66話 犬の目には糸を引け、家守の目には鈴を張れ
お久し!!
お願いします!
禎達がミミズクの異能力ペットの銀と抗戦している中虎太郎達は、
「おい・・おいおいおい!!何してんだよヤモリ!!馬鹿かお前!」
「アアァ・・・馬鹿?バクトよぉ、その返しは間違ってるべや。今俺に言うべきことは、よくやった、あの痛みによく耐えた、頭が回ったな、べや・・・俺は褒められて伸びるタイプべや・・・」
「・・・・・・」
「で・でちゅ・・」
自分の眼を抉り取ったヤモリと戦っていた。ヤモリは目から血を垂らしながら、ゆっくり剣山の元へ近づいてくる。
「いや、そこの飼い主の言う通りだ・・このままだと貴様血が足らず、確実に死ぬぞ・・・!」
「それはお前だけべや・・・俺よりもたくさん血を流して・・俺にはなぁ・・・師がいる。お前らを殺せば、後は師が眼を戻してくれるべや・・・」
(戻す・・・・)
立てていた前足を地面につけるとヤモリは笑いながら舌を出す。剣山は新しい刀を生み出した。刀身は長い。
「俺はなぁ、成長して、もっと殺したいんべや・・殺した時のあの爆音をもっと聞きたい。あの悲鳴を・・あの苦痛の、絶望の表情をもっと見たいんべや。見ないといけないんべや!!
「そうか・・貴様のような狂った覚悟を持ったゲスは、もうこの世で能力を持っていい生物ではない・・・!ここで斬り倒す!!」
「試してみなっ!!」
さっきまでの動きとは打って変わってすごい速さで近づいてきた。剣山は刀を振ろうと構える。
「来たでちゅっ!!」
「こたろう!ちはる!アイツの狙いは俺とハリヤマだ・・!離れてろ!
「でも、ハリちゃんは・・!」
「お前らと一緒にいるよりはマシだ・・・安心しろ。10分間、俺が守る・・・」
ハリちゃんの前に陣取りヤモリからハリちゃんの姿を隠す。
「・・・・わかった・・ハリちゃん、頑張って!」
「でちゅ!!」
「焦るなよ・・剣山」
「あぁ」
虎太郎と智晴はその場から急いで離れて、大きな大木の裏に隠れた。ハリちゃんは剣山と同じく攻撃する態勢をとる。
「・・・・・ハリヤマ・・あと何分だ・・」
「7分・・くらいでちゅ・・・」
「よし、お前はここから動くな。針が撃てるようになったら考えて撃ち込め。いいな・・!」
「了解でちゅ!!」
「何喋ってるべや!!」
こちらに足裏をペタペタ鳴らしながら四足歩行で向かってきているヤモリと同じように剣山もヤモリの元へ走り出しす。
『卍糸』
「ッ!」「でちゅ!?」
剣山が走ると同時にヤモリの走ってきていた地面から複数の糸が風に揺られながら生み出された。その糸の一つが一直線に剣山の元へ向かってくる。
「危ないでちゅ!!」
「ッ!」
刀を前に出し攻撃から身を守ろうとしたが、剣山の刀の刃は糸によって綺麗に真っ二つにされた。
「フンッ!」
剣山は刀を消すと新しい刀を生み出す。そのまま生み出した刀で間髪入れず、糸に振り下ろした。しかし、刀はさっきと同じように糸に切られ、刃が空中を舞い、地面に突き刺さる。
「・・・・・・」
「キョキョッ!」
刀の攻撃をものともせず、糸は剣山の顔目掛けて突っ込んでくる。剣山はまた刀を消し、体勢を低くして手を振るうと同時に新しい刀を生み出した。そのまま剣山は糸に攻撃を繰り出す。
「チッ・・・!」
しかし何度も刀で糸を斬ろうとしても結果は変わらず、全て糸により断ち切られてしまった。剣山はしゃがんだまま前方に飛び込み糸を通り抜けヤモリの元まで走っていく。
「どんなにお前が自慢な刀を振るっても、俺の糸の方が切れ味が上べや!ハリネズミの針は俺の小さな身体で避けられない事はない。それに当たりそうになったとしても糸を振り回せばいいだけ。針だって刀同様、粉々べや!」
「剣山!糸がまだ追ってくるぞ!!
「ッ!」
安心する間も無く、後ろからものすごい速さで糸が迫ってきている。刀身が切断されている刀を投げ捨てると、体制を低くしてヤモリに突っ込む。
「だから、負ける要素なんてないんべや!お前達の能力は!俺の能力との相性が最悪なんだからなぁ!相性がっ!だからさぁ、もうそろそろ全員俺に殺されるべやッ!俺の楽しみはまだまだ続く!べや!!」
「・・・・・・」
走っているヤモリは頭を振ると、後ろで揺らいでいた糸の一本が剣山に向かっていく。糸と糸に剣山は挟み撃ちにされた。
「ケンケンッ!」
(あと5分・・・針が使えるようになるまであと5分・・今のハリヤマは裸同然。糸がハリヤマを狙わず、俺目掛けて飛んでくるのは好都合・・・楽しみは最後に取っておくと言っていたのにハリヤマではなく俺を狙ってくるという事はあいつも焦っている・・・楽しみなど二の次。今は効率よく、素早く面倒な方を先に殺すことが最優先・・・・あのヤモリ、ハリヤマはいつでも始末できると判断したな・・・)
『卍糸ツイン!』
ヤモリが前足の指を一本上げると、二本の糸のスピードが増した。
(ならば・・・っ!)
