65話 赤子の心臓を壊すよう
久しぶりだね。
謝らない謝らない謝らないぞぉ!!
すみませんでした。
「ミミズクが・大きく・・なった」
「もうお主らに能力を隠す必要もない。お主ら異能力ペットにはもうバレているのだからな。ワシの能力『老進戻支配者』は触れたものの時を進め、戻す能力。さっきまでは若い方が疑われにくい生まれたてまでワシの時を戻した。どうじゃ?ワシの演技。うまかったじゃろ?」
「そんな・・」
銀はクチバシの口角を上げ、翼に顔を覆われバタバタ動いている大型犬を見つめる。
「この犬は強い能力を持ちながら、その能力を持て余していたようじゃのぅ。戦う意志の無いものはどんなに清楚な顔立ちでも、頭が良くても、社交的でも、こうやって利用されて終わりなのじゃ。だからヤモリにはもう此奴は必要ない」
「あ・・あぁ・・・あぁ!」
「貴様ぁぁ!!」
銀はさっきまでの小さい体ではなく、体格の良い、ミミズクに変わった。身体が成長したのだ。大型犬を掴んでいる翼に更に力を加える。それを見てサシミは走り出そうとしたが、
「ッ!!」
「呪っ!」
「ホホウ!アバラと右手首が折れている上、踵がそんな状態なら無理に立ち上がらない方がよい。そこで安静にしていなさい。お主はまだヤモリに必要じゃ」
「テメェ!!」
アバラの痛みで立ち上がることも出来なかった。自身の足跡が付いている床に手をつく。
「お主らはワシを恨んでいるらしいが、ワシはお主らに感謝しているんじゃ。壁を何枚も破壊してくれて、心の底から感謝しておる。だからワシはその恩を返してやろうとしているんじゃ。だから恨まずに感謝して欲しいんじゃがのぉ」
「感謝だと・・?お前に・・?ふざけるなよ・・・・!」
「何を言っておる。お主らが今ここにいるのはワシので力あってのもの。ワシがいなかったら今頃お主達は・・・」
銀が瞳を大きく見開いて、右翼で自身の顔面を軽く押した。
「ぺしゃんこじゃ・・」
「ッ!」
「薄々お主も感じてたじゃろ。あの硬い壁を壊したのはお主じゃない。このワシじゃ。ワシが壁を叩いて五百年老化させなければ、ここまでお主らは辿りつけなかった。じゃがそれはワシも同じこと。お主らがいなければどこぞで野垂れ死んでおった。足りないところを補った結果、此奴をここで殺すところまで来た。ワシらが手を取り合って、協力してな?」
「協力だ?ふざけるなよ・・クソジジィが!!」
サシミは両手を握りしめて、こちらに笑いかけてくる銀を睨みつける。
「呪殺ッ!」
「おいマーズ!」「火星ちゃん!!」
「ホホウ・・あくまでも此奴を助けようとするか。娘よ、お主ももうヤモリには必要ない・・お主もワシの殺害対象じゃ・・」
目を鋭くさせながら火星ちゃんがサシミに変わり、銀に突進していく。銀は右翼を火星ちゃんに向けて構えた。火星ちゃんの顔が翼に覆われると思われた次の瞬間、
「イヤダァァァァァァァァァァァァァァ!!!ァァァァァァァァァッ!」
「ホホウッ!?」「呪!」
「うわっ!」「ッ!」
今まで出していた叫び声とは比べ物にならないほど大きな声で大型犬は叫んだ。それと同時に地面が揺れると銀と火星ちゃんの間に壁が地面からすごいスピードで現れた。火星ちゃんは後ろに下がり、銀は大型犬の顔を掴んだまま右翼を引く。壁に遮られて銀の元に行くことができなくなってしまった。
「ホホウ!!揺れも、壁の出るスピードも暑さも!さっきとは比べものにならないほ激しいぞ!!まるでお主の心のようじゃのぉ?何という強大な能力じゃ!!」
「アァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!」
「呪ッ!呪ッ!」
壁の奥から銀の声と大型犬の発狂が聞こえる。火星ちゃんは何度も壁に体当たりをしているがびくともしない。
「・・クソ・・・ジジィがッ!」
「サシミ!?立っちゃダメだ!ほ、骨が!」
それを見ていたサシミは、ゆっくりとその場に立ち上がると、壁に向かって歩いていった。腹の骨を庇いながら。
「だからどうした・・・・!体中の骨が粉々になってもあのジジィは潰すッ!マーズ!そこどけ!」
「呪!」
火星ちゃんが下がり、サシミはふらつきながら、無傷の左拳を怪物化させると
「ぶっ潰すっ!!」
「ッ!」
壁を勢いよく殴りつけた。壁は崩れ、大きな穴が空く。そこには銀が立っていた。サシミは銀を睨みつける。
「ホホウ・・・!まだ動けるか・・・!お主もなかなか・・・」
「そいつを!離しやがれぇぇ!!」
壁を破壊した勢いのまま、銀の顔目掛けて拳を振るった。
「あああぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァ!!!!許してぇぇぇ!!!!!」
「ッ!」(何ッ!?)
