67話 草むらから出た錆
一週間投稿したいと思っているので頑張ります!
よろしくお願いします!!
「此奴も嬉しかろう。歳をとって絶望しながら死ぬことなく、赤ん坊まで若返り、痛みを感じることもせず、一瞬で死ねたのだからのぉ・・・・・ホホウ?これはどこの部位じゃ?ホホウ、腸か・・・・」
「・・・・・」
こちらからはよく見えないが銀が潰した大型犬の身体の一部を足で撫で回す。
「うっうぅぅ・・」「死んだ・・あんなにあっさり・・・」
禎は気分が悪くなり口を抑えヘタレ混む。万歳はその場に立ち尽くしていた。冷や汗が背中から溢れ出る。
「おーい、ギーン。心配したぞぉ!」
「ホウ!マサヤ、それはワシの方じゃ。お主が生きていてよかったわい」
そんな中、銀の側の草むらの中からぶかぶかな服を着て、サイズの合っていない靴を履いた、マサヤと呼ばれた男の子が髪に草木をつけながら出てきた。銀の飼い主である。
「ガキ・・・?」
「失礼じゃのぉ猫よ。わかるじゃろう?ワシの能力で70年時を戻しておる」
「そいつも・・・ジジィかよ・・」
腹を押さえながら、サシミは顔を引きつらせる。先程叫んだ事で、折れている肋骨を痛めていたのだ。
「・・なんで・・・・・」
「ホウ?」
「なんで殺したんだ・・・殺す必要なんて・・・!」
放心状態だった禎が震えながら銀に問いかけた。まだ口は押さえており、顔色も悪い。
「みくびるなよ、人間・・・」
「ッ!」
銀は大きな翼を羽ばたかせ飛び上がると、一気に禎達の前に降り立ち、禎に顔を近づけた。目の眼光は鋭く光り輝き、優しい声質で応える。
「ワシらの世界は弱肉強食。食うか食われるか。生きるか死ぬか。殺すか殺されるか。ただそれだけじゃ。お主らのぬるい世界と一緒にするな。お主ら人間の作った綺麗事を何故ワシらが守らなければならない?子供っぽいかもしれんが、ワシら動物がお主ら人間の考えに賛成したか?印を押したか?ワシらの言葉がわかっていたのか?お主らのものさしでワシらを語るな・・・勝手に人間の世界にワシらを巻き込むなよ・・・・まぁ、一部の動物は賛成らしいがのぉ・・」
「貴様・・・ッ!」
「フンッ!」
「ガボッォッ!」
折れていない左手で食いかかろうとしたサシミを銀は顔に向けて足蹴りをかました。サシミは鼻血を垂れ流しながら木に激突する。
「サシミィ!!」
「ワシらが人間に危害を加えないのは危害を加える必要ないからじゃ。関与するには必ず理由がある。気分、関係、富、食、衝動、そして願い。願いがあるからワシは此奴を殺した。ただそれだけじゃ。これだけは覚えておけ人間・・・ワシらペットや動物はいつだって・・・
人間の首を掻っ切れる・・!」
「ッ・・・!」
そう言うと銀はクチバシの口角を上げながら優しく禎の頰を撫でる。こそばゆい感覚より遥かに不気味さの方が勝っていた。
「だからのぉ人間?ワシらを・・・・・ふんぞりかえって見下してんじゃねぇよ・・・」
「〜ッ!」
「ジィィジィィィィィィィィィィ!!」
激突した木を怪物化させた足で蹴り上げ、すごい形相で銀に殴りかかる。
「ドリャアッ!」
「ホウッ!」
「グッ!!」「ぬおッ!」
銀は禎から翼を引くと空高く飛び上がり、サシミの攻撃をかわした。サシその怪物化していた拳は地面にめり込み、辺りにすごい風圧を起こした。禎達はその勢いに耐える為、顔を腕で覆うている。
「ハァ・ハァ・・」
「ホホウ、随分とお疲れのようじゃのぉ?どれ、そろそろお主を赤ん坊に戻すぞ・・」
最もでかい木の枝にたくましい足を乗せると、息を荒くさせているサシミをみつめた。同じようにサシミも銀を見つめる。
「聞かせろよ・・・」
「・・・何をじゃ?」
