69話 買い言葉に売り言葉
あ久しぶりです!
お願いします!!
「倒・・・せる?おや、おかしいのぉ?まだ五か月しか戻してないぞ?もっと考えて物を言いなさい」
「馬鹿に・・・するならっ!今のうちにその涼しい顔でたくさん・・言っとけよ・・テメェが老け顔になった時・・・いやと言うほど馬鹿にしてやらぁ・・・」
口角を上げながら、銀を翼の隙間から睨みつける。
「老け顔・・老け顔とな!ホウホウ!残念じゃがお主はワシを馬鹿にすることはできても、能力を解除させ老け顔に戻すことはできない」
「・・・・・・ッ!」
翼が更にサシミの顔に減り込むと、少しサシミの身体が小さくなったのがわかった。
「まぁそうじゃのぉ・・マサヤを叩けば話は別じゃが・・お主は今こうやってワシの翼の中。あそこの小童二人もひょろっちぃのぉ?十代の頃のマサヤには敵いはしない・・・つまり!詰みじゃよ。詰・み。ホウホウッ!」
そんな小さくなったサシミを見て、銀は高らかに空に向けて笑い飛ばした。
「詰みだと?知るかよんなもん・・ジジィ・・いいか・・・・俺は・・最強だ・」
「・・・ホ?」
それでもサシミは顔色一つ変えずに、足に力を入れる。
「詰んだとしても負けを認めたりしねぇ・・・将棋で詰んだら卓をひっくり返すし・・テレビゲームに負けそうになったら電源を切る・・仕切り直しさ・・・・だからこの状況も突破できる・・・!最強だからな!なんでもありさ!!」
大声を張り上げ、銀の翼を力強く掴んだ。
「意味がわからんのぉ!最強じゃと?ただの自分勝手ではないか!!」
「自分勝手だからいいんじゃねぇか!誰にも縛られず、好きに行動するってのはよぉ!最強なんだぜ?大事なのはその自分勝手の出来だ!テメーみたいな殺しをなんとも思わない、腐れ切った自分勝手は最強なんかじゃねぇ!クソだ!クソ!」
「なに・・・?」
相変わらずの壊滅的なボキャブラリーで銀に食いかかるサシミ。
「そんなクソが!最強に敵う訳がねぇ!そんなクソがこの戦いを勝ち残れる訳がねぇ!いいか、お前はここで敗退すんだよ!最後に笑うのはテメェじゃねぇ!この俺だ!!」
「その根拠のない減らず口は聞き飽きた!お主一匹に何ができる。そうやって泣き言を言いながら!お主は赤ん坊に戻るんじゃ!!」
声を荒げるサシミに対し、銀は顔を掴んでいる翼を伸ばしサシミを空中に持ち上げた。すると、
「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーー」
「・・・・なんじゃ・・息をそんなに強く吐いて・・・お主!何をしておるんじゃ!!」
「まさか・サシミ・・!」
「・・・・・」
ヤモリの時と同じようにサシミは大きく息を吸い込む。腹が膨らみ、目が見開く。翼を掴んでいるサシミの手は更に力が加わり、形がが少し変わる。
「スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーー」
「もう良い!!お主の小細工には飽き飽きじゃ!!何をしているか知らんが!!お主の負けじゃあ!!」
大きな翼とクチバシを広げて、サシミに顔を近づける。しかしサシミは今度は勢いよく息を吸い出す。
(アイツみたいに・・あのクソニワトリみてぇに・・・・・!簡単だ・・・能力の制御なんてかったるいことしなくてもいい部位があるじゃねぇか・・・やることは一つの単純な行動だ!!いける・・・いけるぜぇ!!)
目を見開き、眉間のシワが増えるとサシミは歯を輝かせると、
「ニャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーッッ!!!!!」
「な・・なんじゃあ!!み・耳がぁぁ!!」
「あの猫!うるさいッ!なんだあの能力・・!」
「うぅ・・・!初めて聞いたニャアが大音量ぉぉ・・・!」
「あぁ、マゼラブートの咆哮・・・大きいねぇ・・・」
「うーー!」
前に戦ったニワトリの能力のように大きな声を張り上げた。その声量は凄まじいもので、辺りに靡いていた風の音は聞こえなくなり、サシミの声だけが響き渡る。
(うるせぇよなぁ!ミミズクなんだからミミが良いよなぁ!!押さえろ・・!両翼で耳を押さえろ!!この翼を離しやがれ!!!)『怪物化ォォォォォォォォ!!!喉ォォォォォォォォ!!!』「叫ぶだけならぁぁぁぁぁ!!制御もクソもねぇぇぇぇぇ!!!ニャァァァァァァァァァァァァァァァーーーーッ!」
「ホウ・・ホウッ!ホウホウッ!耳がッ!耳がッ!耳がぁぁ!!」
顔を掴んでいない片方の翼で自分の耳を塞ぐ。しかし、塞いだとしてもうるさいことには変わりない。それに銀の耳は二つある。片方の耳にはまだ大音量が響き渡る。
(そうだ!離せ!力を抜きやがれ!!その瞬間に、このくっさい翼をぶん殴ってやるっ!!)
「ニャァァァァァァァァァァァァァァァーーーッッ!」
「お主ぃぃ!!まだ抵抗するか!!しつこいぞ!!」
銀は近づけていた顔を離すと、声を張り上げる。サシミは声が枯れてもなお、咆哮を続けている。止む気配が一向にない。
「ニャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーッッ!」
「ホウ・・ホウホウッ!!ホホーーーウ!!」
目は血走り、足も震えている。そろそろ限界が近づいできていた。サシミも銀も。しかし、
「ホウ・・・・ホォウ・・」
「ッ!!」
銀はなぜか、耳を押さえていたはずの翼を離した。最初は虚な顔をしていたが、どんどん顔色が良くなっていき、クチバシを緩ます。
「ホウホウ、少し、本当に少しだけ焦ったのぉ。危うくこの翼を離すところだったわい・・・」
「ニャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーッッ・・・・・!!!」(・・・・・あ・・・?なんで・・・なんで平気なんだ・・・!翼を緩めねぇ!!)