大型犬は更に大きな叫び声を上げる。サシミが殴ると同時に壊れている壁が何事もなかったかのように元の壁に戻り、また銀の姿が壁に隠れて見えなくなった。
「ホホウ!力が有り余ってるのぉ!壁をすぐさま再生させるとは!」
(速い・・・!一瞬で戻りやがった・・・だが、そんなこと関係ねぇ!痛みを忘れて、壁を殴って、ジジィを殴って、大型犬を助ける!ただそれだけだっ!!)
再び立ち塞がった壁を、サシミは歯を食いしばり思いっきり殴る。
「ッ!」「そんな・・・」「呪・・」
「ホホウ!ホウ!ホホウ!!」
しかし壁は傷一つつかなかった。サシミ達を閉じ込めた壁と同じほどの硬さ、いやそれ以上の強度になっている。
「壊れない・・・あの時と一緒だ・・・」
「クソッ!壊れやがれ!クソがっ!」
「呪っ!!呪!!」
「恐怖の叫びを出し、無意識に自分を守る為に壁を硬くしたのか!素晴らしい成長力じゃ!これこそが成長!これこそが能力!」
「あぁ!!ぁぁぁぁぁぁッ!助けてっ!助けでくれぇぇぇぇっ!!」
何度も何度も拳で壁を殴るが、揺れによる雑音と、自分の叫び声でサシミの声は全く大型犬には届いていない。
「ガァァァァァァァァァァァッ!!!ぁぁ!!」
「大型犬の声が・・・・変わった・・・・小型犬のような・・・っ!!時を戻してるんだ・・能力で大型犬の時を戻してるんだっ!!」
「何だと!?おいクソ犬!落ち着きやがれ!!助けてやる!!だから叫ぶのをやめろ!!やめてくれぇ!!」
壁越しに大型犬の叫び声はまるで消えかけの炎のようにどんどん小さく、幼くなっていっていた。
「あぁ!!ぁぁぁぁぁぁ!!
「ホホウ、もう遅いわ。お主の声はもう此奴には聞こえてないじゃろう。聞こえてたとしても言葉の意味を理解していないわ。それほどまで戻った・・・・」
「おい!犬!!やめろ!やめやがれぇ!!」
もう叫び声ではなくなったにも関わらず壁は依然とサシミの前に立ち塞がる。サシミは頭に血が昇り、全身の血管が音を立てている。徐々に壁を叩く回数も減ってきていた。先程の倍以上の暑さの中、声を張り上げる。
「しかし残念じゃったのぉ?まだ能力に慣れていない。本当の味方と敵の区別が能力にはついていないようじゃ。あやつらはお主をたすけようとしているのに、死ぬという焦りが勝手に暴走して全員を拒んでおる。哀れじゃのぉ・・・・・・?若いの・・・」
「あ・・ぁぁ・・・・・・」
「クソ犬!!犬っ!!黙やがれ!!!クソッ!クソがぁぁ!!」
サシミが叫ぶ。すると次の瞬間、辺りの壁がゆっくりと崩れ出した。周りから壁が一つもなくなるとそこは、
「ッ!」「呪・・呪っ!!」「ここは・・・・」
サシミ達が元いた同断山に戻っていた。永遠迷宮世界の能力が解除されたのだ。辺りはまだ暗く、さっきまでの蒸し暑さが嘘のように涼しい風が吹いている。
「やっと能力を意識しないことで解除したか。異能力ペットは時が戻っても能力が無くならないのがネックじゃのぉ」
「・・・・・・」
目の前にあった壁が消え、代わりにサシミの目の前には、銀がいた。首をくるくる回しながら目を細めている。その銀を見た途端、サシミは違和感を感じた。感じざるおえなかった。
「・・・・・・どこにやりやがった・・・・」
「ホウ?何がじゃ?」
「大型犬をどこにやりやがったっ!!!」
その違和感はさっきまで能力を使い、叫び声を上げていた大型犬がどこにもいなかったのだ。銀はキョトンとした顔をしていたが、言われたことを理解したのか、クチバシの両端を上げた。
「ここじゃよ。ここ・・・」
銀はしまっていた左翼をサシミの前に出す。するとそこには