「お前の願いだ・・」
首がおかしくなるんじゃないかと思うくらい首を傾げさせると、銀は優しく微笑んだ。
「そこまでするお前の願いはなん「お主は今3秒歳をとった・・・」・・・あ・・?」
翼をサシミに向けて広げる。怪しく、月に銀の身体が映る。
「6、7、8、ほれ、今で10秒お主らは歳をとった。じゃがワシは違う・・・『老動戻支配者』の能力を永久的に自分にかけておる。だからワシは1秒たりとも歳をとってはいない」
「何言ってんだお前・・・」
翼を器用に動かしまるで手のように軽やかに動かしていた。
「歳をとればとるほど実感するという事じゃ・・歳には勝てないと、健康が一番と、そして・・死にたくないと・・」
銀は次の瞬間、その翼で自分が立っている木に触れ、月を見上げる。
「だからこそ、この能力を手にしたときは嬉しくて仕方がなかった!永久の若さを、ワシはてにいれたのだからのぉ」
触れられた木はみるみるうちに、葉が落ち、樹皮が剥がれ始めていた。銀が能力で木を老化させている。
「じゃが・・永久の命は手に入れていない・・・」
「・・・・・・」
葉が一つ一つ、雨のように銀に降り注ぐ。風に靡かれて、サシミ達の頭にも落ちてくる。
「いくら歳をとらないからって、車に轢かれれば死ぬし、雷に打たれても死ぬし、酷い病におかされても死ぬ・・・ワシはさっき言った通り、一生死にたくないんじゃよ・・・コレでわかったじゃろ?ワシがこの異能力ペットバトルに勝って叶える願いはこれ一つに決まっておる・・・・」
木から翼を離すと、自分を抱きしめた。徐々に強く抱きしめる。
「無限の命、不死の身体・・・・不老不死じゃよ。ワシがめざしておるのはのぉ。だからあのヤモリを育てているんじゃ・・・」
「ヤモリを・・・育てる・・?」
自身を抱きしめていた大きな翼を一気に広げると、その大きさはサシミよりも遥かにデカかった。
「ワシの能力は出来ることが限られておる。この翼で対象に触れなければ発動できない。それに比べてアイツはどうじゃ!無限のリーチ、糸の攻撃力、小さくそして素早い。この森のようにテリトリーを作ればお主らなど思いのまま。しかもヤモリはまだ若い・・・・若いということは成長できるんじゃよ。アイツがまだ伸びるように、能力も伸びる!ホウホウ!ホホウホウ」
銀は首をすごいスピードでくるくる回す。側から見るとかなり不気味な光景である。
「ねぇ・・成長って?成長したら能力が伸びるの?」
「ホホウ?面白い人間じゃのぉ?」
万歳が手を上げながら枝に捕まっている銀を見上げた。銀は興味深そうに体を乗り上げる。
「その通りじゃ。ワシがあのヤモリと関わってわかったことじゃ・・・彼奴は最初、掌から糸を出すことしかできなかった。しかし、一般人を殺せば殺す程、彼奴の能力は強力になっていった。物に触れればそこから糸が出すことができ、それを操れるようになったんじゃ。成長したんじゃよ!人を殺して、成長したんじゃよ!」
「・・・・・・・・」「・・・・」
「・・・・・・」
嬉しそうに銀は広げた翼を月にかざした。
「彼奴は天才じゃ。ワシはもう若くない。だからきっと成長はしないじゃろう。じゃが彼奴は別じゃ。きっとまだまだ成長する。だから、この山で楽しいゲームを思いついた・・・戦う意志のなさそうな異能力ペットとその飼い主をワシの能力で拐い、あのヤモリに殺させる。そうすれば彼奴は更なる高みへ成長すると思った。しかし弱すぎた・・能力で少し抵抗すると思ったが、やることはこのゲームのルール、逃げるだけ。そんなの一般人を殺すときと変わらん。これじゃあヤモリは成長しない。じゃがのぉ・・」
その体制のまま、銀は目だけを下にいるサシミに向けるとクチバシを緩ます。