しかし、銀は顔を掴む翼を緩めず力強く握る。それどころか先程まで顔を歪めていたのに、今は平気な顔をしてサシミに笑いかけていた。禎達はサシミの咆哮に程いっぱいでそのことに全く気付いていない。
「ホウ?どうしてと言いたそうな顔じゃのぉ?なら教えてやろう。お主の叫びは今、ワシには聴こえていない!」
「ッ!」
「ワシの『老進戻支配者』は一部に使うことも可能なんじゃよ?だからワシは、聴力のみ、百二十年老化させた。一部であれば戻すのに1秒も必要ない。お主がいくら叫んでも、何言っとるかわからんのじゃよ。まさか、耳が悪いのが功を奏するとは。皮肉じゃのぉ!」
自分の耳を小突きながら、翼を大きく広げる。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!」
「ホウホウ・・?何じゃと?何言っとるかぁわからんのぉぉぉ!!ホウホウ!ホウホウ!好きなだけ叫ぶがいい!今のうちに沢山叫んでおくがよい!お主の断末魔はワシには届きはしないがのぉ!!」
サシミは声を荒げているが銀にはその声は届いていない。翼に力を加えている。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!」
「ッ!」
「ホウホウ!!王手ぇぇぇ!!」
サシミの声でかき消されているが、銀は大きく叫んだ。サシミの身体がまた一回り小さくなる。赤ん坊に戻るかと思われた、次の瞬間、
「ホ・・・なんじゃ・・・・」
「ハァ・ハァ・ハァ」
「ア・アレは・・・」
暗闇の中から何かが光ると、風を切り裂き、凄い勢いで銀の近くの木に刀が綺麗に突き刺さった。サシミはそれと同時に咆哮を止めた。ゆっくりと禎達は手を耳から離す。
「コレは・・刀・・・・着物の犬の刀・・そんなバカな・・・彼奴は山を一つ挟んだ先でヤモリと戦っている筈じゃ・・・まさか・・・・!投げたというのか・・その距離から・・・!猫の声に応えて・・・山形に・・なんてやろうじゃ・・・!」
「ハァ・ハァ・ハァ・・・」
銀は刀が飛んできたであろう方向を見つめる。剣山の刀は山と木を掻い潜り銀目掛けて飛んできたのだ。相当のパワーと命中率がないとできる技ではない。
「まぁ良い・・・透かしじゃ。どんなに力を持っていようと当たらなければ意味はない!残念じゃったの。お主達の二段仕込みはここで終わりじゃ!」
「・・・・何馬鹿なこと言ってんだジジィ・・・・」
「ホウ!悪いのぉ、耳が悪くて何も聴こえん。ほれ、今聴力を戻した。言ってみろ」
耳に翼を当てて両耳の聴力を百二十年若くすると、自身の耳を息を荒くしているサシミに近づけた。
「俺の作戦は一段仕込みだ・・・剣山が二段仕込みにしただけだ・・」
「・・・・ホウ・・」
翼の隙間からでもわかるようにサシミは顔を緩ます。息を荒くさせガラガラ声で喋りながらサシミが笑っていることに、銀は不気味に感じていた。少し、翼が震えている。
「そんでもって・・・二段仕込みじゃねぇ・・三段仕込みだ・・・」
「・・なんじゃと・?三段・・・仕込み!?」
「あぁ、そうだよ。アイツが三段仕込みにしやがった・・・」
「・・・・何を・・言って・ッ!!」
サシミは木に刺さっている刀を指差す。すると刀が音を立てて小さく揺れる。銀はその音に反応するように勢いよく振り向くりすると、次の瞬間、
「ハリちゃんでちゅーーー!!!」
「ハリちゃん!?」「おぉ!」
「うるさい・・ハリネズミッ!!刀に乗ってきたのかっ!!」
刀の裏から、隠れていたハリちゃんが刀をジャンプ台にして飛び出してきた。銀はいきなり現れたハリちゃんに驚き、攻撃されると思ったのか、サシミを掴んでいる翼の力を緩めた。
「やっと・・緩めたなぁ!」
「し、しまったッ!!ホウッ!」
サシミはこの気を逃すまいと、スルリと翼から抜け出し、右拳を怪物化させる。翼から出してしまったことに、銀は焦り、またサシミの顔目掛けて翼を伸ばした。
「ゴラァァァァァァッ!」
「ホバァァッ!」
「銀ッ!!」
しかしサシミの拳の方が速く、銀の翼を下から勢いよく突き上げる。銀は回りながら真後ろに吹っ飛んでいき、木に激突した。ハリちゃんはそのままサシミの頭に降り立つ。葉っぱと銀から落ちた羽が辺り一面に散らばっており、月の光に照らされて、とても幻想的であった。
「が・・羽が・・ワシの・・羽が・・」
「へっ!ハリヤマは能力半径外だ。なんの抵抗手段も持ち合わせちゃいねぇよ。翼の力を緩めなかったら俺を赤ん坊に出来てたかもしれねぇのによぉぉ!」
「でっちゅ!」
サシミがさっきの仕返しとばかりに、悪魔のような笑みを浮かべ、ハリちゃんがサシミの頭の上で胸を張っている。
「この臆病者がっ!」
「グッ・・!ホウ・・・・・!」
この瞬間、ハリちゃんが刀に乗ってきたことによって形勢が少しだけ逆転したのだ。
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