「キュ・・・・キュッキュ・・・・」
「ッ!!」「殺!?」「・・・・」
「・・まさか・・・・」
目さえも開いていない、生まれたての犬が翼の中にはいた。身体を震わせ、弱々しく動いている。身体中にあった傷や血は無くなっているが、その犬の毛並み、そして雰囲気はまごうことなき大型犬であった。
「な、なんだよおい・・・・その持ってるもんはよぉ・・・!」
「十年・・・時を戻した。ワシが時を戻せば若返り、怪我をしたという事実さえも戻る。やはり可愛いもんじゃのぉ。誰かに守ってもらわないと生きることができない、無防備な状態。わしはのぉ、こうやって戦う意志のない異能力ペットと飼い主を赤ん坊にしてこの山に連れてきた。この山についた時に元の年齢に戻せば記憶はあやふやになる。当然じゃ。自分が赤ん坊だった時の記憶など鮮明に覚えておる奴などおらん。能力を使っているという意識さえも失った。だから能力が解除されたのじゃ。しかし・・・まだやるべきことがある・・・・」
「キュッ・・・・・」
銀は翼に乗せている大型犬を地面に落とした。大型犬は地面にくっつくように、倒れ落ちた。今にも消えそうな声で銀から逃げようとしているのか、手足を動かしている。しかし一歩も前には進んでいない。
「サシミ!!その子をっ!!」
「火星ちゃん!!」
「ッ!!!」「殺呪ッ!!」
禎と万歳が叫ぶと同時に銀の目の前にいたサシミと火星ちゃんが地面に倒れている大型犬を拾い上げようと手を伸ばした。
「フンッ!!!」
「ガッ!ハァッ!」
「呪ッ!!」
「サシミィィ!!」「火星ちゃんっ!!」
しかし、火星ちゃんは顔を掴まれると草むらの中に投げ飛ばされ屈んだサシミの腹には銀の鋭い足が減り込んだ。サシミは口から嘔吐しながら、禎達がいるところまで吹き飛んで行った。急いで禎はサシミの元に走る。
「邪魔をするでない」
「サシミ!サシミィィ!!」
「ガハッ!!なんて力だ・・・!アバラが死んだ・・・!
「お主はここでは殺さん。後でお主もこの大型犬のように赤ん坊まで時を戻し、その腹、足、そして手首の傷を癒した上でヤモリの元まで連れて行ってやるからのぉ。楽しみにしておれ。さてと・・・・・」
銀は首を回すと、地面の大型犬を見下した。小刻みに震えている。何がじゃ起こっているのかもわかっていない。
「ュ・・・・・・キュ・・」
「本当に惜しかった。もう少し成長し、能力を使いこなせるようになっておれば、ヤモリと互換、いやそれ以上に渡り合えたかもしれんがのぉ・・・・・」
「やめろ・・・」「や・・やめろ・・・・・!」
大きな足で大型犬を踏みつけると、禎達が見えないように足元を翼で隠した。目を見開き大型犬を見つめながら足に力を入れた。
「お主を守ってくれる筈の親も、飼い主もここにはいない・・・・・守ろうとした者は自分の意思で拒絶した・・・・・ひとりぼっち・・・・そんな残念すぎるお主に一言言っておこう・・・・・・
お主じゃ役割不足じゃ・・・生まれ変わって、やり直せ・・・・・・・・・」
「「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
禎とサシミが叫ぶと、グチャという音と共に大型犬の小さな声が聞こえなくなった。銀の顔に血が飛び散る。地面には血が禎達の元まで広がっていった。
「これで4匹目じゃ・・・・!」
銀はクチバシについた血を舐め回した。
残り・402チーム
ありがとうございました!
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