剣山は走っていた足を止めると新たな刀を生み出し、縁を描くように刀を使って素早く一回転した風圧で、先程と同じく砂埃を巻き上げた。その風圧は凄まじいものであり、糸も一瞬だけだが風に靡かれて動きが遅くなる。
「ゴホッ!ゴボッ!」
「でちゅ〜!!」「う〜!」
「クソ!またそれべや!?だが・・・!」
砂埃が剣山のいる辺り一面に舞っており、暗闇も相まって剣山とその一面は全く見えなくなった。しかしヤモリの糸はそんなこと気にせず、二本同時に砂埃の中に入っていく。
「さっきは考えつかなかったけど、こうやればいいだけじゃないべや!?」
「剣山ッ!」
「ケンケンッ!ケンケェェン!!」
ヤモリは指を一本一本上げ下げを繰り返す。すると砂埃に突っ込んでいった糸が無造作にすごい速さで暴れ出した。まるでダブルダッチ。舞っていた砂埃が更に舞い上がる。
「キョキョッ!キョーキョ!手応えありべや!確実に切断した!解散っ!」
「・・・・・」
ある程度暴れ終わると、糸はヤモリの元まで戻り地面の中に消えていく。砂埃も少しずつ無くなっていき、全て消え去るとそこには、
「で・・・・・ちゅ・・?」
「・・・・・べや?」
剣山の姿は無く、代わりにバラバラに切断されている刀が散らばっていた。
「俺が・・切断したのは・・・・刀ぁ・・・?じゃああの着物犬は、何処いったんべやぁ!」
「剣山くん、何処いっちゃったの?」
「・・・・・」
ヤモリは眼をギョロつかせたが、剣山は見当たらない。
「逃げられたのか・・・?」
「それは絶対にないべや・・今バラバラの刀が消えた!いる・・絶対に近くに隠れてるべや・・・!」
バクトも辺りを見渡し、ヤモリは消えた刀を見て、二足歩行で立ち上がった。片手から短かな糸を垂らすと、舌を出して歩き出す。
「ハァ・・ハァ・ハァ・・ハァ・くっ!」
息を切らしながら、ヤモリから少し離れた木の裏に剣山は隠れていた。座り込み、息を整えながら、切断された片腕を抑えている。血が着物からまだ滴り落ちている。
(座ると一気に痛みが増す・・・よくあれだけ動けていたな・・やはり身を隠したのは正解だった・・・強がっていたが・・実際マズい・・・今は休め・・・・さて・・・」
チラリと木の裏からヤモリを睨みつける。
「でちゅ〜ッ!ケンケ〜ン!!何が、俺が守る・・!キリ!でちゅか!!ひとりで逃げるなんて!最低でちゅ!!そんなんじゃ勘違いする雌が急増、倍増でちゅ!!」
「ハリネズミ!黙れ!お前はそこから動くんじゃないべや!お前は後回しべや・・・俺が指を曲げるだけでお前なんて3秒であの世行きにできるんだからなぁ!」
(やはりな・・・)
地面を叩いてハリちゃんは涙を滝のように出していた。ヤモリはイラつきながらハリちゃんに食ってかかっている。
(いつでも殺せるなら狙わないだろうな・・・今ハリヤマを殺そうとすれば・・後ろから俺に狙われる心配があるから、ハリヤマは絶対に殺さない。アイツの性格なら俺を危険視してる上、姿を消し、逃げた俺にムカついている筈だ・・・・まずは俺から殺す・・)
「鬼ごっこの次はかくれんぼ・・・べやッ!」
「ッ!」
掌から出した糸を大木に当てると、スパッと真っ二つに切る。切られた大木は音を立てて倒れた。
「さぁ!何処にいるんべや!自分の飼い主を置いて逃げる気べや?出てこないと、お前の飼い主から殺しちまうべやッ!」
(同様するな・・焦るな・・アイツはこたろうをまだ殺さない・・まずは俺から殺す・・今は機会を待て・・)
辺りの木を一本一本、丁寧に切断して剣山を探している。一方で剣山は新たな刀を生み出すと飼い主を殺すという言葉に苛立ち、力強く握りしめた。
(しかし・・アイツの言った通り、相性が悪すぎる。状況は何一つ変わっていない・・それどころか、ジワジワ追い詰められて最悪な方向に向かっている・・今はただ時間を稼いでいるだけだ・・どうする・・・これから・・・・・・・)
頭に刀を当てると息を荒くさせる。眼を瞑り自分を落ち着かせている。木がまた一本、糸に切断され倒れ、地面が揺れた。
(どうやってあのゲスの首を斬る・・・!!)
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