解できていない様子だった。ヤモリに斬りかかるわけでもなく、サシミの声がした山に向かって足を動かす。


「ハリヤマ!来い!!肩に乗れ!」

「で、でちゅ!」


剣山の口が勝手に動く。ハリちゃんはその声に反応すると剣山を追い、肩に飛び乗った。


「逃げる気べや!?そんな身体で、逃す訳ねぇべや!!」

「剣山!後ろだっ!!」

「ッ!」


ヤモリが地面に手をつくと、糸が地面から湧き出てくる。その糸達は何の迷いもなく剣山達を追いかける。


「ソッ!!」

「捕まれッ!」「でちゅー!」


間一髪のところで大木の裏に飛び込み、頭を下げる。木は真っ二つに切断され、剣山が走る方へ倒れた。倒れた大木がいい感じに盾となっている。



「どうしたんでちゅか!?ケンケン!何処に向かって走ってるんでちゅか!?」

「サシミが・・・危険な状況かもしれん・」


身体を低くした体制のまま、走り続ける。すると大木から何本もの糸が、真っ直ぐに突き抜けてきた。しかし、糸は剣山のスピードに追いつけていない。


「でちゅ!?サシミンが!」

「アイツ、俺の名前を叫んだ・・・・嫌々と言った感じだがな・・・プライドを捨て、助けを求めたんだ。この俺に・・・・だが俺が、あの先行した阿呆を助けると思うか・・」

「じゃあ!何でサシミンがいる方向に走ってるんでちゅか!!」

「・・・・・さぁな・・」

「でちゅ・・・・・?」

「俺にもわからん・・・何をしているのか・・・わからない・」

「・・・・・」


今こうして、ハリちゃんを肩に担ぎ、ヤモリの糸を反撃をせずに避けながら、走っていることに、本人も疑問を隠せずにいた。


「身体が勝手に動いた。動かずにはいられなかった・・・サシミが俺の名前を叫んだ時、重い腰が上がった・・・力なく声が響いた時、走り出していた・・・自分の身体なのに・・制御できないみたいだった・・・なんなんだ・・・コレは一体・・・」

「そんなの簡単でちゅ!」

「・・・何」


肩から身を乗り出し、ハリちゃんは剣山の顔を覗き込む。自信たっぷりに目を輝かせていた。


「サシミンを助けたいって、ケンケン自身が心の底から思ったんでちゅよ!!」

「なんだと・・・?」

「ケンケンがハリを庇ってくれた時と同じでちゅ!ハリもサシミンもケンケンも一緒に同じ敵を倒す仲間で友達なんでちゅ!仲間同士、友達同士、助け合うもんでちゅ!ケンケンも助けたいって何処かで思ったんでちゅよ!そうでなきゃ、身体が勝手に動くなんておかしいでちゅ!魔術でちゅ!」


今度は肩の上で短い腕を組みながら、自分の言ったことに納得したのか頷いている。剣山は顔色一つ変えず、冷めた目で自信たっぷりなハリちゃんを見つめる。


「ハリヤマ、決定的な理由になってないぞ・・」

「そ、そんなことないでちゅ!!」

「まぁ、拉致があきそうにないから、今はそういうことにしておくか・・サシミには後で泣きながら感謝の言葉を言ってもらうとしようっ!」


長かった大木の盾もついに無くなり、糸が目の前に迫ってきていた。すると今度は刀で近くにあった木を斬り倒し、新しい壁を作る。先程と同じように糸が木に突き抜けていく。


「チィ!」

「何戻してんだよ!!早く次の糸をだせよ!!」

「木が邪魔で、狙いが定まらないんべや!」


ヤモリは一度掌の中の糸と、地面から湧き出した糸を戻す。すると逃げられると焦っているバクトに叱られる。なかなか殺されないイラつきと、痒みで、ヤモリとバクトはかなりギスギスした雰囲気になっていた。コレを見過ごさなかった剣山。スピードを更に上げた。



「それで・・!どうするつもりなんでちゅか!?サシミン達のとこまで全力ダッシュでちゅか?」

「きっと、山を一つ挟んだ先にサシミ達はいる。糸が張り巡らされている山を数秒で超えられればいいが、そんな非現実行為確実に無理だ・・・・だから・・」


唾を飲み込み、手を前に掲げ、鋭い目で握っている刀を見つめた。


「コレを投げる・・・サシミを襲っている者に向けて・・」


更に刀を強く握ると手を下ろし、走ることに集中した。


「でちゅ!?投げる!?さっき山を一つ挟んでいるって言ってたちゅよね!?それこそ!確実に無理でちゅ!」

「まだマシだ・・・それに、確信もある。ヤモリに腕を切られたおかげで、片腕だけに全ての力を預けることができるのだからな・・・サシミのいる場所もわかった。山形に投げれば・・・・いける・・」