「お主ら、三匹が来てくれた」
「ッ!」「・・・」
クチバシの中から長い舌で顔を舐め回しまくる。
「有り難かった。ワシの感じた通り、お主らは拐った異能力ペットとは違い積極的じゃった。お主らに攻撃され、窮地に陥れば、いやでも彼奴は強くなれる!その手に入れたヤモリを使いこの異能力ペットバトルを蹂躙する・・!」
銀はまた翼を大きく広げ、目を見開いた。優勝した自分を想像しているのか、目が輝いている。
「そして必ず!ワシはヤモリの力を借りて優勝し!不老不死を手に入れる!」
「そうかよっ!!」
サシミは手を力強く握りしめた。足を怪物化させると銀のいる木まで、高くジャンプした。
「教えてくれてありがとよ!!おかげさまで、そんな馬鹿馬鹿しい願いの為に犬どもを殺した、俺が一番嫌いなタイプだってことがわかったぜ!お前はここでぶん殴る!」
「若いお主にはわからん馬鹿馬鹿しい願いだろうのぉぉ!」
足の怪物化を解除すると、左手を怪物化させ銀に殴りかかる。
「グロアァッ!!」
「ホウッ!」
しかし銀は飛び立ち、サシミの拳を避けた。銀が乗っていた枝は折れ、地面に当たると、粉々に砕け散った。
「殴られろぉぉ!!」
(まだ来るかッ!)
銀が飛び立った木をサシミは足を怪物化させ蹴り上げると、銀に突っ込んだ。蹴った老化させられた、木はバラバラになりながら倒れる。
「チィィッ!」
(また避けられた・・・)
銀の背中目掛けて振り下ろした拳は銀には当たらず、そのまま勢いをなくしたサシミは地面に落ち、銀は新しい木に飛び移った。
「クソがッ!ハァ・ハァ・・」
「サシミ・・大丈夫か?」
(・・・・・おかしい・・)
禎はサシミに駆け寄り、銀は木の上から、息を荒くしてその場に倒れて混んでいるサシミを見つめる。
(彼奴、肋骨が二本は折れているはずじゃ・・・あんなに素早く動くことなどできる訳がない・・大声を上げることも息をするのも辛い筈じゃ・・なのに彼奴は・・・)
「ハァ・・ハァ・・ハァ」
サシミは不思議なことにアバラを押さえながら、息を繰り返していた。腹の骨が折れているのであれば、息をするのは困難なのに、サシミは大きく息を吐いている。
「おい・・・!マーズ!隠れてねぇで早く出てきやがれ!お前がジジィになれば一発なんだよ!」
「そういえば火星ちゃん!」
「うん・・あの草むらの中にいるよ・・」
万歳が指したところは先程火星ちゃんが投げ飛ばされた草むらであった。サシミの言葉に反応したのか、草むらが揺れ中から黒と茶色のマダラ模様の前足が出てきた。
「残念じゃったな若造、娘はもう役には立たんよ・・・」
「・・・あ?どういうことだ!」
「アレ・・?」
「どうしたんですか・・?先輩・・」
草むらから出てきた前足を凝視すると首を傾げる。
「いや・・火星ちゃんの足・・・・・・
あんなに小さかったけ?」
「・・・へ?」
草むらの中から顔が倒れ込んできた。草むらから飛び出してきたのは、
「あ〜あ〜う〜だ〜あ〜」
「・・・・・・」「・・・・」
「・・・・・」
可愛らしい小さな錆び猫が姿を現した。目はキラキラしており、耳が立っている。
「おい・・・まさか・・あのガキ・・」
「先輩・・・あれって・・・」
「・・うん・・・・火星ちゃんだ・・」
ホッケーマスクをつけてはいなかったが間違いなく火星ちゃんであると万歳にはわかった。あの恐ろしい仮面からは想像できない程可愛い。
「・・・赤ん坊の・・・火星ちゃんだ・・・・」
「だ〜〜う〜あ〜〜あ〜!」
残り・402チーム
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