剣山が覚悟を決めた表情をしていると、肩に違和感を感じた。ハリちゃんが掴んでいる手に力を加え、小刻みに震えている。


「どうした?」

「・・・・・ハリも・・サシミンのところに行くでちゅ・・!」

「・・・・」


ハリちゃんも剣山と同じような顔になった。戦おうとしている、そんな表情。


「今サシミン、何かに襲われてるんでちゅよね・・・もしその刀を外したら・・サシミンは死んじゃうかもしれないんでちゅよね・・だからその時はハリがサシミンを助けるでちゅ!それに・・ハリは何の役にも立ってないでちゅ・・このままじゃ!ハリはサックンが言ってた、役に立たないハリネズミのままでちゅ!」

「・・・お前が行ったところで能力半径外で能力は使えないぞ」

「・・・・・誰も助けられず。ここでアタフタしてるのが嫌なんでちゅ・・!」


ハリちゃんの目は今まで見たことのない、真剣な目であった。どんなに剣山が否定したとしても、きっとハリちゃんは決して諦めないであろう。


「ハァ、わかった。貴様がどうなろうが俺は知らん。だが、お前が戻ってくるまでちはるは守っておいてやる・・」

「ケンケン!ありがとうでちゅう!!」

「・・・やめろ・・」


表情を見て言っても無駄とわかったのか、ため息をつきながらハリちゃんの思いつきに乗ることにした。ハリちゃんは嬉しそうに、剣山の顔に抱きつく。


「ハリちゃん・・・何してるの・・」

「ちはるーーん!!」

「ッ!ハリちゃん!?」「べや?」「あ?」


抱きついた態勢のままハリちゃんは智晴に大声で叫んだ。それに、ヤモリ達も反応をする。


「ハリ!今からサシミンを助けてくるでちゅ!!」

「え!?どういう事!」

「心配しなくてもいいでちゅ!!ちはるんは安心して待っててでちゅ!ケンケンが守ってくれるでちゅー!!」

「ハリちゃん・・・うん!わかった!!」

「アイツら、何するきべや・・・」


ハリちゃんが今から何をするのか理解できていないが、智晴はハリちゃんを信じて笑顔でハリちゃんに親指を立てる。


「でちゅ・・じゃあケンケン、よろしくでちゅ・・・」

「あぁ、しっかり捕まっていろ・・!」


刀の鍔に顔を乗せ、絶対に離すまいと手に力を入れた。


「もしも糸が張っていたら迷わず刀から飛び降りろ・・誰もお前を責めたりはしない・・」

「ケンケン・・・」

「なんだ・・」

「あのヤモリができたんでちゅ・・きっと、ハリ達も成長できるでちゅ!ハリは今から成長してくるでちゅ・・だからケンケンも・・・」

「フンッ、なるほど・・」


剣山は柄の根本を持ち、投げる構えをとる。


「お前ら!なぁにをやろうとしてるんべやッ!」

「剣山ッ!糸がッ!」


嫌な予感がよぎったのか、ヤモリは両手から糸を木の盾が全てなくなった剣山に向けて発射した。


(ハリヤマの体重を加えて、少し上に、風は西向き。少し右寄りに、距離は遠い。かなり強めに、そして山形に・・・・!振るう!!)


肩から腕に力を移動させ、足を踏み切り、サシミのの声のした山、ただ一点を見つめる。そして、


「ぬぅぅらぁぁッ!」

「でちゅーーーーーーーーーーーー!」

「ハリちゃぁぁん!?」

「ッ!」

「んべやッ!!」「マジ・・かっ!」


歯を食い縛り、思いっきり山に向けて刀を投げつけた。腕の振るスピードは凄まじく、辺りに強い突風が作られる。糸によって木の数は減っており、難なく、通り抜けることができた。ハリちゃんの断末魔が徐々に小さくなっていき、姿が見えなくなる。


「クッ!」

「剣山ッ!」


投げると同時に、糸が剣山の足を掠った。肉が少し削ぎ落とされただけですんだ。しかし、その場でよろけ、左腕から大量の血が吹き出す。


「1匹逃がしちまったぞ!どうすんだ!」

「どうせ、この山から出る事はできないべや・・・俺の糸がある限り、空を飛んでもな。それに、コレでタイマンになったべや・・・だよなぁ、着物の犬・・」


焦っているバクトを尻目に、ヤモリは糸をしまい、剣山に向き直る。


「・・・・・・あぁ、足手纏いを処理できた・・・カセが無くなったのはいい事だ・だが、状況は最悪だ・・俺の能力はお前の能力と相性が悪すぎる・・」

「よくわかってるじゃねぇか!その通りべや!俺の糸は全部切ることができる。お前の刀もな!」


左腕を抑え、身体全身の痛みに耐えながらフラフラの足で立っている。


「だから・・・」

「あ?」


するとヤモリに向けて、足を動かし始めた。血が垂れている足を引きずりながら、その顔は自信に満ちている。


「お前と同じように、俺も能力の成長を試してみるとしよう・・」


ヤモリを睨みつけ、息を整えると、への字口だった口角が上がり、鋭い歯を見せた。







『ハリは今から成長してくるでちゅ・・だからケンケンも・・・』






「アイツの呟いた一言は、俺に少しの勝算を与えてくれた・・・」




剣山の尻尾は大きく揺れている。





残り・402チーム



ありがとうございました!



早めに投稿できるよう頑張ります!



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